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永遠不滅の大泥棒
皆さんは鼠小僧というのを知っているだろうか。
鼠小僧とは金に困った貧しい者に、盗んだ金銭を分け与えたとの噂があった江戸時代の泥棒である。
しかしそんな[タイガーマスク]みたいな完全親切な人がそうそういてたまるものか。
鼠小僧も金のほとんどを博打や女遊びに費やしたなんてまさに現実味のある説があるくらいだ。
そんな昔の泥棒の話を持ち出したのにはちゃんと理由がある。
俺は雰囲気重視で買った刑事ドラマ風コートのポケットに手を突っ込んで美術館の上を見る。
美術館の上には一つの人影、それが自殺願望者じゃないのは周りの野次馬達も認知している。
強い風が吹く中、 美術館の上で片足で立っているその者は灰色のローブで全身を包んでいる。
その者こそが俺が追いかけている大泥棒、人呼んで[鼠小僧]である。