【第一章】第二十八部分
こちらは、夢枕モンスター首領のいる宮殿である。
首領は立って千紗季たちの会場モニターを見ているがメイドはだらしなくソファーに寝そべっている。
「このまま終わったんじゃ面白くないぞ。モンスターを出せ!」
千紗季の机の後ろの枕から夢枕モンスターがいきなり出てきて、隣の列の太った男子に取り憑いた。
夢枕モンスターは紙袋から出ていたフィギュアの足を引っ張り出した。それは下半身だった。太った男子は下半身フェチであるらしい。
夢枕モンスターは下半身フィギュアを手にすると、それはマネキンのようにデカくなり、それを両手で抱えて、オタク行列を一蹴し、周囲はオタク瓦礫の山となった。
「こんなオタク死体の地獄絵図みたことないわ!」
千紗季は死体群と見ていたが、オタクは気絶しただけで、死んではいない。
会場の地下ドルたちは魔法が使えないため、凄惨な光景を見て、ファンをそっちのけで、雲散霧消していた。
「みんなだらしがないわね。ならばアタシがヒロインになってみせるわ。魔法水枕!」
千紗季は両手を広げて、手のひらから小さな噴水を大々的に披露した。モンスターはしばらくそれを眺めていたが、一度目をしばたいて、再び暴れ出した。
「何、何、何?」
千紗季はモンスターの行動が読めずにひたすら困惑していた。
ただ一人残っていたタミフルは、腕をカマキリのように構えて、小柄なからだをヤクザっぽく大きくみせた。
モンスターは千紗季をスルーして、戦闘態勢のタミフルを襲った。魔力のないタミフルはボロボロにヤラレてしまい、血みどろで気を失った。そしてモンスターは周囲を見渡した。
最後に残った千紗季だけ。怒りの表情しかできそうにないモンスターが、仕方なさ過ぎる表情で、千紗季の元に向かった。
「ちょ、ちょっと待ってよ。アタシなんか食べてもスゴくおいしいに決まってるけど、枕買ってくれるなら食べてもいいわよ!」
枕を差し出した千紗季に対して、モンスターは首を横に振ったように見えた。
「そこまでだ、夢枕モンスター!魔法少女省だ。貴様を抹殺する!」
「あっ、あなたは、いつぞやのマジドル!」
千紗季とモンスターの間に割って入ったのは、マジドルだった。
マジドルはモンスターをあっさりと倒して、そのまま会場から消えた。




