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吸血鬼という名の聖獣 Aパート


_彼女は走っていた。何かは判らないが自分には対処出来ないモノが追いかけて来ているのが分かっている。

_こんな山奥の森に彼氏を殺して死体を捨てに来た事を後悔しながらも彼女は走り続け、逃げようと必死だった。しばらく走ると彼女にある考えが浮かんだ。

_これは夢だ、だからアレに襲われればその瞬間にベッドから飛び起きる筈だ。隣にはきっと腹の立つ彼氏が寝ているが、そんなものまた後で殺せばどうにでもなる。そう思った彼女は足を止めて後ろを振り向き、まるで身を捧げるように手を広げて天を仰いだ。

_しかし、ソレは彼女に襲いかかる事無く、森が生暖かい風に揺られる音だけが彼女を包み込んだ。

_吹き出した冷や汗を拭う事無く、悪夢から覚めようと彼女は車に戻るため一目散に走り出した。

_すると彼女は足がもつれ、その場で転んでしまう。すると足元には不気味な程に綺麗な女が佇んでおり彼女を見下ろしていた。彼女は女が自分を追い詰めていた元凶なのだと直感で分かった。自分の足元を見ると、見慣れた肌色の物体が転がっていた。

_彼女は一瞬考えれば直ぐに気づいただろう、それは彼女の片足だった。しかし彼女がその事に気付くまえに彼女の意識は死によって途絶えた。


_ゼラが仲間になって二週間が経った。キメラ探偵事務所の最も割合の高い収入源にになる、猫の世話、犬の散歩、朝から行方不明になったおじいちゃん探しなどの探偵にはあまり関係のないような仕事もゼラはそつなくこなしていった。

「意外と退屈」

_唐突にゼラが言った。今日は特に依頼も無く朝から4人が事務所内に揃っていた。

「んー、下手すれば毎日こんなもんよ」

_ブルーはファッション誌をめくりながら適当な返事を返した。外は薄暗く今にも雨が降り出しそうな天気だったのでヴェンは二度寝を、サーは新発売のゲームを楽しんでいた。本来ならば駅前でのチラシ配りなどをする時間なのだが雨に濡れながらする程に真面目な4人ではなかった。

「もっとこう、刺激のある依頼とかないの?」

_すると、外の階段からドタドタと聞きなれない足音が登ってきた。

_依頼をしてくる人はリピーターが多い。新米だという事で対応していたゼラは次第に来る人の足音を覚えてしまっていた。しかし今、階段を上がって来る足音には聞き覚えなかった。

「久々だな」

_サーはゲーム画面から目を逸らさずに呟いた。ゲームは佳境らしくサーの眉間にはシワが寄っていた。

「え、誰なのか知ってるの?」

ブルーとゼラが聞こうとする前に玄関が勢いよく開いた。

「よぉ、探偵!」

_ 威勢のいい声と共に、燻んだ色のトレンチコートをきた中年男性が顔をを覗かせた。男は乱暴に靴を脱ぎ捨てて事務所に入ってきた。

「かぁー!降ってきやがったよ!」

_男はポケットからハンカチを取り出し、頭や肩の雨粒を拭いた。ゼラが外を見ると先程よりも暗くなっており雷の音もきこえる。雨が降り出したのが解った。中年男が大声で喋ったせいか、ヴェンが不機嫌そうに唸って目を開いた。

「んだよ、うるせぇな…」

「おぉー!お前も生きてたか爆発小僧!」

_男はヴェンの頭をボフボフと叩いた。怪訝そうに男の顔をみたヴェンは直ぐさま飛び起きた。

「おわっ!誰かと思ったら旦那じゃねぇか!」

「お久しぶりですね、ジョニーさん。いつも通りの捜査協力ですか?」

_サーに「ジョニー」と呼ばれた男はヴェンとは反対側のソファーに腰掛けた。サーはゲームを中断しヴェンをどかしてジョニーの対面に座った。

「ウエからは、あんまりお前らに絡むなって言われてるんだが、どうやら今回はそうも行きそうにねぇんだわ」

「へー、あんたら…アタシらが来る前は捜査協力なんて洒落た事してたんだ」

「こんな何処の馬の骨とも知れない奴らに頼むなんてよっぽど切羽詰まってるんだね…」

「ところで、見ない顔だがこのキツイことを言う2人のお嬢さんは誰かな?」

_ブルーとゼラが横から口を挟むが、ジョニーは嫌な顔もせず、サーとヴェンに寂れた事務所には似つかわしくない2人の女の事を聞いた。

「若い方がブルー、子供なのがゼラだ。姉妹でウチの従業員になった」

_子供呼ばわりされたゼラが白目を剥いていた。

「そうか…まぁいい、そんなことより探偵、あんたらに調べて欲しいことがある…この男だ」

ジョニーは思い出したようにコートから写真を取り出した。サーは写真を手に取りヴェンとブルー、ゼラは写真を覗き込んだ。サーは様式的だがジョニーに言葉を返す。

「こいつは?」

肩ほどまで伸びた黒い髪の若い女が写真には居た。

「名前というか、こいつの通り名なんだが『グリフォン』という、本名は不明。こいつが今回の容疑者で、探して欲しいんだが…」

「だが?」

ブルーとゼラとヴェンが首を傾けた。

「こいつ、事件の2日前にー」

_ジョニーは少し言い渋ったが決心したように口を開いた。

「2日前に、死んでるんだ」

_部屋に差し込んだ稲光がジョニー達を照らし、少し間を開けて雷が大きな音をたてた。

「事件の前に死んだ犯人ですか…」

サーが顎に手を当てて写真を睨んでいた。

「この女が全ての被害者達と事件の数日前に何かしらの形で接触を図っていたんだ。もちろん、解決に繋がる情報をもらえるなら金ははずむ」

「金は勿論だけどよ、どんな事件なんだ?犯人が死んでるんじゃ探すも何もないだろ?」

ヴェンが不思議そうに尋ねた。

「おっと、そうだったな。えーと確かメモに…」

_ジョニーは懐からメモを取り出して事件の概要を説明しはじめた。

「最初に事件が起きたのは一ヶ月ほど前だ。

カーマトンの外れにある山林で若い男女の遺体が見つかった。

男の遺体は別の場所で殺されてから運ばれて来たらしい。状況から見るに女の方に殺されたようだ。喧嘩してる2人が自宅の方で目撃されていたから別れ話のモツれといったとこだろう。」

「おーヤダヤダ怖いなー」

_ゼラとブルーがワザとらしく声を合わせて体を寄せ合った。

「黙って聞け」

_ヴェンに言われて不機嫌そうな2人を置いてジョニーは写真をもう一枚出して話を続けた。

「問題は女の方だ。体から一切の血液がなくなっていたんだ」

_写真にはミイラのようになった人間とおぼしき物体が写っていた。

「ここ数日で同じ様な事件が4件起きている。被害者は全て若い女」

_写真をずらすと下に三枚同じ様にミイラになった写真があり、ヤラセ臭いオカルト番組のワンシーンを観ている様な気持ちになった。

「おいおい、吸血鬼の仕業か?」

ヴェンが真剣な顔で冗談半分に写真を見ていた。ジョニーが写真を取り上げてコートにしまう。

「ま、それを確かめて欲しいってのが今回の依頼だ」

「面白そうじゃない」

「退屈してたところだし、引き受けてよーサー」

_ブルーとゼラがサーの頭に顎を乗せるという変わった、おねだりを敢行する中、サーは依頼料や諸々の話をジョニーとまとめた。

「では、明日から調査を始めますので」

「おし!久々の気合い入る依頼だな」

「最近はロクな依頼なかったからね」

「私なんか、こんなの初めてだからね」

_新生キメラ事務所の初仕事が始まった。

また、激しい雷光が事務所を照らした。


Bパートへ続く→

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