浅草1
浅草雷門の前には、たくさんの外国人観光客。そして、その観光客を呼び込もうとする人力車の人達など、沢山の人が集まっている。
巨大な門の下に巨大な『雷門』と書かれている巨大な赤い提灯。
ここは浅草。日本随一の観光名所である。
「うおー、ここが浅草か! 初めて来たぞ!」 初めての浅草雷門とあって興奮しているルーカス。
「凄い! でかい! これが雷門か!」
「あ、あぁルーカス王子、そんなウロチョロしてたら正体がバレますよ!」
一方の美穂はルーカスの正体がバレるんじゃ無いかと気が気でない様子だ。
「ル、ルーカス王子、これをつけて下さい」
「ん? これはなんだ?」
「伊達眼鏡です。徹さんの部屋にあったのを借りて来ました。これをつければ正体がバレ無いはずです」
ルーカスは伊達眼鏡をかけてみる。
「ふむ。有り難う。美穂。所で君も、『そのルーカス王子』ってのをやめられるか?」
「へ?」
「王子と呼ばれていたのでは、私の正体がバレる可能性があるだろう?」
「は、確かに」
「私の事は『ルーカス』と呼べ。呼び捨てで大丈夫だ」
「う、うう、分かりました」
美穂はルーカスと呼び捨てにし辛いのか少し、ためらっている様子だ。
しかし、勇気を出したのだろう。ルーカスの名前を呼んでみる。
「ル、ルーカスさん!」
「さん付けか。まぁ、良いだろう。行くぞ、美穂!」
「は、はい!」
ルーカスと美穂。二人は門をくぐって仲見世通りに入った。
仲見世通りは小さな店が、ひしめき合っている浅草寺へと続く商店街。
そこには人形焼きやら、服やら、お面やら様々な物が売られていた。
「ふむ。これは芋ようかんが入った、どら焼きみたいだな」
その中で、芋ようかんが売られている店に足を止めたルーカス。
「食べます?」
「うむ。一つ買って食べてみよう」
ルーカスは芋ようかんが入った、どら焼きを一つ買う事にした。
お金なら大丈夫だ。ジーンズのポケットに、これだけは無くすまいと、しっかり入れてある。
「す、凄い、お金の量ですよね。それ」
美穂はルーカスの財布の中身を少し見て一言、そう告げる。
財布の中には、日本円で十万円程入っていた。
「うん? まぁ、観光用だからな。これ位は必要かと思ったんだ」
「観光用でも、そんなに持ち歩かないですよ。やっぱり王族は違うな〜」
「ま、まぁ、お金はある方だな。美穂は食べないのか?」
「じゃあ、食べますね」
美穂も食べたかったのだろう。どら焼きを一つ注文する。
「あっ」
そこで素っ頓狂な声を上げた。
「どうした?」
「さ、財布、忘れました……」
そういえば、ここに来るまでの切符代も私が払った気がする。
美穂は財布を忘れていたようだ。
「あ、やっぱり要らないです!」
「お金なら、私が払うぞ」
「えぇ!? そんな悪いですよ」
「ここまで付いてきてもらって、お金を払わない訳には行かないだろう。ほら、これ」
ルーカスは、どら焼き一つ分の、お金を美穂に手渡した。
「あ、有り難うございます!」
「うーん。上手いな。これ」
芋ようかんの入ったどら焼きは絶品であった。
皮は、ほのかに甘く、中の芋ようかんは自然のさつまいもの甘さがあり、口に含むと、優しい甘さが口一杯に広がった。
「美味しいですね」
「他にも行ってみよう!」
「はい」
ルーカスと美穂、二人は仲見世通りを進み、箸を売っている店の前に立った。
「ふむ。日本では箸を使って、ご飯を食べるらしいな」
「はい、そうですね」
メルベールでは中々無い文化だ。
そんなルーカスにとって箸は、どれも魅力的に見える。
「うーむ。一つ位は欲しいな。箸」
「一つ買って行きます?」
「うむ。そうしよう!」
ルーカスは慎重に吟味して一つ、気に入った箸を購入する。
「よし、次の店に行くぞ。美穂」
「はい」
二人は仲見世通りを更に進んで、人形焼きが売られている店の前へと、たどり着いた。
「人形焼きか。これも美味そうだな」
「一袋、買ってみます?」
「うむ。そうしよう」
ルーカスは人形焼きを一袋買った。
袋の中には、焼きたての人形焼きが六個程入っている。
「では、早速食べてみるとしよう」
は、ここが出番か!
そう思ったルーカスは箸を取り出し、袋の中の人形焼きをつまんだ。
「おぉ、初めてだが人形焼きを、つまめたぞ美穂!」
「な、なんで、箸で、つまんでるんです?」
「ん? 日本人は、箸で食べるんじゃないのか?」
「まぁ、ケースバイケースですね。人形焼きは普通手で掴んで食べます」
「そうか」
それは残念だな。
箸を使う機会かと思ったら、そうで無くて少し落ち込むルーカス。
「で、でも、箸で食べても良いと思います!」
それを見た美穂は全力で彼の事を励ました。
「おぉ! そうか。なら私は箸で食べるぞ」
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