表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第2部 福岡編 第5章 新天地
PR
97/150

4月2日(月)   ま2

 朝の朝礼が始まる。この日は年度始めの初日と言うこともあり、七島社長を始め、瀬々串専務、学習教材担当の河浦、営業担当の尾辻、取材班の猿渡・牧本・稲森、編集班の大畑・柿本の九人の全員がそろっていた。


「それでは朝の朝礼を始めます。本日は年度始めであり、本日付けで新しく着任した社員の紹介から始めたいと思います。それでは桜田さん、前へどうぞ」


 紫はそう言われると、重い足取りで前へと向かった。隣にいた稲森美和が軽く背中を叩く。紫が前にたどり着くと専務が紹介を始めた。


「二月に引き継ぎに来ていたので、皆さんもすでに知っていると思いますが、本日から正式に我が社の総務主任として頑張って頂くことになる桜田紫さんです。今年はエイプリルフールが日曜であったことが残念ですが、桜田さんならエイプリルフールでなくても素敵な挨拶をして下さることと思います。それではお願いします」


 瀬々串の無茶ぶりは相変わらずである。まあ、これが彼のいいところである。七島社長がたまらず突っ込む。


「専務は毎日がエイプリルフールだから、別に四月一日にこだわらなくてもいいでしょう。桜田さんは専務のことを気にせずに自分の言葉で挨拶して下さいね」


「今回、縁あってビオランテ出版の総務主任となりました桜田紫です。二月の引き継ぎでは大変お世話になりました。まだまだ総務主任としては半人前でございますが、一日も早く前任の井出さんのようになれるように頑張りたいと思います。どうか、ご指導・ご鞭撻のほどをよろしくお願い致します」


 紫は短い挨拶をして、さっと切り上げた。まばらだけど力強い拍手が返ってくる。エスペランサ出版のように人がいないので、拍手の音もまばらに聴こえるが、一人一人が紫を心から歓迎していることが伝わってきた。


「桜田さん、ありがとうございました。まだ、緊張されているのか、真面目で固い挨拶でした。これから、我らがオールドルーキーの桜田さんを博多色に染めて行きましょう。引き続き、七島社長より年度始めの挨拶を頂きたいと思います。それでは七島社長お願い致します」


 それからはありきたりの朝礼であった。朝礼が終わるといよいよ仕事が始まる。紫は二月に井出から引き継いだ書類を広げながら、かつて井出が座っていた総務主任の席に座る。


 もちろん、二週間足らずの引き継ぎで全てが分かる訳もない。そう思っていたら、瀬々串専務がこちらへやって来て、総務に関するミーティングをするから会議室へ来るように言われた。


「井出さんに頼み込んで、奥さんの介護の合間なら、社外顧問と言う形で週に一回会社に来てもらうことになりました。他の社員にはすでに年度末に伝えています。井出さんの都合が最優先されるので、不定期となりますが、原則毎週水曜の午後に出社される予定です。総務の仕事で分からないことがあったら、その時に聞いて下さい」


 紫は井出が定年を機に妻の介護に専念することになっていると聞いていたので驚いた。そうでなかったら、定年後も引き続き会社に残って、総務主任の仕事を続けていたに違いない。そのような事情もあり、即戦力の紫に白羽の矢が立ったわけである。


 しかし、二週間の引き継ぎではどうにもならないこともあるわけで、不定期とは言え井出が会社に来てくれることはありがたいことである。


「まずは井出さんが作った新年度予算案に不備がないか点検をしてください。昼から、各部署の責任者との予算会議を行いますので、それまでに予算案の要点を頭に叩き込んで下さいね」


「えっ、もう会計年度は始まっていますよ。今から予算について話し合うんです

か?」


「いや、もう会計についての話し合いは九割がた終わっていますよ。別に例年通り昨年度末にきちんと終わらせても良かったんですけど、それだと桜田さんは一年間のお金の流れがつかめないから、決定の場面には必ず立ち会わせて下さいと、井出さんからの要望があったけんね…」


 ああ、そう言うことか…。紫は思わず大きく息を吐いた。就任初日から予算会議とか荷が重過ぎると思ったが、最後の決定場面だけに立ち会う程度ならなんとかなるかもしれない。そうは言っても、井出が作った予算案とこれまでの会議の流れを頭に叩き込まなくてはいけないので大変である。


 専務とのミーティングが終わると、紫は自分の席で予算案とこれまでの会議の流れを、昼食とるのも忘れて頭に叩き込んだ。


「初日から昼ご飯を忘れるなんて、いくらなんでも飛ばし過ぎっちゃん。体ば壊すよ。専務から予算会議があるって聞いたけど…。とりあえず、これを食べり」


 稲森美和からサンドイッチとリポディタンDの差し入れをもらった。ふと時計を見ると十二時四五分である。紫は美和にお礼を言ってからお金を払おうとしたら、お金を受け取ろうとしなかった。


「そんなことはいいから、今度私が取材で参っていたら、差し入れよろしくね! じゃ、会議頑張りよ!」


 そう言って、美和は自分の席へと戻って行った。紫は慌ててサンドイッチと栄養ドリンクを飲み込む。そして、予算会議へと乗り込むのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ