放て必殺、バスターキャノン!! Cパート
ヴェンはビルから飛び降り、ブルーとアサシンの間に立った。
「よぉ、待たせたな」
よっ、とヴェンはブルーを担ぎ上げた。アサシンはジリジリと広がった間合いを詰めた。
「なんかアタシ、あんたに担ぎ上げられてる率が高くない?」
「んなこと、ないだろ」
ヴェンは懐から小さな黒い玉を取り出した。アサシンは咄嗟に身構えたが、ヴェンはニヤリと笑った。
「安心しろ、ただのー」
ヴェンは思い切り黒い玉を地面にたたき付けた。
「閃光玉だ!!」
辺りは真昼のようなあかるさに包まれ、二人は姿を消した。
「ニゲタカ・・・ダガ、ニガサンゾ」
アサシンも二人を追うように姿を消した。
事務所に着いたヴェンは部屋の前でガクリと冷たい廊下に膝を付いた。キメラシステムのオーバーヒート(使いすぎ)が原因だった。荒い息を飲み込んでドアを開けた。
ヴェンはブルーをソファーに寝かした。ブルーも見た目の割にかなりのダメージを負っていたのだ。
「たく、無茶しやがってよ」
ヴェンはブルーにタオルケットをかけて寝顔を見ていた。二人に気づいたサーが体を起こし、脇腹を押さえていた。
「無理すんなよ、まだ体ガタガタだろ」
ヴェンはサーを見ることも無く私用のクローゼットを開き、至るところからハンドガンやマシンガン、更にはロケットランチャーまで取り出した。
「あんな化物を相手に一人は無茶だ、せめて私が治るまで待て!」
「んなことしてる間にアイツが来ちまうだろ、こっちから打って出る」
ヴェンは玄関に向かって歩き出した。サーは咄嗟にヴェンを止めようと肩を掴んだ。
「大丈夫だって心配すんなよ、いざという時の切り札だって持ってるからな」
ヴェンは引き攣った笑顔を作って見せた。サーは険しい顔のままでヴェンを見ていた。
「ブルーはどうするんだ」
「・・・何でここでアイツが出て来るんだよ」
ヴェンはサーの腕を振り払った。そして再び歩き出した。
「絶対帰って来い」
ヴェンは黙って手を振り玄関から出て行った。『ブルーはどうするんだ』やけにその言葉が引っ掛かっていた。ヴェン自身はそれほどブルーを気にかけているつもりはなかった。しかし、ブルーが戦っていたり、無茶な事をしていると妙に気にかかるのは事実だった。らしくない、とヴェンは考えるのを後回しにした。
玄関を出ると既にアサシンが壁に背を掛けて立っていた。
「よぉ、待たせたな」
ヴェンとアサシンは階段を手摺りを飛び越えて、そのした2mほど下にある地面に揃って着地した。ヴェンは少し事務所から離れ、どこにしまっていたのかコートからハンドガン、マシンガン、果てはロケットランチャーまでバラバラと地面に積んだ。ちなみに事務所の下は貸し駐車場となっていて、三人の貴重な収入元となっている。
「面倒くせぇからチャッチャと終わらせるぜ」
手始めにヴェンはハンドガンを二丁持ちで連射した。ハンドガンは直ぐに弾切れになった。ヴェンは弾を補充することもなくマシンガンを取り上げてまたも連射した。
「うらぁぁぁ!!」
ヴェン叫び声を上げながらロケットランチャーを両肩に担ぎ、アサシンに向けて打ち放した。ロケットの着弾と共に爆煙が上がりアサシンの姿が煙に紛れた。ヴェンはロケットランチャーを投げ捨てて、ライフルを構えた。
「シャアアアアアァァァ!!」
煙の中からアサシンが高速でヴェン目掛けて飛び出してきた。ヴェンは咄嗟にライフルを撃った。弾はアサシンに当たったが勢いは衰えず、そのままヴェンはアサシンの回し蹴りを腹に喰らうことになった。
「うがぁっ!?」
ヴェンは宙に浮き上がり、無防備に上体を反らしたまま視界の端にアサシンを捕らえ、次の攻撃を覚悟して思い切り歯を食いしばった。
「シャオオオオォォォォ!!」
アサシンの拳が連続でヴェンに叩き込まれる。拳の嵐が止むと踵落としをでヴェンを地面にへばり付けてから襟元を掴み夜空に掲げた。
「ザンネンダッタナ、ナカナカオモシロカッタゾ、オマエラ、オマエヤッテカラ、ホカノナカマモ、ヤラセテモラウ」
ヴェンは口元の血をペッとアサシンに吐き付けた。
「うるせぇぞ、殺るならとっとと殺れボケ」
「・・・イイダロウ、ノゾミドオリニシテヤル!!」
今出来る精一杯の抵抗をしたヴェンは目を閉じた。出来る事を全部やったとは思わなかったが、少しだけブルーとサーが心配になった。
「じゃあな」
永遠に来ないような一瞬が過ぎていった。しかし静寂は突然、聞き慣れた声に引き裂かれた。
「勝手サヨナラなんかするんじゃなーーーい!!」
ヴェンとアサシンが声の方向を見ると、ブルーが事務所の手摺りに捕まってこちらに叫んでいた。
「アタシの事!!勝手に助けて勝手に死ぬのかよーー!!このぉ、ばかアフロがぁぁぁぁーーーー!!」
少し遅れてサーが出てきた。サーはすまなそうな顔をしていたが、ヴェンは手を振って返した。
「ウルサイヤツダ、アイツヲサキニ・・・」
「おい、放せよ」
ヴェンがアサシンの顔を蹴り上げた。体勢を崩したアサシンはヴェンを放してしまった。アサシンはよろめき二、三歩ほど後ずさった。
「俺だけなら良いんだけどよ、あいつら殺るのは流石に勘弁だ。」
突如ヴェンの身体が赤く光だし、身体の光は全て右の拳に集まった。
「ナンダ、ソレハ?」
アサシンは防御の構えをとり、ヴェンの攻撃に備えた。しかしヴェンは心底愉快そうに笑顔を見せていた。
「わりぃけどこの技には防御なんて意味ねぇんだ、なにせ加減が難しくて調節がきかないのも有るが――お前に加減は必要ねぇよな!!」
すると、アサシンが防御をやめて宙に舞い上がった。守りに意味がない今となっては技の発動前に潰してしまうのが安全だと考えての空中からの強襲だった。
「サセルカァァ!!」
「キメラシステム発動!!左腕のみの拘束解放許可!!うおぉぉぉぉぉ!!」
刹那、ブルーとサーからはヴェンとアサシン、二人の身体が重なった様に見えた。しかし次第にアサシンの身体が上向きにヴェンから離れて行った。アサシンの身体にはヴェンの拳がめり込んでおり、ヴェンが腕でアサシンを持ち上げていたのだ。
「バスタァァァァァ・・・キャノォォォン!!」
そしてアサシンにめり込んでいる拳から赤い光が放たれた。辺りに強烈な衝撃が広がりブルーとサーは部屋の中に吹き飛ばされた。アサシンはその場で塵も残さずに蒸発した。最後に何かを言ったような気がしたがヴェンには聞き取れなかった。受け身もままならないブルーだったが幸いサーがクッションとなったおかげで直ぐに立ち上がる事が出来た。ブルーは急いでヴェンの元に向かうと、軽いクレーターとなった中心にヴェンは俯せで倒れ込んでいた。
「ねぇ!しっかりして!ねぇ!ねぇってば!」
ブルーがユサユサとヴェンを揺らすが反応がない。半泣きのブルーが何度も背中を叩いたり、頭を叩いたりしていると
「いてぇよ・・・馬鹿野郎ぉ、こっちはお前らよりボロボロなんだから―」
言おうとしたヴェンだったが言葉に詰まってしまった。何故ならブルーが涙を流していたからだ。ブルーは大声で泣くわけではなくシクシクと静かに泣いていた。肩を大きく動かし地面には何滴も涙が落ちては消えた。
「心配なんかしてないから、死ぬかも知れないなんて思ってなかったから、帰って来なくても全然構わなかったんだから!!」
「悪かったな、死んでなくて」
ポンポンとブルーの頭を叩くとヴェンは事務所に向かって歩き出した。右手からは血が流れ、コートの袖は肘ほどまでしかなかった。ブルーも遅れてついて行った。夜が明ける寸前の薄暗いなか事務所の階段を上がると思わず二人は声を上げた。
「あっ」
そこには先ほどクッションになったサーが白目を向いてピクピクしながら倒れていた。
シーユーネクスト
予定より創作意欲に遅れが生じました




