フラワーズ・メモリー Bパート
ブルーはヘルメットを被るのも忘れてバイクに飛び乗り、差し込んだキーを回した、ブルーに急かされる様にバイクも慌ただしくエンジン音を響かせる。ハンドルを左に向けると同時にスロットルを捻ると、砂利を巻き上げながら180°回転しそのままの勢いでブルーは墓地に向かい走り出した。
「ゼラ…あんたは生きてたんだね」
自分にも聞こえない様にブルーは小さく呟いた。
既に日は傾き出し墓地に着くと夕日が規則正しく並んだ墓を照らしていた。バイクを停めたブルーは墓地の中を歩き始めそして1つの墓の前で足を止めた。木で出来た簡素な十字架の下にブルーは青いバラの花束を置いた。
「随分センチな真似、格好、仕草…少し人間臭くなったんじゃない?」
少し離れた所から声がした。ブルーが声の方向を見ると赤いワンピースを着た黒い髪をなびかせて少女が夕日に照らされ立っていた。少女はブルーを薄目で見ながら近づいたきた。
「今更、花なんか上げても姉さんはかえってこないよ?」
「久しぶりね、10年ぶりかしら?…ゼラ」
ゼラと呼ばれた少女は愛想の良い笑みを浮べ、ワンピースの裾を軽く持ち上げ膝を曲げた。それをブルーは鼻で笑った。
「アンタこそ、人間臭い仕草するじゃないの」
ブルーは刀に手を掛け、間合いを近づいていった。 ゼラは足技が最たる武器であった。カポエラ、キックボクシング、空手等の足技を取り入れた我流の動きは初めて見ただけでは決して読み切れはしない。しかし2人は既に互いの手の内を知り尽くしている。
「それに、帰ってきて欲しいからやったんじゃないわ、せめてあの世でくらい静かに寝れるように祈ってあげただけよ」
「寝れるように祈ってた?…笑っちゃうわよね、自分が殺したんじゃない!」
ゼラは言い終える前に強烈な蹴りを放ってきた。ブルーは上体を大きく反らし、そのまま大きく宙返りをして距離を取った。静かに着地したブルーはコートを整えた。
「そうローズはあたしが殺した、あんたも殺した筈だったのにね…どうやって生きてたの?」
ブルーは体制を低くして刀を構えた。
「無刃無影剣ね、飽きるほど見たわよ。ここまでお互い手の内を知ってるんだもの、かったるい事は…無しで行きましょう?ねぇ、ラベンダー姉さん?」
ゼラは右膝を上げて戦闘態勢をとった。
「質問に答えて」
ブルーは怒気を込めて刀をゼラに突きつけた。ゼラはしょうがなさそうに溜息を吐いて答えはじめた。
「別におかしな話じゃないでしょ?アンドロイドなんだもんスペアの身体くらい有るに決まってるじゃない」
「嘘、じゃあなんでローズは何で此処に居ないの?あたしのスペアは?」
もし本当にスペアボディが有るならばブルーはデータだけの存在になる。アンドロイドという存在であっても常に感じ続けるこの感情は自分を「生きている」と錯覚させているだけだと思うとブルーは恐ろしかった。するとゼラが嘲笑するように笑った。
「有るわけないじゃないのよ、あなた達は試作品、プロトタイプ、実験台なのよ?完全な戦闘用アンドロイドの私に勝てるわけないでしょ?」
「やってみる?」
すると瞬時にゼラの懐にブルーが飛び込んできた。
「なっ!?」
回避が間に合わないと見切ったゼラは蹴りを放ち相打ち覚悟で少しでも威力を殺す事にした。
「ぐあっ!」
蹴りを受けて吹き飛んだブルーは刀を納めて再び抜刀の態勢をとる。
「…やるわね」
ゼラが腹部を見ると脇腹に浅い傷が出来ていた。身体が繋がっていることを安堵し、ゼラも戦闘態勢に戻った。
「無刃無影剣…舞幻斬!」
ブルーは上段に刀を構えてゼラの背後に回り込み目一杯の速さで刀を振り下ろす。
「遅いっ!」
ゼラは刀を交わした勢いのままに回し蹴りを放った。ゼラの蹴りは完全にブルーを捉えたかと思われたが蹴りはブルーを突き抜けていった。ゼラの視界の端に赤いコートが見えた。
「なにっ!?」
「終わりよ、ゼラ」
ブルーは刀を振り下ろした。
Cパートに続く




