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片恋は思い出の中に

作者: 卯侑

 はじめはみんな、こう思うのです。


「彼を想うだけで幸せ」


 一番初期の片想いとはそういうものです。見返りを求めずに、ただただ、相手の幸せだけを願う。

 例えそれで、自分が不幸になったとしても。


「私は、彼が幸せならそれでいい」


 そう、強い瞳で一点を見つめた彼女は言いました。彼女みたいな人に愛される人は幸せだと思いながら眺めていました。


 私には到底できないと思っていました。

 やがて想いは、片想いは進化していきます。


 明確な【恋心】へと。


 あの人が好き。こっちを向いて欲しい。自分のことを見て欲しい。


「お願いだから、振り向いて」


 そう、一番に願うべきは彼の幸せ。


 でも、自分も幸せに。あわよくば、彼の隣に並びたい。そう願うようになります。この気持ちが捻れ、こじれると、ストーカーなどの問題に発展します。

 結局はどの気持ちが一番強いか、なのです。自分の幸せを優先するか、相手の幸せを優先するか。


 まあ、私としては好きな人に特別に思ってもらえなくても個人的に特別な思い出を重ねられたらそれで満足なのですが。


 ひとつ大げさに息をついてから私は笑ったフリをした。


「だからあの人に告白しないの?」


以前、彼が幸せなら満足だと言い切った彼女が私に尋ねる。


「それだけじゃないけどね。振られた時の衝撃とか、関係性の崩壊を恐れて臆病になっていることもあるよ」


でも、それ以上に。


「特別な時間を過ごして、老いた時にあの時アイツと居て楽しかったなって思い出してもらえたらそれでいいの」


叶わない恋を引きずるのも馬鹿らしいから、結婚適齢期までにはこんな馬鹿みたいな恋、やめるけど。


「思い出の中で、彼に恋した私がいたらそれで満足」


上手く笑えたかどうかは分からないけれど、これは私の本心だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  『好き』続ければ『欲しい』になる。片恋ってその狭間にいる、ちょっとアンバランスな時期な気がします。でも『欲しい』が叶いそうにないから、『好き』なうちが心地いい。確かに冒険するのって勇気が…
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