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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第二章、『かえってきた救世ちゅ』

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第101話、恥ずかしながら、世界一のマスコットになれるというのならば



SIDE:ローサ



それからの展開は、本当に目まぐるしいものがありました。

イゼリさんとしては、ちょっと故郷に立ち寄るつもりだっただけで、ことを大きくするつもりはなかったのでしょうが。

この、獣人族の街どころか国であったらしい『フーデ』だけでなく、世界の宝である子供たちが、さらわれかけていたと言うのならば話は別だと、『フーデ』国の上の人に掛け合ってくれていたらしく、牛歩ながらどこかで見たことのあるような光景……

出会う人(機械仕掛けのモンスターさんたち)ほとんどを後ろにひっつけて、地上に帰還した時には、

実に十人十色で様々な種のお耳をお持ちのみなさんが待ち構えていて。




「みんな! あぁ、無事で良かった!」


『フーデ』の国にある身寄りのない子供達と一緒にくらしている【アーヴァイン】教会のシスターさん。

もふもふ垂れ耳なウサギ人族の彼女。

教会……孤児院はいくつかあれど、一人で教会を維持管理していたうさ耳シスターさんの大変差を目の当たりにしたことによる【アーヴァイン】の教会の子供たちは。

少しでも生活の足しになればと、みんなでダンジョンに潜ることにしたのだそうで。

そこを運悪く、闇の一族の人々に目をつけられてしまったのでしょう。


魔王を呼び出し、顕現させるために儀式に必要となる生贄。

一度はラルさまによって頓挫してしまっているのを知っているのか知らなかったのか、と言う点もありますが。

もう必要はないと言うよりも早く、そのタイミングで目を覚ました(担ぐのも億劫でしたので、引きずっていたのがいい刺激となったのでしょう)僧のようにカミひとつない、ぼろをまとった青年……ハーゲンと言うらしい彼は、正しくも悟りでも開いたかのように、まずは土下座をする勢いでひれ伏した後、我らが女神、そのお言葉全てに、粛々と従いますと宣言。


他に5人ほどいた黒フードの男たちは、ハーゲンがまとめ役であったかどうかなどお構いなしにローブを脱ぎ捨て、自らで作り出した炎により、不浄とされているらしい黒の髪をそれぞれが焼却。

(この時点で、女神さまはめちゃくちゃ引いていました)

新しき宗教の始まりだ、とばかりに両ひざをつけたまま、ラルさまにむかって祈りを捧げる男たちに、

セラノさんが、ラルさま以上にいや~な顔をしていたのが印象的でしたけれど。

まったくもって気持ちが分からなくもないわたくしは、そんな彼らに戸惑っているラルさまになにかお言葉を、と進言いたします。




「……え? ええと、その。まずはこの国の法に則って、裁きを受けてください。それが終わったら、みなさんは自由です。ですがお仲間さんがいるのならば、もう悪いことをしないようにって伝えてもらえるとありがたいですけれど」


子供たちを攫わんとした罪はあるが、こうしてラルさまのお力により未遂に終わっていて。

悪事を問うのならば、子供たちを怖がらせ、押さえつけ従えようとしたことでしょう。

その辺りの役どころは、ハーゲンが主に担っていたようで。



「このまま大人しくついてくるのならば、相応の報酬をくれてやろう」


本当にそのつもりがあったのかと聞けば、もちろんですの一点張り。

実際、そうなのかもしれないが、魔王の生贄となって報酬をもらうべき本人たちがいなくなったのならば意味がない、やっぱりラルさま、少々甘いのではと思いましたが。


生贄経験者であるウルルさん曰く、魔力は根こそぎもっていかれて、しばらく動けなくはなるけど、命までは取られないはず、とのことなので。

余計な口は挟まないことにして、相変わらずラルさまに向かってありがたやありがたやと祈りながら連行されていくハーゲン一行を見送っていると。

入れ替わるようにしてか茶色い靄めいた【ガイアット】の魔精霊さんをまとわりつかせている、

どこからどう見ても人の形……ロボットにしか見えない【ヴルック】の魔物さんたちが数体がかりで、何やら大きな荷物を持ってやってくるのが見えます。




「オヤ? あれはもしや……」


それに真っ先に反応したのは、初めからそこはかとなく仲間意識めいたものを持っていたらしいノアレさんでした。



「イ、カイ」

「……ック」

「ふむふむ。錆びてきて取り替えたパーツデスか。ええ、【ヴルック】の魔力モ健在ですし、

たとえばウチの父さまなら、それなりの報酬が見込めると思いマスよ?」

「おぉ~、【ヴルック】の魔物さんたち、古いからだ取り替えられるんだね、凄い」



仲間意識があるからこそ、言葉が分かるらしいノアレさんと、魔精霊とのコミュニケーションならばお任せなラルさまとの、そんなやりとり。


よくよく聞くところによると、地上に住む【アーヴァイン】属性に偏りがちな獣人族が苦手としているらしい、【ヴルック】属性をもって、ダンジョンに生み出された彼らでしたが。


生きていくのには、【ヴルック】の魔力と【ガイアット】の魔精霊たちの力を借りれば十分なので、ダンジョンを守り維持していくものとしては、必要以上の干渉が……

たとえばダンジョン自体が脅かされるようなことがない限り、ダンジョンの周りに住まうものたちに危害を加える腹積もりなど毛頭なかったようで。


むしろ、自然物に人の手が加えられることによって、形作られた物の多い【ヴルック】の魔物、

あるいは魔精霊たちは、その本能故に周りのものに何か働きかけたい、存在する意義を示したいと思っていたようで。




「せっかくですし、買い取らせていただいて、装備の充実をはかるのがよろしいかと愚考いたしますが、いかがいたしましょう、ラルさま」

「ぐこう? う、うん。私もそう思ってたんだ。一応ここのダンジョン産になるのかな。そうしたらギルドの方にも聞いてみなきゃだけど」

「そうですね。テイムモンスターではないのですが、その持ち物を譲り受けたということならば、連絡さえいただければ基本的に料金が発生する、ということにはならないと思いますが」

「仲良くしてくれるのはうれしいけど、その辺りのことはしっかりしないと。……どうしようかな」



何だかんだ、なんとはなしに嫌な予感がして。

それでも泣く泣く二手に分かれて行動したまではよかったものの。

今の今まで極力目に入れないようにしてきましたが、わたくしもリーヴァさんも、そろそろ限界のようです。


敢えて別行動とった理由について、ルキアさん辺りに突っ込まれる、と思っていたわけですが。

そんな彼女が恥ずかしさで小さくなって、存在を薄めるようにしている時点で、察するべきであったのでしょう。


ラルさま班は、もうぶっちゃけますと元々お持ちになっていたイゼリさんも含めて、皆が皆獣人族特徴を表していると言えなくもない、耳と尻尾を装着していらっしゃいました。

みなさんが一様に、それぞれの魅力を存分に引き出しており、直視するとその瞳ごと持って行かれそうなほどの勢い可愛さで。

特にきつね耳をつけていらっしゃるラルさまは顕著でした。


恐らくラルさまとしては初めは多くの獣人族の棲まう『フーデ』の町に馴染む、あわよくばもふもふさせてもらえるくらいには仲良くなりたい、などと思っていたはずですが。

よくよくなんとか、その耳と尻尾を確認しますと、それなりの魔力が、正しくもマジックアイテムのごとく込められているのが分かります。

マジックアイテムなどを扱う旅商人になりたかったラルさまとしては、最初の目的忘れずともそれぞれに合う耳と尻尾を見繕ってしまおうと思い立ったに違いありません。



当然その中には、わたくしやリーヴァさん、別行動班のみなさんのものも間違いなくあるはずで。

ラルさまの贈り物で、装備して欲しいと言われたのならば当然の如く吝かではありませんが。

それでも、直接的にそう言われるまでは、少しばかり抵抗をしてみせましょうと思い至り、わたくしはそのタイミングで口を開きます。




「言葉通り【ヴルック】の魔精霊、魔物でいらっしゃるみなさんに、対価としてお金というのもナンセンスでしょう。ラルさまにおかれましてはこんなこともあろうかとマジックアイテムを多くご購入されたご様子。是非に、彼らにあったものを見繕っていただくのはどうでしょう」

「あ、そうだった。どれもいい感じで目移りしちゃって。それでも買い占めない程度には買ったんだったよ。ほら」


そう言って、いつに間にやら背負っていて……いえ、正直申しますとわずかながら浮いている気がしなくもないですが。

故郷のお兄さまが、ラルさまにプレゼントしたものらしく、何だかんだでラルさまも捨てられないでいる緑色のマジックバッグから、色とりどり、十人十色では足りないほどに様々で多種多様な耳バンドと、尻尾アクセサリーを、両の手のひらいっぱいどころか、両腕で抱え込む勢いで取り出します。



そのあまりな量に、大分引きつつも。

これを対価とするのはいかがでしょうと。

ヴルック】の魔物、魔精霊さんを代表して近くにいたお三方を伺うと、三者三様、正しくも機械仕掛けの人のゴーレムらしく、喜びと感謝を表現してくださいました。


もう長いことこの『フーデ』の町の地下ダンジョンにいたとはいえ、獣型のゴーレムでない限り耳尻尾もついてはいなくて。

よそ者だとずっと思っていたかはともかく、同族めいた、同じ町に住むにあたって、仲間意識を持つのには、とても良い部品パーツであったことでしょう。

 

少なく見積もっても、ラルさまが抱えている分くらいにはダンジョンに住まう【ヴルック】の魔物、魔精霊さんはいるでしょうから、お優しいラルさまのことですから、言葉通り一人一人にあった耳と尻尾を考えプレゼントなさるはずで。


故に、わたくしたちのぶんは、時間もかかるでしょうし、今現在拠点ホームとしている魔導船に帰ってからでも……

なんて算段をしているわたくしたちのことにお気づきになったのかもしれません。

それでも、流石はラルさまには。

わたくしたちを辱めようとか、そういったマイナスの感情は微塵もないようでしたが。



「……それならばハイ。ラルサマが購入した耳と尻尾のパーツの性能を把握済み、記憶済みのワタシが同志のみなサンに配らせていただきマス」

「うむ。いい心がけだぞ妹よ!」

「私たちも手伝います。いいですよね、ラルさま」

「あ、うん。お願いしてもいいの? ありがとう!」


未だそれぞれにあった耳と尻尾をいただいていない三人は。

まるではかったかのように徐々にわたくしたちを追い詰めるかのように。

そんなやりとりをしつつ、代表のロボット……じゃなかった、ゴーレムさん三人と連れ立って、その場を離れていってしまいます。



「それじゃぁ」

「とりあえずパ……町を治めているの王のところまで行こうよ。ほんとはよっていくつもりはなかったけど、背に腹は変えられないよね」


ならばどうするかと。

わたくしたち残された、未装備班が何か言うよりも早く。

イゼリさんが、子供たちと闇の一族のみなさんを然るべき場所へ連れて行こうと言われたのならぐうの音も出なくなってしまって。


思わずリーヴァさんと顔を見合わせて苦笑しつつ。

そんなイゼリさんたちの後についていくと。

縮こまり恥ずかしがっているルキアさんと、それを面白がって近くを回りながら? 構いまくっているウルルさん……ではなく。

アイさんがキラキラした瞳をしつつわたくしたちの元へとやってきます。



「ローサねぇ! ラルさまがね、ローサねぇがみゃんぴょうさんになれる装備、えらんでくれたのよ。リーヴァねぇにはドラゴンさん!」

「まぁ、それはそれは。ありがとう存じますわ。アイさん、ラルさま」

「ドラゴンさん、ですか。白い竜は珍しい気もしますが、それより何よりとっても可愛いですね」

「……くっ!? なぜだ、二人してまるで堪えていない、だとっ!?」


ちょっと遠くで、ルキアさんの愕然とした声が聞こえてきましたが。

恥ずかしさよりも嬉しさと可愛さが上回っただけですね。

少々時間稼ぎして、覚悟を決めたせいもあるでしょうけれど。


リーヴァさんが、アイさまから手づから受け取ったのは、美しく白く輝く角と長く艶やかな尻尾でした。

マジックアイテムとしての効力は、【リヴァ】魔法の耐性と、守備力上昇がついているようです。

ギルドを飛び出して、ラルさまのパーティに冒険者として復帰しても、働き詰めなリーヴァさんを気遣う素敵な装備ですね。


そしてわたくし、ローサめが賜りしものは猫ともきつねともつかない、あまり見たことのない、

ひまわり色のもふもふ耳ともふもふなのに、鋭角に波打っている尻尾でした。

ルキアさんの狼耳尻尾と比べると、耳は少し垂れていて、尻尾はワイルドさよりも可愛さに重きを置いています。

その効果は、魅力強化と、【ヴァーレスト】魔法の効果アップ(主に、音系と呼ばれる特殊魔法)でした。


実際、あまりにも可愛らしくて自分に似合うものかと、少しばかり恥ずかしい気持ちもあったりして。

ルキアさんの期待通りなリアクションを取るだろうことは否めませんでしたが。

ラルさまとしては、本当に似合うものをと。

役に立つものをと選んでもらえたことが、よくよく分かってしまったので。

やはりそちらの感動の方が上回ったのは確かでした。


特に、【ヴァーレスト】魔法の効果アップ……特殊魔法限定で効果アップするところがポイントでしょう。

ここでいう音系魔法……特殊魔法とは、歌を歌って発動する類いのもののことを差します。


それは、よくよく考えなくともこの世界にはそうそうないであろうレアアイテムで。

ラルさまも見つけた時は、すごく嬉しくて興奮して、是非にもわたくしめにと、思ってくださったはずで。


故にわたくしは。

イゼリさんとお話しつつも、このきつね耳と尻尾を装備しているわたくしめを、今か今かと待ってくださっているラルさまのためにと。



改めて感謝と感動の気持ちを込めて。


プッピガァァーーン!

などと効果音を付ける勢いで世界にひとつだけかもしれないきつね耳と尻尾を早速装備して。

ラルさまの元へと駆け出していくのでした……。



   (第102話につづく)







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