出会い?
・・・リーン
王立図書館の司書リーンは見たことないような服を着た少年が王立図書館に入ってきたことに驚いた。
王立図書館には結界により、貴族、王族とその血縁者しか入れないはず。
「ねえ、君」
受付の前を通り過ぎたその子に呼びかける。
「何?」
はあ。
どこの貴族の子かしら、後で礼儀を教えようっと。
「敬語を使うように、言われなかったの?」
「何の用かって聞いてるんだけど」
私の言葉を無視するですと?
「ね、敬語使おうよ」
「うっさい。忙しいからもう行くよ」
そういってその子は走って行こうとした。
「待ちなさい」
とっさに尻尾が伸びてその子の手首に巻きついた。
「私の種族知ってて敬語使ってないの?」
「種族は知らないけど、尻尾の先の形とスタイルの良さから見るとサキュバスっぽいかな」
予測で当たるわけないわ。
絶対強がってる。
今日はおいしい獲物が捕まったわ。
「強がっちゃ、だ・め・よ」
そう言って手首をくいくいと引っ張る。
「強がってる、まあ外だったら恐怖感じるんだろうけど、図書館の中だとね。巫女のシリーが図書館の中はたまに悪魔がいるけど悪さしないって言ってたからな~」
シリー? てことはこの子は神官見習いなのかしら。
それなら堕としがいがあるわ。
「じゃあ、神官見習いさん。私と一緒にちょっと遊びましょ」
「時間があったらサキュバスへの実践的対処法を試したいところだけどまだ方法も知らないし、時間もないし、今日は調べたいものがあるから」
断られた。
私の誘いに時間がないからなんて理由。
それに誘いに乗ったとしてもサキュバスの実践的対処法ですって?
なんなのこいつ、ますます食べたくなるじゃないの。
「君、童貞でしょ。お姉さんに初めてをくれない」
ここまで誘わせるとはなかなかね。
でも確実に堕とせ……。
「今、そういう気分じゃない」
な、なんですって。
くー。
ここまで来たら、次は直接責めるわよ。
「えいっ」
尻尾で軽く手首をなでる。
これでもうこの子は私のもの。
「しつこいなあ、クッ」
そういって体を硬直させた。
口はそういってても体は正直よね。
ああ、この子の初めてを――。
「ふう。媚薬耐性を獲得?もしかして、今ので媚薬を血液中に送り込んだの?」
少年がため息をついて体の硬直を解いた。
「効かない、の?」
「うん」
うん。って簡単に言うんじゃないわよ。
どうやって、どうやって。
「そういえばサキュバスさんって受付に座ってるってことは司書なの?」
少年はリーンの身もだえをスルーして普通に聞く。
「サキュバスさんじゃなくて私はリーンよ。ちゃんと名前があるんだから名前で呼びなさい」
仕方ない、今日のところは許してあげようかしら?
「分かった、リーン。よろしくね、健人です」
そういって健人は、尻尾の先をつかんだ。