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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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第79話、長いかつての男装生活(心だけ)の影響が出てしまった?



SIDE:ラル



結局のところ、救世の裁きの後のフォローはばっちりで。

急がなくてはならないような憂慮、不安もなくなって。


それでも強いて言うのならば。

魔王的存在を召喚しようとしていた、闇を信ずる一族に未だ仲間が残っていて、再び『ブラシュ』に侵攻してくる気概があるかどうかではあるのだが。

それも、今すぐに何をおいても行動に移すなんてことはまずは考えられないだろう、と言うことで。



それでも『ブラシュ』に何かあれば、絶賛今代の【ウルガヴ】の根源魔精霊扱いされているリルがすぐさま連絡をしてくれるとのことで。

何かあるというか、もしも問題が起こるとすれば、現在この世界のどこかへ顕在しているであろう、本物の【ウルガヴ】の根源魔精霊が人違い勘違いに怒って乗り込んで来るかもしれない可能性だが。


それならそれで、楽しそう(勿論、ラル談)であるからすぐに教えて欲しいと言付けてあるらしく。

もはや、思い出作り……魔法学園への留学体験といった、遠足にも似たわくわく、どきどきが皆を支配していて。





そんなこんなで。

いよいよ、ヴァレン騎士学校と、ティア魔法学園合同の実地体験学習の当日である。



ティア魔法学園長の肝入りで特別に一日だけその学習に参加させてもらうこととなったラルたち一行は。

魔法学園の他の生徒達を引率するというエイミとは一旦別れレミラの先導により、彼女の唯一と言ってもいい学園の友人……ではなく、今回ラルたち一行と、実地体験学習の範疇を超えた山越えに参加してくれると言う【セザール】に愛されしヒーラーの少女、セラノ・セザールへ会う手筈となっていた。



ちなみにというか当然のこと、エイミからは『ブラシュ』に辿り着いて落ち着いたら戻ってくるようにも言われている。

これから出会う……一時お預かりする形となるセラノや、娘たちのこともあるのだろうが。

異世界間移動の話を、【リヴァ】狂い……大好きなリーヴァとともに、ラルから色々と聞きたがったと言うのもあるのだろう。



『ヴァレス山』を越える事に関しては野生の魔物たちの存在はもちろん、環境がが過酷であってセラノのようなヒーラーが必須とのことで。

それに関して、何だかんだ言って友達思いなレミラがぶーたれてはいたが、そういった類の魔法ならばアイも使えると言う事であったため。


まぁ、ちょっとした旅行だと。

ラル的に言えば『楽しい楽しい冒険』で、レミラだけでなくセラノの事もしっかり護るからと救世主さまのお墨付きをもらったことで、渋々自分を納得させていたレミラであったが。




「おっはよぅございま~すっ! 今日はあたしまでお山越え、遠足に誘っていただいてありがとーっ!」



真白の長い長い髪を後ろでくくっている、ヒーラーのイメージとはかけ離れるほどに天真爛漫な青眼の少女が。

渋っていたレミラとは裏腹に、楽しそうなことに誘ってもらってうれしいよー、とばかりにはしゃいでやってくる。


そのままの勢いで、一堂に自己紹介を丁寧に行う律儀さを見せたかと思ったら。

天を仰いで恥ずかしげにしているレミラに向かって、惚れ惚れするほどの低い体勢で突貫……抱きついていって。



「ぐぼぅっはぁ!? いつもいつも、それをやめろといってるではないかぁっ!」

「そんなこ言ってぇ、避けないでちゃんと受け止めてくれるから、レミちゃん好き好き~」


エイミ曰くティア学園稀代の治療術師……【セザール】の聖女などといった二つ名まであるらしい彼女は。

アイやイゼリとはまた違った意味で子供っぽいところがあるというか、無邪気が服を着て歩いているかのようで。

邪険にされて振り払われるまで、微笑ましい友情の確かめ合いに、現在少女なローサがしてはいけないによによ顔をしていると。


きっと、ラルも仮面の下で同じような顔をしている(あくまでラルの自己判断)だろうことを気取られたわけではないだろうが。

セラノは何かに気づいたかのように、はっとなって顔を上げて。

少しばかりばつが悪そうに笑みを浮かべたあと、身軽に跳ねるかのような勢いでそんなラルの元へやってくる。




「改めましてっ。今日は誘っていただいてありがとうございますっ。さすが、今代の魔王さまは【ウルガヴ】の魔力がすっごいですねっ。お噂を耳にしてて是が非にでも会いたいって思ってたんですけどっ、想像以上ですっ。ちょっと、抱きしめさせてもらっても良いですかっ」

「あっ、こちらこそ……って、へぁっ!? 一体全体どうしてそんなことにっ!? というか魔王じゃないんですって!」



どうやら、エイミからというか学園長あたりから、ラル……というよりラルの一族というか血縁関係がかつて学園でやらかし伝説を作ったらしいことを聞いていたらしい。


加えて、【セザール】に愛されし生まれであるにも関わらず、【エクゼリオ】が好みというか一家言あるらしく。


出会ってすぐの、思いもよらないそんな宣言に。

さすがのラルも変なところから声が出て、素も出てしまうくらいに、動揺しつつ。


とりあえずは、その『やらかし』に関しては自分ではないと。

慌てて否定して、それでもちゃっかり来るものは拒まずとばかりに。

受け入れ体勢を取っていたりして……。



      (第80話につづく)










次回は、6月11日更新予定です。

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