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実はアニメの売り上げではそこまで凄くなかった世界で最も有名なネズミ

ディズニー作品を語れる者は多くいても、ウォルト・ディズニー本人自体を語る者は少ない。

実を言うと彼は人生において少なくとも2度挫折を経験している。


正確に言えば「アニメという産業を作り上げようとしたら2度も会社ごと乗っ取られた男」という方が正しい。


米国におけるアニメ産業の斜陽期においてウォルトディズニーもまた参戦した。

彼がアニメ会社を興してまで作りたかった理由はクリエイターを目指す者達とそう違いはない。


ただ、そのための手段を講じてそれなりに作品を作るところまで持っていった事が高く評価されている。


正直な所、宮崎駿監督などはあくまで「周囲の補助」があって成立していたことを考えると、スタジオから何から何までこさえたという面で考えると後にも先にも彼と並べるような人材は日本人だと手塚先生ぐらいしかいないと思われる。


そんなウォルトディズニーは前述する通り、2度も会社ごと乗っ取られ身動きが出来なくなった。

このまま終わるかと思われた矢先、彼を救った存在こそがかの有名な「ミッキー」である


こう言うと「なるほど、ミッキーというキャラクターがアニメで大成功して復活したのか」と思うかもしれないがそれは若干違う。


ミッキーがウォルトディズニーを救ったのは事実だが、ディズニーの救世主が彼を再びアニメ界へ向かわせた方法は「遊園地」である。


恐らく1度だけなら日本人の半数が行った事があるだろう「ディズニーランド」の前身にあたる存在こそ、ウォルトディズニー2度目の挫折からの見事な復活劇を果たした存在だったのだ。(ディズニーランド自体は戦後に建設されたものだが、遊園地事業はもっと前からやっている)


映画会社とのいざこざにより、社員を奪われ、借金を抱えたウォルトディズニー。

そんな彼が「アニメを作るための資金集め」として考え出したのが「遊園地」である。


これは後に建設される「ディズニーランド」ではなく、アメリカでよくあるような移動式テーマパークに類似した移動しない小規模な遊園地を作り上げるというもので、この事業の成功が後のディズニーの方向性を決めることになった。


これはまだ日本と米国が戦争をする10年以上も前の話である。


そこでディズニーが運営する上で得た経験、独自研究の末に辿り着いた答えは「特定のキャラクターは高い顧客吸引力を持ち、ピエロやその他とは一線を貸すようなものを成立させればブランドとして多くの客層を得ることができる」ということだった。


当時運営されていたテーマーパークではディズニーキャラクターと呼ぶべき存在はいなかったが、他の遊園地と異なり、版権問題逃れのためにディズニーが独自のキャラクターを遊園地の客寄せとして利用していた方向性が大当たりしたのである。


これこそが後にアニメ界で再起をかけると考えた際「絶対的なキャラクターの必要性」を感じる要因となり、「遊園地でもアニメでも、多方面で看板となるキャラクター」として最終的に生まれたのがかの有名なミッキーマウスであった。


ミッキーはディズニーランドの前身にてキャラクターグッズやキャラクターイメージを担当する一方で、アニメ自体のキャラクターとして人気を博し、ディズニー再建の大きな足がかりとなったのは事実である。


しかし、ディズニーのアニメについては長年赤字が続き、この前身にあたる遊園地事業がアニメの赤字を補填するという自転車操業を長い間続けていた。

ディズニーに資金提供していた銀行も「アニメを産業化として成立させるのは不可能」とディズニーに遊園地事業など、所謂「ハローキティのような方向性」での展開を推奨する。


だがディズニーは首を縦に振らなかった。


周囲から「アンタはアニメのために遊園地をやっているのか!」という言葉に「そのためだけに遊園地を作ったのだが!」と本気で言い返すぐらいアニメ産業に真正面から挑んでいた男だった。


そんなディズニーがアニメだけで黒字化を達成できた存在が別にいる。

本人は飛ぶことができず羽ばたけない癖に、アニメとしてのディズニープロダクションを羽ばたかせた男「ドナルドダック」である。


こいつの売り上げはすさまじく登場するやいなやすぐさま大人気となった。

冗談抜きで大人も子供も彼にハマり、登場から戦後あたりまでのドナルド作品の数の多さを見ればその人気っぷりが伺えるだろう。


ただし遊園地での彼の立場というとそこまでではなかった、遊園地に訪れる者たちのイメージとしては「ミッキー」の方が強かったのである。

これはやはりアニメと同時期に遊園地でキャラクター展開を行ったという背景が関係していると思うが、現在でもその立場に殆ど変わりがない。


大量に存在するスピンオフだけでなく未だに新作がかなりの量で出てくるドナルドはやはりグッズの売り上げではミッキーより下であるが、アニメ関係の興行収入はもはやミッキーでは太刀打ち出来ない領域にまで到達している。


この要因は不明だが、キャラクターとキャラクターグッズ展開の売り上げではドナルドを大きく上回っていたため、単純な遊園地の顧客吸引力としてはミッキーの方が優れていたようだ。


そのためディズニーは二大看板で勝負することになったのだった。


遊園地やグッズ事業で「ディズニーの顔」として活動するミッキーと「アニメとしてのディズニー最強キャラクターであるドナルド」の2人である。


特にそれがアニメ関係での描写に大きく影響を及ぼすことになったのはあまり知られていない。


元々ディズニーで評価されたのはドタバタコメディというか、「いたずらするとしっぺ返しを食らう」みたいな展開が受けていた。


当初のミッキーも割といたずら好きであり、結構酷いことをやっていた。

一方で遊園地で活動するミッキーとグッズのイメージは今の真面目な正統派キャラと変わらない。

この乖離はミッキーのイメージを悪くしていたらしく、遊園地を好むファンからは「イメージと違う」「まるで遊園地では客商売のために皮を被っているようだ」と批判があった。


またウォルトディズニー自体もミッキーには真面目なイメージを持たせたかった。

よってドナルドが売れ出してアニメ産業が成立しかかってくるとミッキーの「いたずら好き」というイメージは大きく方向転換され「現在のイメージ」へとシフトしていくようになる。


短気ですぐ怒り、いたずら大好きのネズミは家族や友達を大切にし、騙されても許してしまう器の大きい青年キャラクターへと変貌した。


それでも人気が衰えなかったのはやはり「ミッキーはそういうイメージ」というのが出来上がっていたからであろう。


一方ドナルドはディズニー本来が得意とする演出をすき放題やらされることになった。

正直なところ「汚れ役を押し付けられていた」面もある。


例えばドナルドダックで一部で有名な話だが、「彼は米国の陸軍に現在も所属している」

格好は海兵隊というか水兵の癖に彼は空挺部隊の所属だったりする。


アメリカ陸軍にドナルドダックのマークが存在するのは、「正式加入したまま除隊していない」から。

つまり、彼はディズニーキャラクターであると同時に軍人でもある。


彼のあまり知られていない裏設定であるが、ディズニーキャラクターでは2人しかいない「軍属」。

しかも「階級」までちゃんと所持しているのは彼とその上司のピートだけが軍属である。(ドナルドが一等兵(後に勲章を得ているので昇格したと思われる)ピートが軍曹である)

また太平洋戦争中の当時、劇中内で明確に「日本を直接攻撃して功績を残した」のも恐らく米国アニメキャラクターかつ、アニメの中では彼だけだと思う。


これら一連の作品は太平洋戦争時代のプロパガンダの影響であり、当時アメコミヒーローなども動因されて大衆先導に利用され、キャプテンアメリカなどのそれ専用のキャラクターまで生み出された一方で、ディズニーもそこに無理やり参加させられることになり、


渋々参加させたのがドナルドダックだったのだ。


ドナルドの入隊以降、プロパガンダを意識した作品はドナルドでのみ展開されているがドナルドは日本軍の前線基地を攻撃して破壊したり、夢の中でナチスドイツの国民になって「ハイルヒットラー」と叫んだりしている。

しかも前線基地を攻撃した際は「コマンド部隊所属」よって何気に彼も「コマンドー」である。


一方で基本的にはコミカルな話ばかりなので見ていても不快感というのはさほどない。

むしろ「プロパガンダを強烈に皮肉った演出」も多数ある。


「軍隊は嘘つきばかり」とかいう表現などがソレにあたる。


これはやはり旧ソ連関係で損害を受け反共主義者だった一方、平和主義者だったディズニーがギリギリの線で描いた結果であり、吹き替え版もある。


でも見る人が見ればわかるとおり、東条英機などが普通に登場している。

これらは今でも裏設定として残っているので、ドナルドが稀に軍服を着込むのはこの時の名残というか、今でも軍属だから。(米国のファンの認識では陸軍の予備役という扱い)


遊園地などで客寄せを担当するミッキーでは絶対に出来ないからこそ、ドナルドはこういった演出がされていったわけだ。


だが、こういった「何でもやる、何でもやらせる」という試みはアニメでの興行をさらに稼ぐことになり、ミッキーとはダブルスコアどころではない数値で差が出てくる。


ある作品が出る頃には「もうドナルドがアニメの方の看板なんだろうなあ」と作り手も嘆くほどだった。


特にミッキーで売り出したい場合、必ず「ドナルドをセットにしなければならない」というのは作り手にとっても演出的な制約の必要性が生じていたので、「ミッキーオンリーで何かやりたい」という意識を生んだのだった。


実はそんな状況で「これまでのミッキーの功績に華をもたせよう」として企画されたのが、かの名作映画「ファンタジア」である。


あのミッキーが魔法使いになるヤツね。

ファンタジアはwikipediaでは「従来のミッキー映画とは別方向で芸術的な作品を作ろう」と企画されたことになっているが、


企画が生まれた要因は「ドナルドばかり作品展開して可哀想だし、何か1つミッキーのミッキーによるミッキーのためだけの作品を作ろう」というところから始まっている。


その結果あのような実験的作品になっていった。

せっかく多額の制作費で作るのだから、ありきたりなものを作っては意味が無いということでああなったのだ。


これは「何でもやる」というドナルドがかなりの部分でディズニーがやりたいことをやらせている結果、生半可なものでは演出的に被るからというのも理由の1つにあった。


最終的に完成したソレは興行収入的にはそこまでの大ヒットはしなかったが、今でも作品単体のファンがいるぐらいの完成度を誇り、この時の魔法使いの格好をしたミッキーは今でも人気がある。


かくして、このような経緯を持つ両者はそれぞれ世界で最も有名なキャラクターとして名を連ね、今日まで至るわけだ。


最期に余談だが、あまりにも人気があるドナルドはスピンオフ作品が展開される前の段階で家族や先祖の構成が設定され、その設定されたキャラクターがスピンオフ作品や関連作品で登場するぐらいだったりする。


ドナルドファミリーで検索してみればわかるが、アニメとして登場しなかったキャラクターの方が少ないぐらいである。

スピンオフとしてこれらのキャラクターが独自に作品展開し、そして本国では人気作になっていたりするわけだから、いかにこのキャラクターが「アニメ受け」しているかがわかるであろう。


ディズニーでは「ミッキー、ミニー、ドナルド」の3名をビッグ3と呼称しているが、ミッキー&ミニーとドナルドは立場がかなり違っているわけだ。


そんな筆者が思うのは「ミッキーマウス法って呼称は間違ってない?どちらかといえばドナルド・ダック法って言ったほうがいいよね?」ってな話で締めくくる。


版権関係はドナルドとそのファミリーの方が圧倒的に多いからな!

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