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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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56/116

第56話、怖くて焦ってテンパっていたのは、何だか怒られる気がしたから



SIDE:サーロ



(おおぉぉぉぉっ!)


気づかれてないのをいいことに。

今のうちだぜっ、とばかりに。

受けた対象をそう遠くない何処かへ、安全安心仕様で吹っ飛ばす魔法をガンガン繰り出していく。


生まれるはシャボン玉のごとき【ヴァーレスト】と【リヴァ】でできた空気の膜のようなものであるからして、受けた人に衝撃はないはずであるし、大仰な音がすることもない、実に優れものな魔法であるのだが。


その時の俺は、何故か無性に急がなくては、といった強迫観念に駆られていて。

今そこに、偵察、探索に出ている内なる魂のひとつ……リルさんの言う風の魔精霊な彼女の、魔力の許容量のことなどまったくもって考えてはいなかった。


とにもかくにも、あのサイズ感からしてやばそうな、角だけ垣間見える怪物を世に出す前になんとかしなければと。

使命感にも似た思いを抱いていたからなのだろうと、勝手に思っていたわけだが。




「……っ、何事だっ!? ニエが消えただとっ!?」

「これは、【ヴァーレスト】の魔力であるか? いつの間にっ」

「風の一族、【シルソンガ】か?」

「あそこだっ、見えぬが魔力が渦巻いているッッ!」



生贄として囚われの人々が急にいなくなったことで、風通しがよくなったことが災いしたようで。

それまでこちらに気づく事も見向きもしなかった四人のお揃いのローブたちが、それぞれの個性を披露しつつも一斉に反応しこちらに向き直る。



(だが遅いっ! 間髪を置かずいくぜぇっ、【【【【【【リィリ・バッシ】】】】】】っ!!)


しかし、そんな彼らが持ち場を離れたおかげなのか。生贄が減ったからなのか。

顕現しようとしているいかにもなデカブツの動きが止まったのをいいことに。

これで仕舞いだぁ、とばかりに再び受けたものを問答無用でここではないどこかへぶっ飛ばす魔法を打ち出した。


その際、ローブを置いてくる勢いで猛然と向かってくる四天王(笑)は、ちゃっかり避けるものだから。

手前味噌ながらも、やっぱり【リィリ】の魔法ってすげぇって自画自賛しつつ。


ヴァーレスト】の魔精霊らしく、疾風のごとき身のこなしで彼らをあしらい翻弄しつつも。

もうそれしかできません、言えませんとばかりに同じ魔名を、正しくも狂ったようにひたすらに繰り返していた……その瞬間であった。




(……あ? な、何だ? 急に視界が暗く……っ)


まるで、何かが切れてしまったかのように。

視界にノイズが走り、急激に霞み、暗くなる。

それどころか、今の今まで快調に繰り出せていたシャボン玉ですら、だんだんと数が少なくなってゆく。




(やっば、そうか。俺の身体じゃないんだった。調子に乗りすぎたか……)


そもそもが、魔力によって生み出されたのが【ヴァーレスト】の彼女であるのだから。

こうなることは、分かっていて然るべきであったのだ。

それなのにも関わらず、我を忘れて魔名を繰り返していたのは、それほどまでに魔法陣の向こうにいるやつが怖かったからなのか。

答えが出ないままに、偵察、探索の終わりを自覚してしまって。



(リルさんに何にも言わずに帰ったら怒られそうだなぁ。っていうか、置いてけぼりになっちゃうじゃんか。一旦戻って、また来るか)



でも、それでも。

霞ゆく視界の先に、囚われの生贄さんたちがいない……上手く全ての人を避難させ終えたことは僥倖か。


そんな風に、初めての魂の分離……偵察探索にある程度の満足感を覚えていると。

何故かついさっきまで、躍起になって風の魔力の残滓を辿り追い掛け回していた黒ローブの四人全員が、

全く同じ姿勢で、同じ方向……どこまでも続いているように見える尖塔の内側を見つめているのが分かって。



(なんだなんだ? 一体みんなして何を……っ!?)


今にも儚くなりそうな俺を無視してまでなんなのさと。

倣うようにそちらを見上げると。



そこには、リルさんがいた。

炎の色、闇の色、金色は……なんだろう。

とにもかくにも、その三色を身に纏い湛えて。

物凄い勢いで降って、落っこちてくるではないか。



というか、こんな言い方はあれですけれども。

何て言いますか、触る神に祟りなしで今すぐ逃げ出したくなるくらいに、めちゃんこ怒っているように見えるんですけど。


その、魔精霊の長とも言える『神型』を彷彿とさせる、苛烈も体外にしてくれというくらいの三種の魔力もそうだけれど。

生成り色の触手をひとまとめにしたところから、今まさにこの国を、あるいは世界を滅ぼすんじゃなかろうかといった、恐らくは魔法……魔砲? を打ち出さんとしている様に。


あれ? もしかなくても俺って怒り心頭なリルさんがやってくるから、戦々恐々として焦っていたんだなぁって気づかされたわけだけど。



―――それからどうなったかは。

それこそ神様のみぞ知る、って感じなのだろう。



何故ならば、まるでタイミングを見計らったみたいに。

肝心なところで、俺の中に在るもう一人の自分が。

俺の内へと帰ってきてしまったからだ……。



      (第57話につづく)










次回は、4月30日更新予定です。

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