第23話、知らぬ預かり知らぬところで逃げ場はなくなっていく?
「ラルさま、何かあったの?」
「ええ。どうもきな臭いというか、この街には何か秘密があるようです。一旦イゼリさんと合流し、調べたいと思うのですが」
「うん、わかった。ラルさまがしたいことをすればいいよ。アイ、お手伝いするから」
「……っ。ありがとう、ございます」
ぴったりくっついて離れない勢いのアイ。
それでラルは、はっとなる。
今まではこういった事件めいたことについて、依頼であったり使命であったり、大義名分があった。
しかし、何にも縛られない今は。
ラルの意思一つであり、興味本位でしかない。
考えすぎの大げさかもしれないし、首を突っ込む事が正しいかどうかも分からない。
これからの行動はある意味、ラルにとっての我が儘なのかもしれない。
……でもだからこそ、価値が有る。
それが何だか、ラルにとってみれば素敵なことで。
それに気づかされてくれたアイに礼を言いつつも。
ラルは早速行動を移すためにと、イゼリの気配を掴もうと【索敵】の魔法を発動したわけだが。
「……およ? あ、えっと。なにこれ。ギルドカードがふるえてる……って、イゼリさんからだ。うんと、耳にあてると声が聞こえてくるんだよね」
同時に、ギルドカードを介してイゼリから連絡が入ってきたらしい。
しばらく、たどたどしくもふむふむやっていたアイは、一方的なそれに律儀に返事を返しつつ、やがて顔を上げる。
「イゼリさん、宿取るまえに急用入っちゃったんだって。まずアイ達でお宿を取らないと」
「イゼリさんは、どこで何を?」
「えっと、ごめんなさい。わかんないです。……あ、でも、連絡届く範囲狭いから、街の中にはいると思うよ」
「そうですか。これはまた、いきなり複雑な事になりましたね」
「……?」
カードの仕組みについては、確かにそう事前に聞かされていたが。
……ならば、ラルが捉えた、街の外にあるイゼリの気配は一体どう言う事なのか。
サーロのあずかり知らぬ所で、調子に乗って隠していた秘密が、今暴かれようとしていた……。
※ ※ ※
何ものにも縛られずに行動出来る事の素晴らしさ。
今までも、ラルが思うほどに雁字搦めというわけでもなかったのだが、とにもかくにも仮面の下でテンションを上げつつ、とりあえずはこの街で宿を取る事にしたわけだが。
魔法薬と新しい代表(領主)によって街自体が活気づいているらしく。
街ゆく人の雰囲気とは裏腹に、商人や冒険者などの客で、どこも混んでいたが。
運良く三人分の宿を確保でき(そのための手続きも手馴れていて、アイにすごいと褒められて照れていたが)、ほくほくなままラル達は荷物も置かず再び宿を出る。
「ラルさま、どこへいくの?」
「とりあえず、イゼリさんと合流しましょう」
「用事のあるところ、行っても大丈夫かなぁ」
「どうでしょう。どなたかと一緒にいるみたいですが」
一瞬、二つあった気がしなくもないイゼリの気配。
今は、何者かと一緒に街の外に一つだけあった。
何者か。もしやあの男が追いかけてきたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
イゼリを……正確にはイゼリを構成する魔力を検知した際の、そのすぐ近くにいたのは。
【風』などを中心に魔力構成されたサーロなどではなく。
珍しい【時】の魔力を中心に構成された何者かであった。
「だれ? サロにぃかな」
「いえ、どうやら違うようです。でもこの感じ、何処かで会った事があるような」
それは、ラスヴィンの街を出た時に、ほとんど無意識に周囲をサーチしてなんとなくついてきているような気がしなくもないと思っていた気配に似ていた。
サーロが追いかけてくるんじゃないかって思っての事だったが、その気配はサーロではなかったので、それほど気には止めていなかったわけだが。
「あっ……イゼリねぇとギルドの受付のお姉さんっ」
ちょうどその二人は、外門を通って街へと入ってきた所だった。
蜂蜜色の髪を後ろにくくった……だけどさっきまでのイゼリとは違和感のある(だけど魔力の質は変わらないから、彼女本人なのだろう)彼女の隣には。
ラルがラスヴィンのギルドでアイと待ち合わせた時にはいなかった、銀髪ウェーブ&どこかきつめな猫目の、高貴な佇まいの少女がいた。
銀緑の瞳は氷のようで、ラルを厳しく睨めつけているようにも感じられる。
仮面越しとはいえ、あまりそういった視線に晒された経験の少ないラルが内心でどぎまぎしていると。
会った事があるからなのか、物怖じしない様子のアイがとてとてと近づき、二人と再開の挨拶をかわす。
「なんだぁ、イゼリねぇ。用ってうけつけのお姉さんとの待ち合わせだったの?」
「え? う、うん。まぁねっ」
別に行動する必要、とくになかったんじゃあと笑うアイに。
イゼリはどこか焦ったような誤魔化し笑いを浮かべる事しかできない。
と言うより、アイは目の前にいるイゼリが本物であると分かった上での言葉だったのだろう。
その焦りっぷりをみれば、ラルも気づきそうなものだが、どうも魔力の探査の信頼度が高すぎるようだ。
それでも嘘というか、そういった繕いがうまくできるタイプではないので、鈍いラルが気づくのも時間の問題だったのかもしれない。
それを分かっていたからなのか、話を逸らすように口を開いたのは。
冒険者ギルドラスヴィン支部の受付嬢、リーヴァ・リヴァで……。
(第24話につづく)
次回は、12月17日更新予定です。




