【第一章】第三十四部分
「ちょっと、市長。その手が営業の支障になってるんだけど。」
「枕営業って、こういうことがオプション、いや本来の商品じゃないのかな?それにセーラー服は久しぶりでいいなあ。」
市長の目がいやらしく吊り上がっている。
「よいではないか、よいではないか。」
「ちょっと市長、アタシは枕営業に来たんだけど、枕を売りに来ただけで、それ以外に販売するものはないわよ。」
「販売じゃなくていいよ。役務提供でいいんだから。」
さかんに千紗季のボディタッチを試みようとする市長。
「アタシの方が体が大きいんだからね。やめなさいよ!」
もろ手を上げて暴れた千紗季は、市長にガバッと覆い被さった。
『ぷにっ。』
「アタシの胸って、こんなに大きかったかしら。いや日々成長してるのよね。やった!」
「ちょっとセンター公方様。市長の胸を鷲掴みしてるよ~。」
「ま、まさか、市長は男の娘じゃない、女の息子?」
「センター公方様、ややこしい言い方しなくても女子だよ~。」
千紗季は真剣に市長の顔を凝視した。よく見れば顔立ちも女子だった。
「ボクは、別に男子だと名乗ってはないよ。」
「じゃあどうして男子の格好してるのよ。」
市長の周りの霧は、ますます黒くなってきた。
「聞きたいなら話してやるよ。うちは代々市長の家系で、ボクは政治家となるべく、男子として育てられた。それはイヤなことではなかった。自分が将来市長を継ぐということにも何ら疑問や迷いはなかった。思い出すよ、小学生だった頃のことをね。」
『もうちょっと女の子らしくしなさい!』
そう叱られていた女子が中学生になると髪を伸ばしてエンジのセーラー服を着ていた。
すごくかわいく見えた。
彼女に対して、ボクは黒い学ラン。髪も短く、女の子としてのかわいさからはかけ離れ
ていた。成長もなぜか止まり、身長は小学生の時のままだった。
人間が自分にないものを欲しがるのは本能だろ?ボクもそれは例外ではない、いやむし
ろ満たされない本能に、自分の心が歪められるのを感じていたんだ。
それが女子の象徴のひとつであるセーラー服への憧れにも繋がったんだ。
セーラー服や女子の体に触れることで自分が女子であることを思い出すのさ。
女子として生きられないつらさ。かわいい服が着れない、人形でも遊べない。つらかった。




