変な奴
夏が終わって
秋
風はいつの間にか冷たくて肌寒い
夜が長くなった
もうすぐ、冬がくる------
-----高校の制服が夏服から冬服に変わり、久しぶりに見たその姿は少しずつ学校の雰囲気に馴染み始めている。
…ブレザーでかいな…
放課後、俺は珍しく何の用も無かったけど、なんとなーく残っていた。
なぜか教室の窓は全部開いてて、ブレザーだけだと少し寒い。
「ったく、掃除当番のヤツら窓くらい閉めていけよなぁ…」
「閉めないで」
小さく声がした。
「何で?」
「…」
小川深夜。
入学式の次の日から入院してて最近やっと戻ってきたみたいで、未だにクラスに溶け込めていない。
自分から話すようなヤツでもなさそうだから、俺に声をかけてきて驚いた。
「だって寒いだろ?せめて全部じゃなくてひとつだけに----」
「いいの。そのままでお願い…冷たい風、気持ちいいから」
「そうかな?ならいいんだけどな」
変な奴。
でも、少しだけコイツの言ってることわからないこともない。
「なら、俺ももう少しいようかねぇ」
小川は俺の方をじっと見た。
「変わった人」
コイツ、真顔で言いやがる。
「お前には言われたくねーな」
「そうかも」
多分、クラスメートの中で俺が1地番に小川の笑った顔を見たな。
だからどうだ!ってことでもないんだけど、結構カワイイんだコレが。
「君、名前は?」
小川の方から聞いてきたけど…
「覚えてねーのかよ」
「ごめんごめん」
「謝る気さらさらねーだろ。東 広太郎だコノヤロー」
「あずま、こーたろー?」
「漢字で発音なさい」
「ふふっ…どっちも名前みたいで覚えやすいね」
意外 って言葉はどうかとおむんだけど、変わってるトコはあるけどわりと他の女子と変わんないんだな…。
「そういやぁさ、お前入学式の次の日から入院してたんだよな?何でか聞いてもオッケー?」
「誰から聞いたの?」
「担任」
「そう。クラスのみんなも知ってるの?」
「いや、クラスの奴らは知らないと思うぞ。俺、前期のクラス委員長でさ担任から聞かされて、それなりに気にしてはいたんだよ」
小川はそっか とつぶやいた。
「体が昔から弱くて、すぐ体壊しがちなの」
「寒いのは平気なのか?」
「うんっ」
とたんに目を輝かせる。
「だって、この秋から冬にかけての風、すごく気持ちいいじゃない?」
なんだかなぁ…子供みてぇ。
なんとなく自分のブレザーを脱いで、なんとなく小川の肩にかけてみた。
もちろん小川の小柄な体に男物のサイズが合うわけもない(俺でさえデカイのに)のはわかってるんだけど…つい。
「あったかい~」
「だろ?やっぱり寒かったんじゃねえか」
「でもいいよ、この寒さが気持ちいいんだしね?東くんが寒くなるから返すよ。ありがとう」
返されるとなんか恥ずかしいから、返さないで、やめて、お願い。
「いっ…いいから着てろ」
小川は、俺のそんな反応を楽しんでいるかのようにクスクス小さく笑っていた。
続く