第42話、いつの間にやら娘さんをください的な展開に
SIDE:サーロ
「おお、戻ったか娘よっ! 無事か、何もされてないかっ!?」
どうも、個人的に落ちるところまで落ち込んでもう俺目線はいらないかなぁと思いつつも戻ってきたサーロです。
とりあえず、色々やらかした俺は何事もなくお咎めなしというよりも。
そんな話題はもういいからついてきたければお好きにどうぞ状態で、これ以上自分から穴を掘るのもなんだし、これからわたくしめはどうすればいいでしょうか、だなんて聞ける感じでもなく。
何だかとっても生殺し状態でみなさんの後ろを金魚のふんなごとくついてまわっていたわけですが。
どうやら目的地は、俺をひとまずとっちめるのが先決ということで、諸々後回しにしていたグレアムさんのお屋敷らしく。
今度は何が始まるんです、とばかりに粛々と従っていたら。
開口一番そう叫んだかと思うと、実に魔導人形の創造主らしいグレアムさんに、問答無用で詰め寄られている状態であります。
というより、その言葉通りどうやら妻がモデルだけれど、もう一人の娘さん同然らしいノアレさんに突っ込んでいったのに、実に華麗にスルーしてグレアムさんの突撃をノアレさんがかわしたものだから、ちょうどその後ろにいた俺の方へ、急に止まれず突っ込んでいった形になるのでしょう。
俺が何かしたというか、契約したのは結果的にラルちゃんとであるからして。
その流れでそのままラルちゃんについてきてしまったのはノアレさんの方であるからして。
その辺りの話し合いは俺でなくみなさんでお願いしますねなんて訴えたいところもあったのだけど、何だかそれをかわすことすら億劫になっていて。
「ふぐぅおっばぁ!」
「ぐわわあぁぁっ!?」
だけどグレアムさんとしては、全身全霊心配した上での抱きつきを娘にかわされるなどと思ってもいなかったらしく。
実にみぐさい声を上げて、そんな俺ごとごろごろと転がっていく。
「……うわっ。これ以上ないくらい見事な正面衝突したね」
「お、おにいちゃん、だいじょうぶっ?」
思わず顔を背けて声を上げるイゼリちゃんと、びっくりしたまま健気に駆け寄ってくれるアイちゃんのなんとも天使なことか。
誰かこのなんのお咎めもない生殺し状態をどうにかしてくれといった、どうしようもない願望があったからこそ受け入れました、などとも言えず。
笑顔見せてアイちゃんに大丈夫の合図を送り、グレアムさんをねぎらうように起き上がらせている(二人して体だけは丈夫らしく断末魔めいた声を上げた割には特になんでもなく)と。
そんなちょっとした事故は見えていたのに敢えて気にしてない様子で。
ノアレさんは……元々グレアムさんがいた玉座っぽいところに、こんなことも日常茶飯事です、とばかりにすました様子のタナカさんの方へと向かっていく。
「あ、タナカさんチョウドよかったです。此度、正式にワタシが仕える方が見つかりまシタので、さっそく出立の準備をしたいノデすが、お願いできますカ?」
「あらあら、それは目出度いことです。今日はお赤飯……ごちそうですね。並行して準備をいたしましょう」
「新たな門出のお祝いですか。分かりました。わたくしもお手伝いいたしますわ」
表情少ないながらも、ノアレさんがいずれ自立することはある程度予測していたようだ。
『健康診断』をみんなで受けよう、だなんて話もいつの間にやらどこかへいっていて。
予想通り家庭的……女子力の高そうなリーヴァさんが、グレアムさんを一度やり込めたことでいつの間にやら仲良くなっていたらしく、タナカさんと連れ立って台所らしき場所へ向かってゆく。
そこに、ノアレさんも続こうとしたが。
敢えてグレアムさんを無視していたことで逆に目立ってしまったらしい。
俺との正面衝突のダメージなど微塵も感じさせず、グレアムさんががばぁっと立ち上がってノアレさんに追いすがる。
「ちょーっと、まてまてまてーい! どういうことなのっ、お父さんそんな話聞いてませんよぉぉっ!?」
「言ってマセンから。……というか創造主サマ、いつの間にワタシの父上にナッタのです? 主サマにサワリますから、そう騒がないでクダサイ」
「あっ、主サマだとおぉぉっ!? 従属、隷属させたのかぁっ、そっ、それともっ、まさかぁっ!?」
「エエ、そうです。夫婦的なアレですね」
「ちょっ……ふっ、夫婦ってなにさっ! いや、何ですかっ。存在を保つための契約でしょうにっ」
「あ、ワタシの主サマのラル様デス。そう言うコトなので、ワタシは父サマの元を巣立ちマスのでよろしくお願いしますネ」
「なんだとおぉぉっ、友サーロではなくぅっ…………なっ、もももしかして、あ、ああ貴女様はあああぁっ!!」
ノアレさんの冗談とも本気ともつかない台詞にあてられて。
ちょっぴり素を出しつつ慌てるラルちゃんこそが、娘の……ノアレさんの契約相手だとグレアムさんも悟ったらしい。
はっとなってその正に鬼っぽい表情を俺からラルちゃんに切り替え、同じようにずずいっと迫ったまではよかったのだが。
何故かそのまま、グレアムさんは仕えるべき存在……まるで王様にでもひれ伏すかのように、スライディング土下座をかましたではないか。
「……え? な、何? 何なの?」
多分きっと、俺がにらむに。
そういった経験も初めてではないだろうに。
いつでも初心な反応を見せるラルちゃんを。
結局少し離れた所で見守りながら、申し訳なくも思わずにやけ、ほっこりしてしまう俺がそこにいて……。
(第43話につづく)
次回は、2月14日更新予定です。




