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【第一章】第三十部分

こうして夜を迎えたが、ジャージではなく、セクシーな紫色のネグリジェが用意されていた。千紗季のベッドに枕が2つ並べられた。

「ま、まさか、やっぱり?」

『コンコン』というノック音が千紗季の耳から入り、大脳に恐怖をもたらした。

透明なネグリジェ姿のタミフルが見えた。

「きゃあ!」

千紗季は恐怖のあまり、布団をかぶった。

「センター公方様。ホットミルクをお持ちしたよ~。これですぐに眠れるよ~。」

「ま、まさか、睡眠薬?」

「そんなキケンドラッグ、入ってないよ~。これ飲んで明日のレッスンに備えてね~。おやすみなさい~。」

タミフルはそのまま部屋から退出した。

「ホッ。ひと安心だわ。安心したら、なんだか眠くなったわ。」

本当にグッスリ眠ってしまった千紗季。


翌朝。千紗季はいつもよりゆっくり目に起きた。

「センター公方は最後にレッスン場に行ってもいいわよね?」

目立つ金色ジャージ姿でレッスン場に入った千紗季。全員が直立不動で、千紗季を待っていた。

「いいわ、いいわ。女王様気分だわ。皆のもの、苦しゅうないわよ。」

『キュキュキュ』というシューズ音を立てて、ジャージ姿のタミフルが千紗季のところにやってきた。

『パシッ!』

レッスン場に響き渡るような大きな平手打ちが千紗季の頬を真っ赤にした。

「何するのよ、痛いじゃないの!」

「センター公方様。レッスンするのに、遅刻とは何事~!センター公方様は、いちばん始めに入場して、地下ドルを迎えるものだよ~。全員の模範たる者、それがセンター公方様。身の回りの世話はするけど、地下ドルの本質、本業はトップに立たないといけないんだよ~!」

「そ、そうなの。公方様って言ったら、よきに計らえ。て、やるんじゃないの?」

「時代錯誤も甚だしいよ~。タミフルがみんなの信望を集めるのに、どれだけ苦労したと思ってるんだよ~?」

眉毛を逆への字にして、声を荒げたタミフルは言葉を続けた。語尾が長音から促音に変化していた。

「センター公方様、そんなじゃダメだよっ!腰が入ってない。それに笑顔不足ていうか、苦顔しかないしっ!」

千紗季は、体を傾けて、腕を陸上百メートル世界記録保持者のようなポーズをしている。しかし、体はブルブル震えて、その後の態勢に係る未来予測は極めて容易である。

『バタッ!』「痛い!」

 顔からモロに転倒した千紗季。

「センター公方様、バランス感覚悪いし、筋力が不足してるよっ!腕立てと腹筋百回を先にノルマにするねっ!」

「ええっ?ちょっと待ってよ。」

指導者はタミフルだけではない。タミフルの付き人たちも一斉に腕立てを始めた。こうなると、ひとり立っている千紗季がひどく目立ってしまう。

「あわわ!」

千紗季も急いで腕立てを始めるが、他のメンバーとはピッチがまったく合わない。何周遅れなのか、わからないような状態になってしまった。腹筋、スクワットなども同じ状況が続いた。


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