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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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74/116

第74話、自身の価値に気づけないはずはないのに、それはあまりにも自然で



SIDE:ローサ(inサーロ)




ラルちゃんが今目の前にいること。

いわゆる故郷での俺の行動の結果によるものではあるのだけど。


おかげで出会えたという嬉しさと、着の身着のままこの世界へ……いつものように救世のための目的があるわけでもないのに。

やって来る事となった事への申し訳なさが同居していて。



俺と言うかローサの顔はきっと、形容しがたい百面相をしていたことだろう。

そんな俺の様を見てラルちゃんは、そこまで口にするつもりじゃなかったんだけど、話の都合上仕方ないんだ、とばかりに曖昧に笑ってみせて。




「……この世界へやってきたのは、偶然の賜物だと思っていました。だけどよくよく考えてみれば、この世界に限らず、異世界へ冒険に向かうのは私ひとりの力では成し得ないのです。異世界と異世界の狭間に棲まう魔の物。【リヴァ】の根源魔精霊だと言う人もいますが、かの者の導きによる異世界への行脚は、目的を遂行する意思、力がなければ叶わないのです。その事を考えると、やはり『ブラシュ』にて邂逅しかけたあの存在は、出会うべくして出会ったのでしょうね」



故郷でのあれこれはお互いなんとなくいたたまれないから、この際置いておいて。

ラルちゃんは、早速と言うか遂に『ブラシュ』で起こったこと。

ローサがいなくなってから一体全体何がどうなって、いつの間にやら『ブラシュ』を救ってしまったのかについてを語りだす。



リヴァ】の事となると色々拘りが強そうというか、色々気になっちゃうらしいリーヴァさんが。

知ってます、知ってますよ名前から生態、趣味までなんでもござれと、苛烈に反応していたけれど。

俺やアイちゃんだけでなく、皆がラルちゃんの話を聞きたがったこともあって。

その辺りのことはまた後で詳しく聞くことにして、ラルちゃんに続きを促す。




「『ブラシュ』の国は、予め【ウルガヴ】の巫女であるアイ様を出奔させた事から分かるように、他国……他種族からの侵略を受けていました。闇の魔物を従えていたことから、【エクゼリオ】の根源を信ずる方達によるものだとは思うのですが、彼らが【ウルガヴ】の方達を贄として召喚せんとしていたのは、根源とまではいかないまでも、少なくとも所謂『神型』の魔物、魔精霊であったのは確かですね」

「エクゼリオ? それってグレアム、さんとの関係は……」

「『魔王』なる存在についてはグレアムさんも知っているようでしたが、【エクゼリオ】を信じ与する種族は、多種多様ですからね。知っていたのなら、向かう時に教えてもらえたんじゃないでしょうか。……ちなみに私も結構お世話になっているというか、【カムラル】と組み合わせての魔法の行使は多かったりしますね」



やっぱり怪しいと思ってたんだよ、なんて。

未だグレアムとのひと悶着に思うところがあったのか、そう言おうとしたところで周りにそんな彼の家族がいる事に気づき、それ以上何も言えず口をもごもごさせるイゼリちゃん。


するとラルちゃんが、私の半分は【エクゼリオ】で出来ていますと言わんばかりにすかさずフォローを入れる。




「ふむ。言われてみればラルさんは【エクゼリオ】の魔力が強いの。心地よさすら感じるわ」

「『魔王』ねぇ。まさにファンタジーなこの世界のテンプレ中のテンプレよね。確かにダーリン、そんな話してたっけ。若い頃遠くから見ただけだって言ってたけど、ラルちゃんみたいなすんごい美人さんだって話じゃない? 意外とあの人って、そういう話あんまりしたことなかったから、よく覚えてたっていうか、大人気なく嫉妬してたのは確かねぇ。とはいえ、ラルちゃんをこうして目の当たりにしていると、そんな気すらなくなってはくるけど」



何がスゴいって、仮面越しでもレミラちゃんやエイミさんが言ってる事がしっかり伝わっちゃうことだよね。

その割に、何故だか不思議なくらい褒められ慣れていないのか、フォローしたつもりがとばっちりだってあたふたしてるラルちゃんから、余計に目が離せなくなってしまう始末。



そんなことないよね、とか。

何度も言うけれどそれは身内で、何だか申し訳ないですとか。


何故だか俺というかローサに同意を求めんとしてくるラルちゃんに、俺は釘付けのまましっかり頷いて見せて。


味方はいない、という言い方はあれだけど。

このままだと、また救世主さまを崇める時間が始まってしまいそうだったから。


それよりもそれからどうなったと。

話題を戻すように、俺は口を開く。



「ええと、それで? ラルさまはその闇の根源っぽいの……それこそ魔王みたいなやつと対峙したんだよね。俺やリルさんもろとも、すっげぇ魔法で吹っ飛ばしたとこまでは見てたけど、やっぱりそれでぶっ倒してめでたしめでたしじゃ終わらなかったんだ?」

「いや、うん。少しばかり力が余ってしまってね。倒したと言うか送り返したのは確かなんだけど、使った魔法が問題があったというかなんというか……」



やはり、はっきりと分かってしまう。

きっと眉間に皺でも寄っているんだろう、反省しきりなラルちゃんの苦笑。


この世界における救世のお話には、まだまだとっておきのオチがあるらしい。

であるならば是非にでも聞きましょうと。


俺たちは、より一層聞く体勢に入っていて……。




      (第75話につづく)









次回は、5月26日更新予定です。

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