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日本独自だった設定の輸入とトランスフォーマーの救世主についてもう少し詳しく書いてみる。

娯楽作品についてよく言われることがある。

「国外などでスピンオフを展開すると駄作になり、わけのわからないオリジナル設定をつくられる」


しかしその「オリジナル設定と演出」がその後の本国でのシリーズ展開において採用される事例もある。


まず1つ有名なのがスパイダーマンである。

あのクモみたいに姿勢を低くするポーズ、アレ日本が演出したのをスタンリーが大変気に入って逆輸入したもの。


実はあんなポーズは最初していなかった。

日本が「クモってこういうイメージじゃないの?」と演出したことで本家が採用した事例である。


ちなみにそんな東映版スパイダーマンであるが、よく日本では「酷い原作レイプ」なんて言われるが、スタンリー本人は「ロボット以外においては極めて秀逸な演出だった」と褒めるほど、各種演出は原作愛に溢れていたりする。


米国のサムライミ版スパイダーマンに至る前の段階での各種アメコミの実写化や、なかった事にされているスパイダーマンの実写作品を見れば、東映版スパイダーマンは当時の技術と低い制作費に対して非常にがんばっているというのは間違い無い。


決め台詞ばかり持ち上げられるが、天井や壁に張り付いて戦うスパイダーマンをちゃんと演出している点などは評価すべきだし、原作者自体が評価している。


この一連の演出は後のサムライミ版スパイダーマンでかなり参考にされたわけだが、コミック内でも影響した演出が例のポーズなのである。


米国ファンから言わせると「スパイダーマンが男らしすぎる上にコメディリリーフ的演出が微塵もなく、ストーリーも重く凄くシリアスだが、完成度は割と高い。ロボット以外」と案外評価が高かったりする。(東映版のスパイディーはよくみてみるとわかるが仮面ライダーブラックと同じで、真面目なギャグというか、キャプテン翼と同じで当人は至って真面目)


が、やっぱロボットだけは違和感を感じるらしい。

車は許されるがロボットは駄目らしい。

でもあのロボットの影響でスタンリーは巨大ロボットが出る作品を出したので、「違和感を感じた」のと「巨大ロボットを認めない」というのは別。


あくまで「スパイダーマンに対しては違和感がある」という話だ。


さて、前書きのようなものはこのあたりにして、たった1つの作品における設定が大量に輸出され、本編で正式な設定として導入されたといえばトランスフォーマーだ。


ここで改めてビーストウォーズⅡについて説明しようと思う。


トランスフォーマーは初代が日本国内でもシリーズが展開されホビーも含め大人気になった。

その後も何度か火をつけようと何年かに一度ぐらいのペースでホビーが展開されたが、爆発を起こすまでには至らない。


その原因の1つに「あまりおもちゃが初代の頃より進化してなかった」という理由が挙げられる。

そのためおもちゃメーカーは新シリーズが展開されるにあたり、米国企業と協力して死に物狂いで開発、特許を連発するぐらいのモノを作った。


それがビーストウォーズシリーズだった。


みてみればわかるが、初代ビーストウォーズのおもちゃ、とくにコンボイの出来は凄まじい。

それまでの変形型おもちゃとは一体なんだったのかってぐらい頑丈なのにギミックが満載、そして変形する。


こんな素晴らしい出来のものが出来たのだから「売れるのは間違いない」と思った。

しかし日本のタカラは本国で「販売が不振である」と聞いて驚く。


「何が起こったのか?」と確認してみると何とビーストウォーズはあまりにも暗い設定でハチャメチャで、裏切りやら何やら多分にあって、正直「子供向け」ではなかった。


あれだけの完成度を誇ったおもちゃが売れないぐらいに。

その結果あっちでは「シリーズ終焉」なんて囁かれはじめる。


そこで日本が何をやったかというとwikiの通りにやった。

展開を整理してややコメディタッチながら王道っぽく翻訳とアドリブだけで補正し、まるで初代のイメージのように改変してみせた。


まさに著作権法で言う「改変」という言葉がここまで似合う作品も珍しい。


結果日本では大成功するが、次のシーズンであるメタルスを展開する前に「また同じ展開をやられっとそのまま放送できねえ」ということで「その間に中継ぎを出しつつ、おもちゃも同時展開し、なんとかそのままの勢いをメタルスまでは続けよう」と考えるようになる。


そんな中で生まれたのがライオコンボイのホビーである。

これまた高い完成度であったため、今度は「これを用いて日本らしい王道物を中継ぎにして登場させ、売り込もう」としたわけだ。


そこで生まれたのが以前話したビーストウォーズⅡである。

このビーストウォーズⅡについてもう少々語るが、ライオコンボイは歴代の司令官の中でも特に温厚な性格である。


しかしそもそもこの「温厚」すでに日本独自すぎる設定だった。


そもそもが、初代トランスフォーマー自体が日本風にアレンジされていたのだ。

実は本家の持つコンボイ司令官はこんな温厚ではなかったりする。


むしろ口が悪い。

それどころかリーダーシップも糞もない。

本家トランスフォーマーの場合、ノリは軽いけどなんだかんだ一致団結できる仲間に司令官は支えられている面が大きく、「私にいい考えがある」に代表されるように割と初代コンボイ司令官は無能だった。


しかし台詞回しを上手い事マイルドにしたりすることでイメージを日本受けする方向性へと変更していたのだった。


余談だが、一方では、敵のメガトロンはかなり有能で「なんでお前デストロンのリーダーやってんの?」と思うことが多々あり、サウンドウェーブという数少ない理解者がいなかったら立ち行かないぐらい荒々しい集団だったりする。


そのため「メガトロンとサウンドウェーブがサイバトロンを率いたら絶対無敵最強じゃないの?」とよくネタにされる。


話を戻すが、あの時はそんな感じだったわけだが、ビーストウォーズⅡが展開された時は日本独自アニメであり、今までとは逆パターン。

今度は「米国側が改変するかどうか」という立場になるわけだ。


そこで米国はどうしたか?


「完全に日本のイメージをそのままに演出した」

ライオコンボイについては。


ガルバトロンは日本版より凶悪に演出したけどね。


その影響で米国版のライオコンボイは「仏か何か?」「キリストでも目指しているのか?」と思われるほどの人物になってしまった。(後に穏健派という派閥に所属する設定となったが、初代司令官はタカ派なのは笑いどころなのでしょうか)


劇中でも何度も説得を試みるライオコンボイだが、ガルバトロンは割と説得を受け入れそうな印象のある性格をしていた。(当初は)


だが、あっちのビーストウォーズⅡではその印象はかき消され、かなり粗暴なリーダーとして演出されている。


少々ネタバレ気味になるが、ビーストウォーズⅡの場合、ガルバトロンは後半に行くにつれどんどん凶悪化していくため、ジェットコースターが駆け上がるような展開ではないだけでラスト近辺のイメージは変わらない。


日本では段階的にこの凶悪化していく展開にカタルシスがあるが、そこがやや削がれている。

これは西洋文化と東洋文化の違いではあると思う。


で、ここからがビーストウォーズⅡが特に評価された点であるのだが、ビーストウォーズⅡのライオコンボイは司令官として優秀と書いたが、どれだけ優秀かというと初代のメガトロン並である。


その上でサイバトロンメンバーの団結能力も3名を除けば初代からそこまで乖離していない。

その3名は中盤から合流するジョイントロンであるが、彼らはそもそもライオコンボイの本来の部下ではないのでやや状況が異なり、本来の部下はタスマニアキッドなどがややコメディリリーフだが、部下と上司友に互いに信頼しあっており、その上で集団で行動できる。


「え?それじゃどうして王道なの?」と思うかもしれないが、メガトン並の優秀で穏健な司令官と優秀な仲間に対し、圧倒的に戦闘力が高いのがビーストウォーズⅡのデストロンなわけだ。


しかも後半につれどんどんどんどん戦闘力があっちだけインフレしていく。

一方でサイバトロン側は仲間が増えるだけ。(それなりに強い仲間が増えていくが)


なので、マンパワーvs単体戦力の複合体による蹂躙という構図となっていく。

常に1vs1では勝負にならず、合体やら新型兵器、トラップ、作戦、戦略、戦術やらをフルに駆使していくわけだ。


これがビーストウォーズⅡがあっちで名作たらしめる要因となっている。

特にラストでは正攻法で勝負できないので「仲間と協力してラスボスを不意打ち」などといった展開が演出される。


その際にライオコンボイは倒さねばならなくなった事など自責の念に駆られて涙を流しながら攻撃を繰り出すわけだが、正攻法ではもはや勝負にならないほど敵側が強力な集団なわけだ。


まさに「それまでのトランスフォーマーファンの理想のメンバーを描いたら、それを圧倒的に超える戦力をぶつけられた」という状態。


だからこの作品は人気がある。


当然こんな展開だったので子供に火がつき本作は大ヒット。

本作のファンは毎回同じ展開をする本家実写版の最新作で「コンボイが敵になる」と聞いた際に「ようやく俺達のライオコンボイの出番か」なんていわれたレベル。


ちなみに全く知られていない話であるが、ライオコンボイはあっちでも「ライオコンボイ」である。

つまりトランスフォーマー本家において「コンボイ」という名称を持つのは彼と「ビッグコンボイ」だけ。


コンボイという名の司令官は実在するのだ。


実写版の影響でコンボイ司令官が実はオプティマスプライムという名前だったということが判明したが、コンボイ司令官というとあっちの人は「ああ、ビーストウォーズⅡの司令官のことね」と連想する。


つまり、ある意味で話が通じる。

世間ではニュースなどで「あっちではコンボイ司令官なんていないんですよー」なんて語られてたが、トランスフォーマーの救世主たる司令官になんたる失言だ。


ふざけやがって。

ゴリラはコンボイじゃないがライオコンボイはライオコンボイなのに!


今回の話を見た人は是非覚えて欲しい。

「コンボイ司令官こそトランスフォーマーの真の救世主。ただし彼はライオンまたはマンモスである」と。


そうなのだ。

実は翻訳し、あっちで展開するにあたりあまりにも名作になりうると感じた現地スタッフは、敬意を込めて「ライオコンボイ」を「ライオコンボイ」という名前のまま放送したのだ。


あまりの出来の良さに日本独自だった設定がそのままあっちに伝わったのだ。


司令官でコンボイの名を持つのは一応、本家でもこの2名だけだが、いかにこの2名があっちにとって影響の大きかったキャラクターかわかるだろう。

プライムではあるが名前はプライムではない例外中の例外だ。


ちなみに余談だが、本家でのゴリラの扱いは「パラレルワールドにそんなのがいたかもしれない」という酷い扱い。

にも関わらず「ビッグコンボイとライオコンボイは実写版の世界にもいます」という凄まじい待遇格差があったりする。


だから前述したとおり「何?ついにあの引き伸ばしばっかで何の解決もできない無能プライムが敵になるのか!」「やったぜ!俺達のライオコンボイが来るんだな!?」なんて半分本気で言われたわけだ。


ちなみにライオコンボイが与えた影響はそれだけではない。

もう1つ、本家トランスフォーマーシリーズの設定を大幅に変更させてしまった部分がある。


本家ではそれまで「プライムは一人」という扱いだった。

一人というのは「組織単位」の意味合いで、常にプライムは1人しかいない。というぐらい重要な扱いだった。


まぁこれ、ロディマスを登場させた際に作った後付に近いもので、当初はそんなに凄い意味はなかったが。

とはいえ、この影響でビーストウォーズⅡが展開されるまではずっとその設定を引っ張っていたのである。


ビッグコンボイとグレートコンボイが出るまでは。


ビーストウォーズⅡの登場により、一気に息を吹き返したトランスフォーマーシリーズ。

そんな中、ビーストウォーズⅡの後旱魃入れずに本国ではその続編としてビーストウォーズネオが放送。

日本とほぼ同じ時期の話である。


前回の話で行方不明になったライオコンボイ。

Ⅱを見た視聴者は本気で大泣きする程の者もいたという。

日本と違い、ゴリラが騙されて殺された時にはそんなことがなかったというのに。


それぐらい信頼され、子供に愛されたライオコンボイであったが、すぐさま子供達は二重の意味で安心することになる。


彼と同じ立場だがまたキャラクター付けが異なるビッグコンボイの登場である。

しかしながらこのビックコンボイとグレートコンボイの登場と彼の話により、初代からのファン達が物議をかもす展開となった。


なぜなら本来はこうなると「プライムの引継ぎが出来ないのでプライム不在のままストーリーが展開しなければならない」


しかし日本はコンボイ=小隊長ぐらいのイメージだったので「コンボイ(プライム)は多数いて、ビッグコンボイはライオコンボイの後輩」という設定で描かれ、他にも大量にプライムがいることを仄めかす。


というか、1話の時点で「総司令官グレートコンボイ」なる存在が出てきて「なんだこりゃ」となったのであった。(プライム=総司令官的なイメージがあっちにはあった)


おまけに劇中では終盤にライオコンボイが出てきてしまう。


本来なら「ないわー」といって叩かれる展開になるはずだった。

しかし、ビッグコンボイは初代のファンの心も惹き付けてしまうのだった。


実はビッグコンボイ、一応国外での展開に配慮して「例外中の例外」と当初設定されていた。

ワンマンズアーミーを自称し、他人を信用せず、単独行動を好む。

劇中では「プライムを逸脱したプライム」と称される。


総司令官たるグレートコンボイは「彼こそ真のプライム」という設定であり、他は「プライム候補」みたいな扱いに改変。


ギリギリ許される線引きをきちんと日本のスタッフも考えていたのだ。


その演出がどれだけだったかというと、1話でいきなりデストロンの基地を単独で破壊、他にも単独行動が何度か出てくる。

そんな彼の能力に目をつけた総司令官が新兵育成の教官として彼を無理やり採用したのだった。


言動はやや粗暴で上官たるグレートコンボイともタメ口。

後述するが司令官としては極めて優秀だが、初代司令官ことオプティマスのやや単独行動しがちだった部分を大幅に強調されたようなキャラクターである。


当初こそ部下を適当に扱うビッグコンボイであったが、次第に部下と打ち解けていく。

その上で彼が「指揮官として普通に有能だった」ことが判明し、物語が展開する。

その後、彼らはユニクロンの争いに巻き込まれていき、物語は終局へ向かっていくのだ。


この戦いでは仲間無くしては超えられない壁であり、グレートコンボイの戦略眼が光っていたといえる。


いわば部下とリーダーの成長物語である。

ちなみに敵側というと、前回と打って変わってマグマトロンは初代メガトロンを踏襲。

口調は荒いが戦略眼は確かで非常に有能だが、部下に恵まれず何度も裏切られる。


ただしメガトロンと違い、ユニクロンには最期まで抵抗する。(これは初代ファンがメガトロンに願った展開でもあった)

その他、デストロンのリーダーらしくない演出が多々取り入れられたマグマトロンもまた高く評価された。


そんなビーストウォーズⅡとはまるで方向性の違う展開とそれでも王道のツボを押さえた演出にこれまた大ヒット。


その結果どうなったか。


「何プライム? 沢山いるに決まってんだろ!」と設定が大幅変更され、手のひら返しすることになった。


実写版ではセンチネルプライムが登場したり、他にもプライム達が出てくるわけだが、公式設定になったわけである。


またさらに「プライムには派閥があって、ライオコンボイは穏健派でビッグコンボイなどはタカ派」と設定された。


ただしプライム自体は横の繋がりがちゃんとあり、特に劇中、ビッグコンボイはライオコンボイに対して「偉大なる先輩」と呼称し、「丁寧口調」で話しかける。


すげーなライオコンボイ。


これについてはあっちのファンも「どんな荒々しい奴らだってライオコンボイの前じゃああなるというお手本」として名シーンとして列挙する者が多い。


まあ本当に偉大な存在なわけだ。

そんなこんなで勢いを取り戻して最終的に実写化に繋がったのである。

だからあんな日本バンザイな演出が大量にあったわけだ。


だからTVニュースで当時紹介すべきは「コンボイ司令官なんていない!」ではなく、「コンボイ司令官こそ称えるべき」だったんだよ!


最期に余談だが、メタルスの劇場版を見た者なら同時上映でゴリラが出てくるアニメ映画を見た記憶があると思う。

このゴリラが出てくる話、あっちでは放映されておらず、長い間「なかったこと」にされ、未だにDVDソフトすらない。


なんでかって?

ライオコンボイがゴリラを「偉大なる司令官」と言ってしまうからね。

しかもゴリラがライオコンボイの先輩だったりするからね。


劇中ライオコンボイの部下は「伝説の司令官だ!」とかいって彼を称えるからね。

駄目なんだよそれは。


あっちではライオコンボイが「偉大なる司令官」なんだから。

ゴリラはいない、ビーストウォーズはなぜか「Ⅱから」突如として始まる。

おまけに「コンボイ司令官」といったら基本はライオコンボイのこと。


これがあっちでの認識。いいね?

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