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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
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1月18日(水) 〜その壱〜

レーシックは医療行為です。


レーシックについては自己責任でご判断ください。


当方では一切責任を負いかねますので、予めご承知置きくださいませ。


また、小説の設定上、自転車を盗む場面がありますが、絶対にマネしないで下さい。犯罪行為は法令等で厳しく罰せられます。

 駅に着いたら、赤い自転車が盗まれていた。何で、よりによって今日なんだよ! 紫は一人悪態をつく。駅から自転車で十分、歩けば三十分はかかる。いつもなら冷静に考えた末にバスかタクシーに乗って帰っただろう。


 しかし、この日は五年近く付き合って来た彼氏にふられて、どうしていいか分からずにただむしゃくしゃしていた。紫はもうすぐ三二歳になる。当然、結婚だってお互いに意識していると思っていた。しかし、三つ年下の武下定秋は紫の元から去って行った。


「定秋のバカヤロー! 水戸あおいのバカヤロー!」


 そうやって、叫んだ所で武下定秋も自転車も戻ってこない。武下定秋は水戸あおいと浮気していた。水戸あおいは紫から見て、五つも下の後輩であり、奴から見ても三つ年下になる。浮気のことも含めて、あれこれ問い正したら、彼は悪びれることなく別れて、水戸あおいと付き合うと言う始末だ。正気か?…と思って、あれこれ問い詰めたが、全くの逆効果だった。それどころか、


「紫は、結婚!結婚!…ってうるさいんだよ。俺はまだ自由に気楽に過ごしたいんだよ。昔は面倒見がよくて、気だてもいい所が好きだったけど、今となってはただの世話好きのお節介おばさんにしか感じられないんだよ。紫の行動、一つ一つが恩着せがましいし、重過ぎて、とてもじゃないけど、もう支えられないよ…。とにかく、あおいといるとホッとするんだ」


…なんて言われた。彼の目の前で泣かないようにするのが精一杯だった。急いで人気のない一階の一番奥にある倉庫前のトイレに駆け込んで大泣きした。紫は大泣きしたのが、定時後で本当によかったと思った。泣いてすっきりした後、腫れた目を鏡で見てビックリした。腫れて火照ったまぶたを冷たい水で冷ます。どうにかして、まぶたの腫れと熱がひいて、総務課に戻った時には部屋が真っ暗になっていて、鍵が閉まっていた。くそっ…舌打ちをしながら、巡回中の警備員を探しまわる。やっとの思いで警備員を見つけて、なんとか総務課の鍵を開けてもらうことができた。自分の机に座ると、またフワッと涙腺が緩んで、また泣きそうになったがどうにか我慢する。


 そして、やっとの思いで会社を出て、東新宿駅から電車で揺られること三十分。西仙石駅を出たら、自転車を盗られていた…。


 紫はあまりにもついていない一日がまだ終わっていないことに大きなショックを受ける。そして、何度も武下定秋を呼び出して、浮気を問い質したところから思い出しては、こんなに立て続けに悪いことが起こるものだろうかと考えていた。これは悪夢で、目が覚めれば、ここから抜け出せるのではないかとさえ思った。思わず、ほおをつねった。痛っ…、まぎれもなく痛かった。これは夢なんかではない。まぎれもない現実なんだ。またしても涙がこぼれそうになる。もう既に数えきれないぐらいバカヤローと叫んでいた。周りからの冷たい目線がちくちく刺さる。


 その時だった。紫は偶然にも鍵がかかっていない自転車を見つける。自分だって、鍵をかけ忘れたばっかりに自転車を盗られたんだから、お互い様だろうと思った。思い立ったら、もう止まられない…。次の瞬間、紫は誰の物か分からない自転車で家路に着いたのである。もう、何も起こらないと信じて疑わなかった。

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