【第二章】第十四部分
「ならば触るぐらいは許せ!」
「もっとダメ!」
「ならば疲れさせるだけだな。」
綾野は千紗季の腕を取って一緒に走り出した。
「お局様、引っ張ってくれるの?これは楽チンだわ。何もしなくていいんだから。」
千紗季は一見楽そうに見えるが、体が動く限り、全身の筋肉への負荷はかかる。それも異常なスピードであるから想像を絶するものである。
「ぜえぜえぜえ、ぜえぜえぜえ。」
千紗季はスタミナと思考力を疲弊させてしまった。
「千紗季くんをへとへとにさせてお姫様抱っこ作戦!」
綾野は千紗季を抱き上げようとした。
「させるか!」
意外にも体力を温存していた千紗季。
「ほほう。思ったよりやるじゃないか。」
「アタシだって、マジドルのはしくれ。ホントに端っこにいるけど。でも身の危険を事前に察知するぐらいはできるわよ。」
「ということは、疲れたフリをしていたということかな?」
「いやいや、ホントに疲れているけど、冷静さという奥の手は使ってないわ!」
「いいねえ。よし百キロ到達だ。次は。」
「この後も何かやるの~!!」
千紗季の叫び声は山もないのに、こだまし続けていた。
こうして特訓の日々は続いたが、トレーニングがハードになればなるほど、頑張る千紗季であった。
「つかさ、アタシがこれだけ毎日トレーニングしてて、マッチョにならないか心配だわ。」
「大丈夫だよ。鍛えてるのは筋肉だけじゃないからね。細胞レベルの増強だとムダな筋肉はつかないからね。体はマッチョにはならず、パワーがつく。個々の筋肉強化だけでなく、使わない細胞も鍛えることに意味がある。それよりここまでのトレーニングの成果テストをするよ。」
「テスト?それは、夢枕モンスターの討伐ってことね。」
「そういうことになる。」
「久しぶりにやれるわね。勝利の美醤油を飲みたいわ。」
「高血圧になるぞ。それに勝ったことなんて、あったっけ?」
「勝ち過ぎていちいち覚えてないだけよ。」
「どこかで聞いたようなセリフだけど、行くところはこの先だ。」




