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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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59/119

第59話、ヒロインふたりの上目遣いに、お手上げな救世ちゅ



SIDE:ラル



「俺は一度目のあの時、しみじみ思ったのです。救世主であらせられるあなた様に対し、イタズラに嘘を吐いたり、調子に乗って騙したりはけっしてしません、と」

「……ええと、いきなりかしこまってどうしたんです?」



ある意味、『ブラシュ』のあの場所で。

お互いやらかしてしまったわけで。

お互いが頭を下げあって手打ちになったのだから。


とにもかくにもまずはアイに今までやってきたことの結果、事情を説明せんと。

自室として宛てがわれた客室寝室にアイとともに招き入れたまではよかったのに。


何故だか何かに怯えたように、部屋を見回して随分警戒している【ヴァーレスト】の魔精霊の少女の態度が、ラルには不思議でならなかった。

その落ち着きのない様子を見て、「分かってるのよ」とばかりに暖かく見守っているアイのこともあって、余計にそう思えたわけだが。




「いやいや、こんな夜更け……もう朝ですけど、招き入れていただいて遅きに失しているのは重々承知しているのです。いつぞやのように、一見無害そうな出で立ちをしておりますが、どうあがいても中の人はサーロ・ヴァレス本人でしてね。……なんて言うか、ごめんなさい。すぐに名乗りを上げれば良かったんですけど」



首を傾げるラルに対し、より一層恐縮した様子で。

その白金糸の髪がざんばらになるくらい何度も何度も頭を下げてくるではないか。



「えと、んと。サーロお兄ちゃん、わたしがよびにいったときには、もうお姉ちゃんになってたよ?」

「ああ、何かと思えばそう言う事、ですか。心配しなくても、リルを通して初めてあなたに会った時から彼の関係者だってことは分かってたので、大丈夫ですよ」

「……その辺りを心配してたわけじゃないんだけども、ラルちゃんが気にしてないのならいいの、かな」



すかさずアイがフォローを入れてくれたせいもあったのか。

サーロ本人であるのに、寝室へお邪魔していることに対しては、まったくもって気づいていないと言うか、まるで気にしていないようで。


少々納得いっていない様子でサーロは小さく聞こえない程度にそうぼやくも。

それならそれでと気づかれ蒸し返される前にと話題をそもそもな本題に移行する。




「ならばええと、俺っていうのもあれですけど、今の状態がいつまで続くかも分からないもんで、とりあえずは『ローサ』とでも呼んでくださいな。……そんなわけで早速、アイちゃんもお待ちかねな、今の今までの結果報告をしましょうか」

「おはなしきいてると、ラルさまとサーロお兄ちゃんで、どこかへ行ってたってことなの?」

「ええ、差し出がましいかとも思ったのですが。どうしても『ブラシュ』の事が気になったもので。彼女の力をお借りして様子を見に行ってたのです」

「……っ! そう、だったの? 闇色のこわいのがたくさんいなかった?」



自らの故郷の名前を耳にした途端、びくりと跳ね上がりへいき? どこにもけがしてない!? とばかりにラルとローサ(inサーロ)に駆け寄って、抱きつかん勢いでぺたぺたあちこち触り、心配げな声を上げるアイ。


やはり、『ブラシュ』の国はあの【エクゼリオ】の魔力に長けた者達に内から密かに支配されてしまって。

幼き彼女は闇色の魔物に追い立てられるようにして、それでも誰かの助けを借りて、故郷を脱出することとなったのだろう。

先程のローサに負けないくらい怯えおののいているアイを、二人して落ち着かせるように軽くポンポンと、抱きしめ合って。



「ああ、いかにもな煙っぽいモンスターとか、大きな角の生えたそれこそ『魔王』じゃねってやつもいたけどな。それもこれも全部、救世主なラルさまの忠実なるしもべ、【カムラル】の星のひと、リルさんがちぎっては投げ、でゅくししては完全粉砕な感じで、何もかもやっつけてくれたから……もう何も心配することはないんじゃないかな。今すぐ帰郷してもいいくらいじゃない?」



ね、そうですよね。

何もかも無問題ですべてまるっと憂うことなく、解決しちゃってますよね、とばかりに。

まるで、ついさっきやらかしてごめんなさいしていた事など忘れ去ったかのように、ラルの事を期待に満ち満ちた空色の瞳で見上げてくるローサ。


そう言えばお姉ちゃん、ここにくるまえにもうだいじょうぶって言ってたものね、とばかりに。

引き続いてアイまでもが、さっきまで沈み込んでいたのも忘れて嬉しそうに見上げてくるから。



「……い、いや。うん。全てを何憂いなく解決しました、とは言い難いのですが。とりあえずは、世界を脅かしそうな悪そうなやつは、なんとか還せたとは思うよ。うん、たぶんきっと。ただ、最後まで見届けられなかったから、すぐにまた確認しにいかなきゃだけれど」



ラルは、何とも言えぬ複雑な表情で。

それでも、嘘を吐くわけにはいかないとばかりに。

苦しい言い訳でもするみたいに。


似合わない苦笑すら浮かべて、そうまとめるのであった……。



 (第60話につづく)










次回は、4月8日更新予定です。

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