表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第二章、『かえってきた救世ちゅ』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/116

第104話、魔道具を扱う商人になりたかっただけの、普通の魔法使いだから



「わざわざ顔を出してもらってすまなかったな。娘のご友人たちよ。……いや、この国の救世主さま方か。本来ならば、こちらから伺わなければならぬのだが、大臣がうるさくての。こんな高い場所からの謁見となってしまい、本当に申し訳ないと思っておるぞっ」



イゼリに連れられてやってきたのは。

所謂謁見の間と呼ばれる場所であった。



『フーデ』の街は、やはり獣人族の王が纏める国でもあったらしい。

そんな『フーデ』国の姫であるイゼリが王国であることを口にしていなかったのは。

他の王国のように、一目で王城と分かるようなつくりをした建物が無かったことと。

イゼリ自身があまり故郷を国だと思っていなかった節があったからで。


とはいえ、イゼリに実家だと案内された城らしさはなくとも豪邸といってもいい広きにすぎる今いるこの場所こそ、確かにこのフーデ国の城で。

そんな豪邸の一番広くスペースを取られた場所。


王の玉座があることで、謁見の間であると判断したのは。

ありとあらゆる世界を旅し、国を訪れてきたラルにとってみても、とても雰囲気があって当代の王の威厳めいたものが空気感として現れていたからだろう。



(うん。盗聴魔法を防ぐ結界魔法は、魔法攻撃にもある程度対応しているみたいだ。あのふくろう耳の大臣さんが設置したのかな。よくよく見ると他にもありそう、もっとじっくり調べてみたいなぁ)


とはいえ、そんな脱線するのもイゼリの父であるフーデの獣王のお話を聞いてからだろう。

正しくも獣王らしく、どこかしこも大きくて。

どうやら、イゼリ(彼女はフーデ王の末娘らしい)と血が繋がっていても種族としては別らしく。

同じ猫科でも、彼は大型の、まさに百獣の王めいていた。


その、もふもふに過ぎるタテガミは、謁見の間にある魔道具以上にラルを引きつけてやまかかったが。

仮面をつけていたこともあって、何とかもふもふしたい欲にも勝って、王の言葉に返事を返す。



「イゼリさんにはお世話になっています。ええと、まだ名前はないのですが、この世界を回る冒険者として共に活動させていただいています。そのうちのひとりである、ラルと申します」


だが、ラルの口から出てきたのは、敢えてなのかそう主張したかったのか。

ここへ来たのはあくまでもイゼリのパーティメンバー、友達として参っただけであり。

攫われそうになっていた子供たちを見つけ奪還したのはたまたまの偶然で見返りを求めることはない、といった意味合いを含んだ言葉で。

冒険者のパーティというか、救世ちゅラルさまと愉快な仲間たちといった、ラル以外暗黙の了解で決まっていたそのパーティ名も、ラルにとってみればスルーしてしまうくらいにはお気に召さないというか、そもそもパーティのリーダー、中心であることの自覚も無い様子。



思わず、リーヴァとローサは顔を見合わせて、目と目で会話する

リーヴァの、『リヴァ』の一族の代々の宝である、『時なる預言書』に、難解で曖昧ながらも書かれていたこと。

救世主ラルのもとに集いし11の乙女たちであるのだと。

希望も込めて無意識に認識してしまっていた(特にリーヴァ)けれど。

ラルとしてはその辺りも特段意識してはいないようであった。


それもそのはず、『私たちはラルさまのもとに集いし乙女達である』と、おおっぴらに口にしたわけでもないのだから。

仕方ないといえば仕方がないのかもしれないのだろう。




「ああ、冒険者になったのは聞いていたのだ。イゼリは、わしの子供たちの中でも一番の末っ子でなぁ。

一人飛び出した時にはそれはまぁ心配したものだが、このような頼もしいご友人方を連れ凱旋してくるなどとは思ってもみなかったぞ」

「……べつに、そんなつもりはなかったし。船の中継地点だから立ち寄っただけだし」


大きな手でばしばしと叩かれているイゼリは不満そうであったが。

同じようで違う家族の元を離れなければならなかったアイを見て、自重したのだろう。

もごもごしつつ、そう言うにとどまって。



「しかし、そうか。冒険者であるか。……いや、な。実はここ最近教会の子供らが行方不明になっておると聞いて、ギルドの方へ探索依頼を出しておったのだよ。そうであるな。ホロウよ?」

「はい。すでに依頼の受理受託、完了を終えております。ラル様とその御一行により依頼が達成された、と言うことも」


イゼリを見つめる『フーデ』の獣王は、正しく彼女の父、そのものであった。

ほとんど父親との思い出がないラルにとってみれば、羨ましい気持ちもないでもなかったが。

それでも一国の王であることも、間違いはないらしい。


ごくごく自然な形でそんな話をふったかと思えば、間髪を置かず、ホロウと呼ばれたフクロウ獣人の大臣は、ご確認をお願いします、とばかりにギルド側の人間であるリーヴァへと視線を送る。



「……はい。冒険者ギルドにてその依頼は受理、達成されておりますわ。復唱しますと、『フーデ』近郊にて各教会の子供たちが行方不明になっており、その捜索を願うとのことでした。その依頼遂行に対して、子供たちの行方不明の原因となった下手人達を見つけ出し捕らえることとがあれば、追加報酬もあるとのことです。基本報酬は一万dt。追加報酬は5千dt。更に、『フーデ』王国の宝物殿から望みのものを一つと書かれていますね」

「ええっ!?」


そこまで来ると、さすがのラル様も上手いこと報酬を押し付け……いや、与えられようとしていることに気づいて。

そんな驚きな声を上げつつも、宝物殿というフレーズに惹かれつつも、そんなつもりはないですとお断りを入れようとすると。

一つ訂正が、とばかりにホロウ大臣がリーヴァの後を引き継ぐ形で口を開く。



「更に追加の報酬が、『フーデ』王をはじめとする我らが獣人族に何かできることがあれば、出来うる限りお力添えさせていただく所存であります」

「ああ、そうだ。何でも……儂らで叶えられることならば救世主殿の力になろうぞ」

「ふふ。うちとおんなじだねぇ、ラルさま。なんでもかなえるよ~」

「……うぅっ」


ある意味で追い詰められて。

言葉失うラル。


瞬間、イゼリの猫耳と尻尾+『フーデ』王のもふもふたてがみと、ホロウ大臣のもこもこ羽毛といつでも可愛いアイの姿が目に入って。

辛抱たまらなくなって、思わず助けて欲しいよとローサとリーヴァの方を見やるも。

二人して分かってますよ、ラルさまの御心のままにとばかりに頷いていて。



「ええと、その……だ、ダンジョンを。地下にあるダンジョンをもっとよく調べたいです。『ヴルック』の魔物魔精霊さんたちも気になりますし」


仮面の下では半泣き状態になりつつも。

それでも何とかラルは、やってみたかったこと、願いを絞り出すのであった……。


SIDEOUT



    (第105話につづく)







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ