永遠相関の出会い
数百年振りに蘇りしその鼠小僧。
そいつに俺は母から受け継いだ代々伝わるらしい指輪を盗まれた。
どんな意味があるか分からないが母の形見である為鼠小僧を追いかけている。
鼠小僧、ヤツは道具を一切使わずに物を盗む。
昔に比べればそこそこ進化した防犯設備も反応せず、張り巡らされたバリケードや見上げるほどの巨大な壁もヤツにかかれば意味がない。
ヤツは障害など無かったとばかりに物を盗む、まるで某三世のような鮮やかさである。
十分ほど片足立ちを続けていたヤツは空を見て何かを呟いた。
「…………」
俺はヤツをジッと見つめる、どんな些細な事も見逃してはならない。
最強の泥棒と呼ばれるヤツを今の俺は捕まえれない。
勝機があるとしたらそれは弱点を突く事、ただそれだけなのである。
「今日は何が狙いだ……」
ヤツがこんなにも目立つ行動に出るのはとても珍しい。
いつもはいつ犯行に及ぶかわからない為探すのに戸惑ってるくらいだというのに。
またしばらく空を見上げたヤツは突然頭を抑えた。
根気良く残っていた僅かな野次馬がいきなりの動作にどよめく。
動くか……誰もがそう思ったであろうその瞬間にヤツは後ろ向きに落ちた。
「…………」
いや落ちたというのは正確では無い。
しかし野次馬には落ちたように見えただろう、最初は誰もがそう思う。
俺は美術館の裏に向かって走り出した。
ヤツは落ちたのでは無い、後ろ向きに飛び降りたのだ、普通は恐怖でそんな事はできない、しかしヤツはなんなくやってのける。
美術館の裏に一つの人影があるのを瞬間的に確認してポケットから一つの玉を取り出して放り投げた。
玉から煙が出だしたのを確認して特殊ゴーグルを付ける。
「…………」
有害では無いがなるべく煙を吸わないように周りを探る。
少し奥に人影を見つけて慎重に近づいて肩を掴んだ。
「捕まえたぞ……」
「ひゃっ……」
可愛らしい声が聞こえた、鼠小僧は女性だったのか。
煙が晴れると涙を浮かべた少女がいた。
「な……なんですか」
ロングヘアーのその少女は煙を吸い込んだのか咳こみながら俺を見つめてきた。
「えと、鼠小僧じゃ……ないよな」
少女は元から大きめの目を更に見開いて俺に尋ねた。
「鼠小僧……知ってるの?」