表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
6/150

1月19日(木) ④

 それにしても、一体何がどうなったと言うのか…。長年少しずつ築き上げた物がわずか二日で跡形もなく崩れさるとは…。大学を卒業してからすぐ就職した。それから十年、このエスペランサ出版に尽くして来たのに、それがたった一日で否定されたのだ。エスペランサとはスペイン語で希望と言う意味らしいが、希望もクソもあった物ではない。恋だって五年も尽くしてきた相手に、わずか一日で否定された。何十年に一度しか起こらないような大悲劇がわずか二日の間に連続して起きるなんて…。悲劇は連鎖したかのように悪いことばかりを次々と引き起こすから、本当に始末に負えない。世界恐慌がかすんで見える。


 仕事は相変わらず山積みだったが、どうせ三月末にはここからいなくなるんだ。まじめに仕事するのが馬鹿らしい。運良くここに残れることになった人達に押し付けてしまえばいいんだ。昨日は昨日で夜遅くまで大変だったし、定時で帰ろう。二ヶ月後、水戸あおいにたくさん仕事を押し付けてやる。まあ、そんなことしても、全く割にあわないが、やらないよりかはマシである。五時になると、紫は周りの目など全く気にすることなく、さっさと職場を後にした。それは紫だけでなく、大泉や陽美も同じであった。


 帰り道、紫は最寄りの西仙石駅の一つ手前である仙石駅で電車を降りた。この駅はJRと二つの私鉄が乗り入れる。この付近では割と大きな駅で駅ビルの中には小さなデパートのような、大きなスーパーのような微妙な大きさの店も入っている。駅の周りにはそれなりに大きな商店街もあり、交番もある。紫は西口にある。交番に寄った。そこで自転車の盗難届を出した。昨夜、自転車さえ盗まれなければ…。いや、武下定秋から、ふられるようなことがなければ、あんなことにはならなかったはず…。


 紫はかつて、警官の知り合いから、警察は基本三日に一回二四時間勤務をしており、三つのグループが交代して働いていると聞いたことがあった。できれば、昨日、紫を摘発した二人の警官にここへ来たことを知られたくないので、この日に交番に来ることにした。そうすれば、二日後に盗難届を引き継がれることもないだろう。よほど重大な事件でもない限り、二日前のことなんて引き継がないだろうと紫は踏んでいる。


 ここの交番が紫の住んでいる地域の管轄であることは、昨日彼女を捕まえた警官から聞かされた。紫はついでに盗難届もパトカーで書かせてくれたらいいのに…と思ったが、警官は、パトカーでは犯罪を取り締まることしかできないと言って、全く取り合ってくれなかった。全く融通の利かない組織である。まあ、彼らも公務員だし、所詮はお役所仕事しかできないのだろう。だから、被害届がなければ、逮捕もしないらしい。まあ、それは紫にとっては都合のいいことなので、気にも留めていない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ