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【第二章】第九部分

特訓場所はマジドル用のレッスン場に変わった。

つかさと千紗季は赤いジャージに着替えている。

「あれれ?場所が移動しているわ。命拾いしたけど、これも魔法なのね?」

「そうだよ。ここはマジドル用のトレーニングジムだ。マジドルには並外れたパワー、スピードが要求されるからな。」

「はあ。」

つかさの説明が風紀委員のように聞こえる千紗季。

「さて、ここではマシンを使って、基礎体力を養成してもらうよ。千紗季はこういう訓練をしてないみたいだからね。」

「馬鹿にしないでよ。地下のセンターになるまでに、血の滲むような努力をしてきたんだけど。」

「そうなのか。じゃあ、そこにある黒いバーベルを上げてみなよ。」

つかさが指した先には白と黒のバーベルが置いてあった。

「こんなの、大したことないわよ。」

見たところ、ごく普通のバーベルであるが、女子には荷が重い。

「ほら、こんなのカンタンよ。」

黒い百キロ級のバーベルを持ち上げることができる千紗季のパワーはホンモノである。

「ほう、なかなかやるなぁ。じゃあ、隣の白にトライしてみるか。」

「いかにも軽そうだわ。こんなの赤子の手をねじ切るより易しいわ。」

「さらりとヘビーな表現をするなぁ。でも騙されないわよ。軽いと見せかけて、二百キロとかなのよね。でもそれもギリギリアタシの能力範囲内だわ。どっこいしょっと。あれ?そっちの黒いのより軽いわ。拍子抜けね。」

千紗季は、スナッチポーズで、体を左右にフラダンスする余裕を見せた。

「それはそうだろうね。じゃあ、そのままのポーズをキープして、こうするとどうなるかな。パチッ。」

指を鳴らしたつかさ。

「重い、いきなり重くなったわ。それもとてつもない重量よ。こんな超ずっしりとした感覚、初めてだわ。魔法でバーベルを重たくしたのね!」

「いや別にバーベルには何もしていないよ。」

「絶対にそんなことないわ。アタシにはわかるもの!」

「だから、バーベルには何も働きかけてないよ。ただ、千紗季の感覚を少しだけ変えただけだよ。バーベルを持ち上げることができるのは、全身の筋肉バランスを一方向、つまりバーベルに集中させているからだよ。でもバランス感覚を崩したら、全身の筋肉に負荷がかかる。すると筋肉の各箇所に重量感が押し寄せるから、ひどく重く感じるんだよ。アイドルはダンスで筋肉のバランス感覚は日々磨かれている。逆にその感覚がないところでは個々の筋力に依存せざるを得ない。つまりこのトレーニングで、独立した筋肉にパワーをつけることができるんだよ。マジドルは夢枕モンスターとバトルしなくちゃいけない。その場合に、戦いでいろんな筋肉に疲労や損傷があっても痛んだいない筋肉で闘う力を残す必要があるのさ。これは自分の身を守るための特訓なんだよ。」

「こんなの楽勝だわ。」

「その余裕、いいねえ。物事をうまく運ぶには気持ちに余裕を持つことが大切だからね。では、こうするとどうかな?」

つかさは軽く手を上下に振った。

「あれ?さらに軽くなったわ。アタシ、パワーがついたのかしら。マッチョになってたら嫌なんだけど。」

「千紗季、手を放しちゃダメだよ。」

バーベルは千紗季の足元にあった。

「おかしいわね。バーベルを放した覚えはないんだけど。」

「あまりの重さに耐えかねて、刹那的にバーベルを床に置いたことすら、気づかなかったんだね。さっきまであたしの魔法で重量を制御してたんだけど、それを解いたらたちまちこうなったわけだよ。」

「いったいどういうこと?」

「質量は常に不変だよ。枕木による空間魔法の応用さ。時空に枕木で穴を開けて、小宇宙を呼び出す。そこに質量を一時的に預けただけだよ。」

「よくわからないわ。」

「別にわかってもらう必要はないよ。それよりも物理的に二百キロを持ち上げる基礎体力が重要なんだよ。魔法水枕をうまく使いながら、自分の体力をアップさせることだね。つまり、魔法を使って持ち上げるようにして、段々と魔法を低減する。最後は素の力でバーベルを持ち上げることができるようにするんだよ。走力などにも同じやり方で基礎体力を養成していくんだよ。百メートルは五秒フラットが目標だよ。」

「そんなの、人類の限界を超えてるじゃない!」

「当然さ。マジドルって、人智をはるかに超えた存在なんだからね。」

「うえええ~!」

こうして、千紗季の基礎体力向上訓練が始まった。


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