3月8日(水) ☎2☎
夜、陽美に連れられて、紫はカフェ・ボニータへと向かう。今ならまだ帰れるのではないかと紫は思った。しかし、陽美はそんな紫の思いなんかを知る由もなく、ズンズンと歩いて行く。それに反比例するように、紫の足取りはどんどんゆっくりになる…。
「どうしたの?」
「いや、やっぱり行きたくないな…なんて思ってね」
「何言っているの…。そんなこと言っているから水戸からなめられるのよ! さあ、行くよ!」
「……」
どうにかして、カフェ・ボニータに着いた。まだ、水戸あおいは来ていない。六時五五分か…、待ち合わせの七時まであと五分。ちょうどいい時間に着いたが、肝心の水戸あおいが来ない…。
「あいつ、先輩を待たせるとはいい度胸しているね〜。電話してみようっと」
「もしかしたら、仕事で遅れてるのかもよ。それにまだ五分しか経ってないし…」
「何でもうすぐ辞める人が残業する必要があるのよ。私達と同じ立場だから、さっさと帰れるはずでしょう…。もう、紫は何であんな奴をかばうわけ?」
「別にかばってなんかいないから…。ただ、もうあいつと関わりたくないだけだよ」
「すみません。遅くなって申し訳ありません。ちょっと道に迷ってしまいまして…」
水戸あおいがようやく来た。あと少し来るのが遅かったら、陽美と紫は必要の無い口論を始めていたかもしれない。とりあえず、水戸あおいが来た事で、二人の矛先が水戸あおいに向く。
さっきまでもう関わりたくないと思っていた紫でさえ、水戸あおいが遅れてきた事に少し腹を立てていた。
「先輩を待たせるとは、いい度胸ね」
「本当にすみませんでした。本当に悪気はないんです…」
「まあ、いいよ。とりあえず、水戸がやりたい放題やった結果、武下君がどうなったか説明するから…。そして、紫はそのとばっちりで本当に迷惑しているんだから…」
水戸あおいと陽美のやり取りに取り残され、一人ポツンとしている紫。正直、紫はどうすればいいのか分からず、ただ途方に暮れている。陽美は昨日までの武下定秋とのやり取りについて、一つずつ説明している。もちろん、奴のストーカーまがいの行動なども含めてである。




