余
そうして日常が戻ってきた。あいもかわらずシェリルは居座りひたすらとゲームをやり込んでいるし、源十郎は源十郎で相変わらず日々を気怠げに過ごしていた。
そして今夜もまた件の人物を天井裏で発見した。「何をしているんですか? シェリル?」それに半眼で少女が問いかける。
「ええと、夜這い?」件の人物は悪びれる風も無くそう言い放った。
「また、ですか?」「ええと、また、ですねぇ」無邪気に笑いながら彼女はそう、言った。
その首根っこをひっつかむと少女はシェリルをずるずると彼女の寝床とは名ばかりの棺桶に引っ張って行こうとする。別に棺桶である必要性は無いらしいのだが、彼女の言うところの様式美であるらしかった。
「う〜ん、朔夜の時の方が可愛かったぞ、お前」それは、何の気もない一言だったかもしれない、しかしその一言は少女にとって爆弾だった。思い当たる節でもあるのか、少女は暗い背景を背負ってうなだれていた、よく聞けば「いいんです、いいんです、男の人ってみんなああいう護ってあげたくなるような、それでいて大人の身体の女性の方が好みなんです」とかいう陰鬱な声が聞こえる。
その隙に、再度中断された夜這いを再開しようとして、やはりその首根っこを先ほどよりも力強く押さえられる。
「ところで、思うんだが、源十郎を吸血鬼にすると、ずっと一緒にいられるぞ、生き人形の神無ちゃん」確信犯的な笑みを浮かべて彼女は再度言い放つ。
「うっ!?」恨めしげな少女の視線と彼女の視線が交錯し、何かを振り切るように少女は彼女を引きずって行こうとして、その違和感に気づき振り向くと「丸太!?って、変わり身の術とか、何を日本かぶれしてるんですか、あの吸血鬼はっ」叫ぶと、源十郎の寝室の扉を開く、そこでは今まさに、源十郎の首筋に噛み付こうとしているシェリルが
「はいはい〜、痛いのは最初だけ、優しくするから〜」とか言っていた。
「玩具の楽隊、演奏開始」「いやー、やめてー」とか叫ぶ彼女はどうみてもこの状況を楽しんでいた。「やめなさい、シェリルっ!! 源十郎様は私のなのっ!!」
彼女たちに挟まれた中で、”人形師” 能登 源十郎は深々とため息をついた。どうやら彼の安らかなる睡眠はだいぶ遠のいてしまったようだった。
続きが読みたいという奇特な方がいらっしゃれば続きます。




