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【第一章】第二十一部分

「枕が売れたので、ソコドル見習いからは卒業だな。今日からステージに上がってもいいぞ。」

「ええっ?枕売れたのは、マジドルに助けられたからだし。」

「何か言ったか?」

「な、何でもないわ。それより歌とかダンスのレッスンを全然受けてないんだけど。」

「ああ、それなら問題ない。ステージ衣装を着ればパフォーマンスは自動的にできる。」

「どういうこと?駆け出しのアイドルって、合宿なんかで生き残りをかけて、地獄の猛特訓を受けてるじゃない。」

「あれはテレビ向けのアピールさ。たしかに正統派アイドルの頂点を目指す者にはああいうことは必要だ。しかし、ここはソコドル。場末のスナック未満の世界だ。手っ取り早く客の目を引けるようなシステムができているのさ。客の方もソコドルがかわいけりゃそれでいいとか、そんなレベルで観てるわけさ。」

「そ、そんなものなの?」

「疑問に思うなら試しにステージに上がってみな。すぐに実感できるさ。それに千紗季はマーキングを終えてるしな。」

「マーキング?」

「さっさと楽屋へ行け。」


事務所と同じ地下50階楽屋に入った千紗季。中にいる全員からギロリと睨まれた千紗季。一番奥のパーテーションで仕切られて中が見えないところから、特にドス黒い視線が突き刺さってきて、千紗季は身震いした。

「昨日までは完全に無視されていたのに、どうしていきなりこうなるわけ?」

千紗季の頭では解決できなかった。

「それは、ステージに上がることができるようになったからだ。」

「豊島区マネージャー!?」

 山田が音もなく千紗季の目の前に現れていた。

「ソコドルはこの貧困から抜け出したいと必死なんだよ。ステージメンバーが増えるということは新たなライバル出現だ。そんなことを歓迎する人間などいるものか。」

「フツー、仲間が加わって歓迎するものじゃないの?」

「それはあくまでテレビ向けのポーズだ。ソコドルの現実を考えろ。千紗季もやがてそうなるさ。」

「アタシはそんなことはないわ。友情、友好、友愛に満ちてる、この体を見なさいよ!」

存在感の少ない胸を無理やり張り出した千紗季の魂胆は薄っぺらであった。


ふんわりふわふわの衣装に着替えた千紗季。頭の白い帽子がかわいい。

「そう言えば、あのマジドルも付けてたし、これで魔法を使ってたような。」

ステージは地下五階にあり、そこに移動した千紗季。地下らしく小さなステージであり、客席は百席に満たない。

千紗季は、舞台の袖から観客席をこそっと見た。

客は二十人いるか、いないかである。そのうち、半分は最前列でカメラを持って構えている。

「こんなに少ないの?これじゃ、ステージ上のソコドルとほとんど変わらないじゃない。」

他のメンバーと共に、ステージに上がる千紗季。

「フォーメーションとかあるんじゃないの、どころか、歌、ダンス全然できないわ。」

ステージに上がると、枕が光ってからだが軽くなった。

「あれれ?みんなに合わせて踊れる、歌えるわ。これって、アタシが才能に超絶溢れるアイドルだっていうこと?そうよ。アタシは生まれながらのスーパーアイドルなんだわ!」

生まれ持った妄想力は恐ろしいまでに千紗季の心を躍らせた。

「ドテッ。あいたた。」

千紗季は誰かに足を引っ掛けられて、転倒し、世間にパンツを晒してしまった。

「キター!今だ、シャッターチャンス到来!」

『カシャ、カシャ、カシャ、カシャ。』

最前列に陣取っていたカメラ小僧(30才台主体)たちが一斉にローアングル狙いに走っていた。


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