そりゃあ簡単に望んだ世界にはならないさ。
1話ごとに声が変わるアニメがあるが、それとは正反対にその声のために作られたキャラクターもいる。
今回の話は割と知られている方かもしれない。
アニメにおいてはその性質上絶対に声が入る。
そんな時、通常はオーディションを行って採用されるわけだが、大人の事情でゴリ押しされるのとはまた別に「最初からその声と紐付けされて作られたキャラクター」というのも世の中存在するわけだ。
有名な部類で行くと犬夜叉。
最初から山口勝平さんで行く予定であり、そのイメージでキャラ付けされている。
他にもアニメ化して声がついたらその声質を気に入り、急遽主役キャラを作ってまでその人間を採用したという事例もある。
ジャンプの看板的作品のワンピースのフランキーがそうだ。
元々、船大工のイメージは微塵もなかったという。
そんな状況で原作者の尾田先生は元々知り合いであったという縁で採用されたMr2の声を聞いたとき「コレだ!」と思って作ったのがアレ。
尾田先生がどれだけ矢尾さんを気に入っているかというのは、本来主要キャラの殆どが出てこられない監獄編にMr.2をあえて出すことで矢尾さんだけは継続して出られる状況にしたこと。
ま、これらは有名な部類の話だ。
他にも林原めぐみをゴールデンタイムにもっと出したいがためだけに青山先生が作ったコナンの灰原なんて例もある。
でもこんなんちょっと調べればわかること。
では今回はどういう話をしたいかというと、「本来はそういうイメージでキャラを作ったがギャラの問題で頓挫した例」とその逆に「そういうイメージと冗談半分で語ったら、監督が本気になって超有名声優を採用した事例」の2つを紹介したい。
その前にすこしこの手の話で裏話を。
コナンの毛利小五郎は最初から神谷明で決まっていた。
青山先生からするとマクロスのイメージもあり、毛利小五郎というとああいう声なのだという。
でも神谷明は諸般の事情で降板してしまった。
ここで何があったか?である。
それが上記2つの事例に当てはまるのだ。
降板した理由はギャラによるものなのは有名だ。
ではどうして神谷明は降板したのか?
ギャラを安くしろといわれたから?と思った人。違うんだ。
そんなことはアニメ制作の仕組み上できない。
神谷明が降板した理由はコスト削減で神谷明のギャラを支払えなくなりつつあった分を、他の声優が毛利小五郎でいてもらうためにギャラを削ってその分を転化したことに激怒したからである。
これはもう業界内では有名なはなし。
そもそも、神谷明さんは野沢那智さんらと協力し、現在の声優のギャラのシステムを業界内で作った者達の一人だ。
それまで役者の副業であったものを「声優」という業種に昇華させるために奮闘した。
しかし一方で本人はどんどん声優のランクが上昇し、ギャラも半端ではないことになる。
問題はここからだ。
ランクは下げられないのだ。
特に業界内を支える大御所として先頭を走っていて、かつそういうシステムを作った者としては。
ラジオで何度かその状態が苦しく、本当はもっと役をやりたいと愚痴を零したことが1度か2度あるほど、いままで演じた役には拘りを持っている。
それでも今日の深夜アニメみたいなコスト削減が当たり前の状況では、制作費のかなりの部分を一人の役者に回すというのは難しい。
しかもコナンに登場するのは割と有名な声優ばかり。
制作費の半分近くが声優の出演料だった回もあるといわれるほどだ。
その裏に「忖度」があったたけ。
それを知ったから降板したわけだ。
役者としてのプライドが高い部分もあるが、システムを作った一人としてあの人は間違いなくそれを許さないだろう。
自分が他者のギャラを食っているなんて納得できるはずがない。
だから降板した。
自分勝手な降板だと表向き言っていたが、真実を知ったら私にはそうは思えない。
これから声優になる者と後を追う者と自身の役柄を天秤にかけて自分から身を引いただけ。
つまりは制作側が配慮していればあんなことにはならなかったということだ。
しかし、制作費がそこまで高くできない状況においては「有名声優を起用」なんて簡単に出来ないのは事実。
例えば、「宮村優子にしてください!」なんて頼んだってそう簡単に上手くいかないわけだ。
個人的にはそこまで高いのかな?と思うが、採用したかったアニメは残念だがDVDなどの媒体で制作費を回収しようとしたメディアミックス型深夜アニメの部類だからね。
どの作品かって「ラブひな」のことだが、
だから当時としてはまだアイドル声優として階段を登っていた堀江由衣を採用したわけ。
当時原作者は何度も監督にお願いしたらしいが、主人公はイメージどおりだったもののヒロインはアイドル声優起用となった。
声質が若干だが似ているということで。
あの頃、この手のアニメといえば「スポットライトが当たらない女性声優」か「売り出し中のアイドル声優」が基本だった。
そして後にこの当時売り出し中だったアイドル声優の中で生き残るのは極少数だった。
浅野真澄こと「ますみん」とかその手の今40代の人らね。
どうしても台詞数が多いメインヒロインには有名声優は当てられなかった。
一方でサブヒロイン的な浦島はるかに林原めぐみなのだから、出演話数の重要性が垣間見える。
いくらキャラ付けをして「この声のイメージで作った!」といっても、それが超有名声優で明らかにギャラが高い人間だと、そのアニメがゴールデンタイムでもなんでもないニッチ層向けだと通常はそういった人物は採用できず、代わりの人材となる。
今でこそ堀江さん自体がそういう人間となったけど、当時は割と賛否両論だった。
声優デビュー2年目だったのと、まだあの頃は「アイドル声優」という存在に嫌悪する層がいたから。
実際に本編アニメを見ているとむしろ声が優しげでだからこそキャラに合ってると思ったけどね。
あのキャラ付けで本物使ったらウザったいだけの暴力女じゃないの?
景太郎ってシンジくんほどなよなよしてないぞ?声もうえだゆうじさんの割とイケメン風な感じがマッチしててアレで本物使ったら理不尽すぎてヒロインが不人気になると思うわ。
暴力描写はあの声だから許されてた部分がある。
で、今じゃ女性声優なんてナレーター業とかやってる人間でなけりゃアイドルなのか声優なのかもはや皆目わかりゃしない状態だが、当時は違ったのだ。
声だけで生きるタイプが表でライブとかやってんじゃねえよみたいな考えを持つ者がいて、桑島法子みたいなオタク嫌いでそういう活動全否定なタイプをむしろ逆に応援していた者達もいたが、多分彼らは深夜アニメが今のような状況になるにつれ消えていった。
今じゃもうそんな話をする奴らもいない。
受け入れてしまうやつ以外は排除されたといえるね。
次に「調子に乗って絶対に採用されないような人間を指名したら採用された」事例。
こっちも深夜アニメである。
それも制作費もめちゃ低いタイプの。
当初キャスティングとしては無名の部類にはいる声優で半ば決まっていた。
そんな状況を知らない中で作者は冗談半分で「好き放題やるっていうならどうせなら三石さんでやれよ!やってみろよ!」的なことを言ったのである。
その結果どうなったかというと、本来決まっていた人はOPなどを含めた極限られた状況でしか声を当てられなくなり、本気になった監督は冗談抜きで三石さんをメインに採用してしまった。
「エクセルサーガ」である。
その件についてはOPでしか声を当てられなかった人が後に可哀想なのでOVAを作ってもらった際、裏話としてそのOVAの本編内で仄めかされている。
その昔監督が講演をやった際、自分でも当時どうやって採用したか覚えてないけどなんか心に火がついた的なことを言ってたので、あの監督の人脈をフル活用した結果と思われる。
そういう人脈は間違いなくあるであろう監督だしね。
でもエクセルサーガは正直言って、特例中の特例でしかない。
他にそんな話を聞いたことが無いというか、実例がない。
それこそ今で言えば深夜アニメの主人公に山口勝平さんや井上和彦を持ってくるようなもんだ。
ギャラ的に間違いなく不可能である。
結局深夜アニメでそんな大御所を湯水のように贅沢に使うのは殆ど例がないので、1話ごとに大御所が声を当てるアニメが話題になるわけだ。
状況見てみればわかるけど、一部を除いたら深夜アニメは若手を使い捨てみたいな状況だ。
ある程度実績を重ねた人間は出てこなくなる。
コストカットの影響でそうなっているのは、この時間帯のアニメで挑戦が始まった頃からずっと続いているのだった。
最期に知っている人は知っているが、アニメではギャラの影響で殆ど出なかった神谷明さんがゲームで大量に出られるのはゲームは文字数カウントで出演料がきまり、さらにランクも殆ど関係ないから。
理由はゲームは出演料が基本的に高いから。
だからゲーム系では今でも普通に出てくるのである。
でも文字数でカウントというならば、文字数が多すぎてかなりの長期間缶詰になったというウィッチャー3は、ゲラルト役の人に一体いくら払ったんだろうか。
本当に文章量自体がものすごい量だ。
こういう洋ゲーのキャラは意外にも有名な人が演じることが結構あるけど、EAとかUbiは金払いいいのかね?