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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第一章:『救世ちゅ、降臨す』

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第28話、この世界へ『一休み』しに来た理由、さわりでさらっと



SIDE:ラル



「……そうですわね。勢いでここまで来てしまいましたけれど。ラル様がお嫌でしたら、このまま放っておいてしまうのも一興かもしれませんわね」



ラスヴィンギルドにおいて、サーロが所属していたのは数年あまりであったが。

現時点のランク(GからAAAまであって、サーロは現在Bランク)以上の活躍をしていて。

賞金首と野盗が結託していた想定ランクを超える案件もそうだが、ランク以上の仕事も確実にこなす、底の見えない将来有望な冒険者であって。

リーヴァが専属を打診されるくらい優秀であったサーロ。


八方美人で誰も彼もに声をかけて仲良くなってしまうようなサーロはしかし、そんなリーヴァを専属にすることを、あっさりと断った。


曰く、既にサーロ的に大きな存在に雇われているようなもので。

いつかそのうちにここを離れ、やらなければならない任務がある。

 

それが、ラルを守り支える、というものであると知った時。

リーヴァの中にあったのは、言いようのない嫉妬であった。

小さい頃から冒険者を兼任しており、AAクラスである彼女は、生まれてこの方そんな風に袖にされたことなどなかったから。

サーロがどこか誇らしげに言う、守るべき羽休め中の救世主とはいかほどのものかと。

強気で探り、試すような面持ちでラルに会いに言ったわけだが。



結果は、刹那の撃沈である。

もう、サーロの事なんて二の次だと言えるほどに。

ラルという人物に靡きのめり込み、感じ入ってしまっていた。


その、幼くとも10人中12人が振り返り目を剥く、などと評される語り継がれることとなる見目はもちろんのこと。

凄絶な輝きを放ち、今にも幽くなってしまいそうな、心、精神を目の当たりにして。

全てを投げ打っても護らねば、などと強く思ってしまって。

極めつけは、サーロを避けようとしていることにも通じる、この世界に来ることとなった理由を耳にしたことがあるだろう。



恥ずかしく、あるいは純粋に。

際限ないくらいに悲しげに。

ラルは呟いたのだ。


自分はみっともない敗者であると。

想いを告げるという、勝負すらできなかった敗残者であると。


しかし、思い人は残酷なまでに優しかった。

これ以上一緒にいたら迷惑がかかるし、どうにかなってしまうかもしれない。

 

だからラルは、ひたすらに逃げたのだ。

その人が、追ってこられないようなこの世界(異世界)にまで。

 

 

……だが、皮肉にもサーロはそんな相手にそっくりだったようで。

見た目以上に、魂が、その身体をつくり纏う魔力の色が。

ほんの一瞬の邂逅でも、分かりやすすぎるほどに思い知らされるくらいには。



……それは、寝物語変わりに。


一応別人の話であるといった体で聞いた、ラルの本音で、真実であった。



もしかしたら。

これからゆっくり少しずつ詳らかにされていくものだったのかもしれないが。

それを知ったリーヴァたちの、ラルを支え護りたいという名の絆は、永久に壊れることはないだろうと思えるくらい強いものになっていた。


故にこそ、リーヴァのそんな提案は、ラルの本音を引き出すための逆の言葉、でもあって。




「え? ……で、でも。いやっ。皆さんは会いにいった方がいいのではないのですか? お、私はどこかで待機していますから」

 


特に、アイとイゼリは山賊某に捕まっていた所を助けてもらった形になるのだし、ラルが逃げ出したことでそのお礼も言えていない。

ラルにしてみれば、ごくごく自分の都合で皆に迷惑をかけるのが申し訳なくて仕方がなかった。

故に、みんなを見回してそう聞いたラルであったが。

 


「あー、うん。ラルちゃんがサーロにぃに会いたくないのなら、それはそれでいいんじゃないかな。そもそも、たまたまこの先にサーロにぃがいるだけで、本来のボクの目的はこのお屋敷の中で行われている悪事をおおやけにすることだからね」

「あくじ? お屋敷のえらいひと、なにかしたの?」

「あれ、話さなかったっけ? 一度ボク、ギルドの依頼でここに来てつか……ああいやっ。じゃなくって、このお屋敷の主、ヴァンパイア一族らしいんだ。なんでも町の人を集めて血を取ったり、ヴァンパイアの力をもって下働きの人たちを操ったりしているみたいなんだよ。それを暴くためにリーヴァねぇのこと、呼んだんだ」

「ふぅん。そうなんだぁ。あんまりわるいかんじ、しないけど……」



一度捕まりそうになって逃げたなどとは、大いに矛盾を孕んでいたので。

ギリギリのところで口にはしなかったが。

アイがそう言って首をかしげるように、ヴァンパイアであるからしてイコール悪事を働くだろうといった図式に、ラルもあまり納得はいっていなかった。


血こそ吸うことはないが、人の悪意、悪感情を糧にして生きていたという一族の血が流れているラルにとってみれば。

単純にヴァンパイアという種であるというだけで、偏った考えをしていいものかと思ってしまったからだ。



「まぁ、確かに。その真実を突き止めるための査察が、ここに来た目的のひとつであることは確かですね。先行しているサーロさんからの連絡がないのは、イゼリさんのいつもの早とちりで、特に問題ないという証左ではありますが……せっかくこのような大きなお屋敷に入らせてもらえる許可をいただいたのですから、とりあえずお邪魔してみるのも一興ではないでしょうか」



山賊、賞金首のアジトを突き止める件にしても、サーロより先行していたはずのイゼリは逆にしっかり捕まってしまっている所を見るに。

活動的で優秀そうな見た目に反してドジっ娘というか、ポンコツな印象の拭えないイゼリ。


リーヴァねぇひどいよぅ、などと半分涙目なイゼリであるが。

今までの実績として、Cランクから上がれないでいる事実があるので、一見冷たくスルーしつつ。

リーヴァは折角の入場チケット(行政代執行的な、強引なものではあるが)があるのだから、観光して行きましょう、とでも言わんばかりにラルに対しお伺いを立てる。



それこそ、泡沫うたかたの化身のごとき見た目に反して、お金にうるさくタダに弱いラルは。

タダ券的なものがあると言われて大いに興味を惹かれたようだが。

内心ではサーロが自身を終わらせた人物の差し金でやってきた、お節介焼きであると。

あるいは、この世界の『その人』そのものであると。


さっきまでイゼリに化けて側にいたのを気づかないくせに妙な確信を持っていたので。

結局は恥ずかしさが、後ろめたさが勝って動けないでいたわけだが……。



 (第29話につづく)









次回は、2019年1月1日更新予定です。

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