第98話、【金(ヴルック)】属性的もふもふを我慢して、救世のため先へ
SIDE:ラル
ラルの一族は、世界の礎となり救世主となりえる素養、あるいは『力』と呼ぶべきものを持ち合わせていた。
魔力が、色となって音となって見聞きできることもそうだが、その魔力そのものでありながら意思、心を持ちし存在、魔精霊の声すらも聞き取ることができて。
ラルたちは、そんな声を頼りに正規の入口から、『フーデ』の地下ダンジョンへとたどり着いた。
ローサたちへの連絡はアイアに任せてあるからと。
目的地についたことでイクタを魔力に還したところで、改めてイゼリが声を上げる。
「さてっと。とりあえず降りてきたけど、実はここけっこう広いんだよねぇ。生きてるからすぐに変動するし、道も増えてり減ったりするんだ」
「ふむ。下に伸びていくスタンダードなタイプじゃなさそうだね。横に同じ階層が迷路のように伸びていくタイプかな」
「ルキアねぇ、ダンジョンにきたこと、あるの?」
「えぇ、これでも劇団員と騎士団を兼任してましたからね。近場のダンジョン調査に何度か足を運んだことがあるのです」
「ふぅん。わたしはラルさまとはじめて会ったときかなぁ」
「それは……ダンジョンと言うか、洞窟ですかね。すみません。アイさま、私がそばにいなかったばかりに」
「いいんだよぉ。だって、ラルさまにそこで出会えたんだから」
故郷から逃げるように抜け出した当初は、お付きのものは何人かいたらしいのだが。
闇の一族の追っ手に追いすがられ、水の根源の力を借りて逃げていくうちに、離れ離れになってしまったのだ。
それから町を、人を求めて彷徨っていたら、山賊めいた風貌のおじさんに拾われたらしい。
ラルと邂逅した時は、あのねぐら……洞窟にやってきたばかりで、ヴォトケンの毒牙にかかることもなかったから、あくまでもアイの主観ではあるが、ラルに次ぐくらいに、ひげもじゃおじさんにも感謝している、とのことで。
その辺りの情状酌量を考慮して、いつかまたどこかで(ここのようなダンジョン……鉱石が取れるようなところで働かされているらしい)会えるはずだよと、
ラルが呟けば、アイ嬉しそうに頷いてそのままラルに抱きついてくる。
可愛いなぁと、サーロがなるたけそばにいたがったのもわかるよね、なんて思いつつも。
ラルは警戒する小動物のように(やっぱり可愛い)辺りを見回しているイゼリの言葉に続き答える。
「最初は要救援の声かなって思ってたんだけど、近づいたことでよくよく分かったよ。これは、【地】の魔精霊さんたちの声だね。しかもうん……珍しい。【地】さんたちって大人のお姉さんお兄さんのイメージがあるけど。生まれたて、『獣型』よりも前かな。子供みたいだ」
「あぁ、さすがに地面越しにひとの声は聞こえないか。でも、【地】さんかぁ。全然いないわけじゃないけど、もぐら人族とかについてるのかな」
「もぐらさん? アイ、見たことないよ。どんなお耳かなぁ」
「土の竜とは、なんともおしゃれだね」
「何だか確定事項みたいになっていますけど……あら。その前にお客さんのようですよ」
大地の下、ひんやりとした場所を好む獣人族は、数少ないながらもいないことはないらしい。
しかし、ウルルの言う通り、次々と現れる金属めいた魔物たちとの縄張り争いがダンジョン内では激しくて。
好き好んで棲み家にしているひとはいないだろうとは、イゼリの弁であったが。
「ううん、やっぱりたくさんいる子供の気配だ。魔力はみんな大人しいし、どこかへ連れて行かれようと……あ、いた! たくさんの気配に混じって【闇】の人!」
「なんだって!? ……って、ちょっと、ラルさまっ!?」
「ラルさま、火の女神さまになってるっ」
ちょっと先に行っているから、ここの露払いは頼むよ、とばかりにラルは。
アイと初めて会った時のように、至極当然のように魔力……その身を魔精霊と化し、金属めいたヨロイをまとったモンスターを、正しくもすり抜けるようにスルーして(本当は、そういった男のロマンらしいものに興味津津なのだが、それはそれ。救世主たる所以。そんな気はおくびにも出さなかった)。
炎気となって【金】の群れ、その向こうへと消えて行ってしまう。
「【火】の女神、か。確かにアイ様の言う通りかもしれないね」
「えぇ、私にも見えたわ。ラル様は炎、魔力そのものとなっても綺麗なのね」」
「リルさんとか見ていてなんとなくはなんとなくは思っていたけど、やっぱりラルちゃんすごすぎない?
魔力化なんてスライム族だってむつかしでしょ。あれって根源魔精霊さんとかの御技じゃないの?」
実際問題、この世界でも神とされる根源魔精霊には会ったことがないからこそ、
実は本当に女神様……ラルが【火】の根源魔精霊であると言われても信じてしまいそうな勢いである。
だがそんなやりとりも、神の威容に止まっていた時が動き出したかのように。
【金】の魔物たちが襲いかかってきた? ことで、それぞれが我にかえって。
「っ! 迎え撃つよ、ルキアちゃん!」
「応ともさ! 相棒、アイさまと支援、頼むよっ」
「了解。アイさま、二人が傷を負った時の回復の方、頼みますね」
「はーい。がんばるよっ」
とはいえ、ラルが一人先行したのも、残された4人を信頼しているからなのだろう。
ラルからすれば、【金】属性の魔物のやる気と、アイたちの実力差は明白であると、一目でわかっていて。
むしろ、後で【金】属性的もふもふと言う名の装備品チェックをしたいから。
できれば戦わないで欲しい、だなんて言葉を残しておけばよかったかな、なんてラルは思っていたくらいで……。
(第99話につづく)




