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【第二章】第十八部分

「どうしたの、つかさ。」

千紗季はつかさを見て、次にその視線の先を追った。

「えっ・・・。」

千紗季は視線だけでなく、全身がフリーズした。

ドアがバタンと開いて、来た男子は千紗季たちと目線を合わせることなく、入室していった。

「と、朋樹。ア、アタシのこと、わかったのかしら。」

「さ、さあ、どうだろう。部屋に入ることに集中してて、こちらを見る気配というか、余裕というか、そんなものは微塵も感じなかったけど。」

部屋に入った朋樹は心臓の音が外に漏れそうなほど、ドキドキしていた。

「い、今のは千紗季じゃないか?それにつかさもいたぞ。どうしてこんなところにいるんだ?千紗季は地下ドルじゃなかったっけ?それにつかさはマジドルだったのか?魔法少女省の関係者でないと、このフロアには来れないって、聞いてるけど。しかし、千紗季はキレイになってたなあ。付き合いたい、って、いやいや、そんなこと、千紗季が考えてるワケないよなぁ。でもどうしてアイドルなんかやってるんだろう。よくわからないなぁ。」

そんな朋樹の思考を華々しいオーラが振り切った。

「ようこそ、マジドルの部屋へ。」

部屋には、握手会と同じように、机があり、そこに立っている綾野がいた。後ろには大きな抱き枕が置いてある。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

「いつも応援ありがとう。部屋では何かしていいわけではないが、マジドルが気に入れば、本来ダメだけど、お礼でキスならしてもいいよ。」

「えっ!でもそれは。」

「わかってるよ。ワザと言ったんだけど。好きな女子がいるんだろ。」

「どうしてそんなことを知ってる?マジドルの情報網は政府と一体だからね。しかも思いびとはすぐそこにいる。」

「そんなことまで!」


一連の様子を宮殿で見ていた首領。

「よし、この女を利用しよう。スゴくストレスがちょっとだけ、心を解放してやろう。」

次の瞬間、綾野の目つきがわずかに変わった。

「これまでのお礼をしてやろう。私を好きにしてもいいぞ。」


「えっ。そ、それって、超高い枕を買えってこと?」

「いや、そうではない。本の気持ちだ。」

綾野はステージ衣装の煌びやかなシャツのボタンに手をかけた。ふくよかな膨らみがチラリと覗いて、朋樹の純情ならざる本能を刺激する。

「ぐ。こ、こんなこと、絶対ダメだ。アイドル応援は崇高なものだ。いくら誘われたからと言って触れていいものではない。」

朋樹は右手に理性を集中させて、暴れん坊の左手に宿る煩悩を抑え込んでいる。本来右利きなのだから、右手からの押し圧力が強いはずなのだが、左手は猛烈に抵抗して、前に立っている綾野の胸元に前進しようと躍起になっている。

「ぐあああ~!」

抱き枕から黒い霧が出て、朋樹の体に侵入し、朋樹が異形に変身していく。皮膚が裂けて、そこから植物の枝のような赤く太い繊維の固まりが飛び出していく。筋肉が変形したものである。髪と爪が伸びて、口がひび割れて、マンモスのような牙が飛び出し、目も著しくつり上がって、顔全体がドス黒くなっている。綾野の誘惑で、夢枕モンスターが誕生したのである。

ほかのマジドル部屋でも政財界の要人が夢枕モンスターになっていた。

『があああ~!』

モンスター化した朋樹は、肉に飢えた獣のようなほうこうを上げて、綾野を襲う。


 宮殿の首領は口の端を吊り上げて歓喜の声を上げている。

「いひひ、うまく行っておるのう。これは一大パニックを惹起することができるぞ。」


『ガッ。』

モンスター朋樹の動きが止まった。綾野がまったくの無抵抗だからである。野獣の闘争本能は相手の戦う意志に反応するものである。戦意を感じなければ、逆に怯んでしまう。


 首領の筋肉が急にこわばった。

「ありゃ?止まってしまったぞ。仕方ない。締めはこちらでやるか。」


モンスター朋樹は再び動き出して、綾野を頭からガブリとやった。不思議と流血もなく、溶けるように綾野とモンスター朋樹は一体化した。



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