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【第一章】第二十四部分

 こうして、ステージメンバーになった千紗季は握手会に出ることになった。

会場はイベントホールの隣である。イベントホールよりも大きな会場である。

会場の外の通路にはたくさんの男性客が群がるようにして待っている。椅子はなく、客は立っている。

入場整理券はすでに配り終わっていた。

千紗季は群集から少し離れた通路の奥からこっそりと眺めている。すでに撤去された受付台が近くに片付けられている。

「いる、いる、帽子をかぶったメガネデブ。やっぱり紙袋から逆さフィギュアの足が飛び出しるわ。あんなゴミ箱男子と握手するなんて、超雑菌で手がゾンビ化するわ。」

千紗季は握手会に臨むの気持ちを赤裸々に吐露した。しかし、千紗季は例外ではない。大半のアイドルはこのような気持ちでイベント、ライブに臨んでいる。自分の本音を心

の奥底に押し込めて、営業スマイルという顔の筋肉運動に勤しむ。それは決して非難されるべきことではない。人間は汚いもの、危険なものを回避するのが本能だからである。


握手会開催まで、あと10分となっていた。

会場の外と中に2つの怪気炎が立ちのぼっていた。

外では、整理券を握り締める男子、中では、握手会に臨むアイドルが、双方向に怪気炎を上げていたのである。

握手会とは枕即売会なのである。客が高い枕を買えばアイドルのサービスが増えることになる。

汗が滴り落ちる手に1万円札を握り締める安っぽいTシャツの男子学生、野球帽を斜めにかぶり、ズボンのポケットに折った紙幣や小銭を突っ込んでいる者、膨らんだ財布を持つ独身っぽい30代、などいずれも目が血走っている。

「そう言えばバトルって、ケンカのことよね。どんな風にやるんだろう。」

そう呟いた千紗季の前にゆっくりとした歩みで現れたタミフル。

会場内で千紗季とタミフルは向かい合った。

「枕販売で勝負だよ~。タミフルに負けたら、アイドル辞めてもらうよ~。」

「そんなの、聞いてないわよ。残念だけど、メンバーになったばかりのアタシとセンターじゃ、ハンディがあり過ぎるんじゃないの?」

「ええ?いまさらそんなことを言うの~。」

 一瞬の間を置いて、タミフルの表情が変わった。

「新人のお姉ちゃんが、タミフルをイジメるよ~!う、う、うえ~ん。」

「なによ、コイツ。突然泣き出しちゃって。さっきまでの態度とまるで違うじゃない。」

『ダダダ~!』

地響きを立てて、バッファローのような集団がやってきた。全員が紫色の半被に、白いハチマキをしている。ハチマキには、『タミフル様命』とある。

「タミフル様をイジメるとは、不逞の輩はどこだ?この親衛隊が始末してくれる!」

「親衛隊ですって!どうして会場の中に入ることが許されてるの?スゴくヤバいわ!」

慌てて机の下に隠れた千紗季。

親衛隊が去るまで、じっとしていた。


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