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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第3章 決着
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3月2日(金)  ※1※

「班長、大芝課長から聞きましたよ。四月から新班長補佐として残ることが決まったそうですね。おめでとうございます」


「何だ…。知っていたのかよ。今から言おうと思っていたのに…。それにしても、この会社は本当にふざけているよ。辞めろと言っておきながら、急にやっぱり辞めないで新総務班の班長補佐になれ…なんて言うからな…」


「確かにそうですね。でも、このご時世、仕事が続けられるだけでも幸せですよ」


「そりゃそうだ。この一ヶ月、再就職先が全く見つからなかったからな…。そう言った意味では水戸君が辞めてくれたのはありがたかったよ。本当はこんなことを言ってはいけないだろうけど…」


 昨日、久々の我が家でゆっくり休んだはずなのに、まだ疲れが残っている…。この日は朝から頭が回らなかった。それで軽く飲み物でも飲もうと思ったら、大泉が既にいた。紫はいつものようにミルク入りのコーヒーをごちそうになりながら、班長の話に耳を傾ける。


「まだ、写経されているんですか?」


「ああ、続けているよ。もしかしたら、写経のご利益があったのかもしれない…」


「それにしても、水戸あおいは本当にふざけた奴ですね。結婚して辞めるらしいですが、相手は外部の人って聞きました。武下と私の仲を切り裂いた上に、こんなことをされたら…」


「気持ちは分かるけど、もう全てを忘れた方がいい…。あんな最低な奴らに振り回されることなく、桜田君は福岡で新しい一歩を踏み出すべきだよ」


 すごく泣き叫びたい気分なのに、この一ヶ月半で泣いたり起こったりし過ぎたのか、泣くことも怒ることも、なぜかできないでいた。どうやら、感情エネルギーは無限ではなく、有限で使い果たせば空っぽになるらしい…。


 紫は水戸あおいの結婚話で感情のヒューズが完全に切れたようだ。昨日から笑うことも、泣くことも、怒ることもできず、ただ不気味なほど穏やかな顔をしている。この境地を何と表現すればいいのか…。紫はただ途方に暮れていた。


 この日、陽美はタウン誌出版連合会の事務担当者会議のため、半日出張で会社におらず、一緒に昼食を食べなかった。


 昼、紫の担当である社会保障や厚生年金の業務を総務三班で一番若い入社三年目の滝川へ引き継ぐことになっていたので、引き継ぎに向けたマニュアルを作成することにした。かつて、紫が引き継いだ時のマニュアルを参考にして、変更点などを書き換える。また、紫がいなくなっても困らないように、努めて分かりやすい内容にした。


 隣を見ると、出張から帰って来た陽美もタウン誌出版連合会事務局のマニュアルを作っていた。この時期、会社を辞めたり、異動したりする社員は全て、引き継ぎの準備に追われていた。水戸あおいも経理の引き継ぎマニュアルを作成しているのが見えた。一応、引き継ぎマニュアルを五日までに作成して、大泉に提出しなければならないので大変である。


 これから新年度に関する書類は、現在の班に関係なく、全て大泉新班長補佐に提出となっている。そのため、大泉は大変そうであった。

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