脱走
「はぁ、王子には困ったものですぞ」
ルーカスの部屋を出たビッシュは、ため息混じりに言った。
結局、ルーカスの説得を試みたが、彼は説得に応じてくれそうにはない。
一体、どうしたら公務の事を分かってくれるのだろうか。
ビッシュは頭を悩ませる。
「ビッシュさん。ちょっといいですか?」
「ん? なんだ?」
ルーカスの付き人の一人がビッシュに尋ねる。
「いや、実は明日は朝早いのですが、ルーカス王子が興奮して寝てはくれないのです」
「そうか……。王子には困ったものだな。全く」
さて、どうするか。明日が朝早い以上、王子にはさっさと寝てもらわないと、いけない。
しかし、今日、明日のスケジュールに不満があって寝てはくれない様子。
うーん。これは……。
「万が一の時に持ってきた、粉状の睡眠薬はあるか?」
「はい」
「あれを飲ますしか無いだろうな」
「でも、どうやって?」
「水に溶かせば良いだろ」
「でも、大丈夫ですか?」
「責任は儂が持つ」
「分かりました」
ビッシュ達は王子に睡眠薬を飲ませ無理矢理眠らせる事にした。
「王子、この水でも飲んで落ち着いて下され」
ルーカスはビッシュに水を手渡される。
「ん? まぁ喉が渇いてたし、丁度良いだろう」
ルーカスは水を手に取り、それを飲んだ。
「とにかく、明日は日本観光がしたい。良いな」
「ま、まぁ、とにかく寝て下さい」
そう言って、ビッシュは部屋を出て言ってしまった。
部屋には現在、ルーカスが一人だけ。
一応、ルーカスはビッシュが戻って来ないか、部屋の扉を確認する。
「よし、ビッシュは戻ってこないな」
ビッシュは、戻って来そうには無かった。
さて、これから、どうするか。
このまま寝てしまえば、明日は会食続きで、日本観光など出来やしない。
スケジュールを確認した所、観光が出来る時間などありはしなかった。
このままメルベールに帰る事になるのか。それは嫌だ。
よし、逃げ出そう。
そう決心したルーカスはトランクケースから、Tシャツとジーンズを取り出す。
彼は、こんな事もあろうかとメルベールから逃げ出す時用の服を用意していた。
パジャマからTシャツとジーンズに着替えたルーカス。
逃げ出す時のルートは既に把握済みだ。
彼は、このホテルの四階に泊まっているが、窓から出た丁度目の前に、太い枯れ木がある。 その枯れ木を降りて行けば、外に出られる。
誰か来ては不味い。善は急げとルーカスは窓を開いた。
六月上旬の日本は、もう夏かと思うくらい暑い。
しかし、夜は、まだ涼しい方だった。
ルーカスの目の前に太い枯れ木がある。
ここは四階なので、この枯れ木に飛び移られなければ只では済まないだろう。
枯れ木までの距離は少々勇気のいる距離だったが問題は無い。
これくらいの距離なら、ルーカスは幼少期に何度も飛び移った事があった。
「ほっ」
ルーカスは窓から枯れ木までジャンプで飛び移る。
ジャンプは大成功。ルーカスはホテルの部屋から枯れ木に見事に飛び移る事に成功した。
そのまま地面まで枯れ木を伝って降りるルーカス。
脱出は見事に成功。ルーカスはホテルの部屋を飛び出し外へと出たのだ。
これから、どんな旅が待ち受けているだろう。
ルーカスの心の中はワクワクで一杯だった。
なんだか、強烈に眠い気はする。
しかし、ルーカスは、その事は気にせず夜の街へと繰り出した。
「くっ、美穂さん。貴方、やりますわね」
ルーカスが街へと繰り出した同時刻。
美穂はゆかりの部屋でゲームをしていた。
やっているゲームは、大人気ゲーム、『マリオカート』。
ゆかりに誘われ渋々といった感じで始めたのであった。
「ゆかりさん。もう寝た方が良いんじゃないですか?」
「まだよ。私が勝つまでやるわ」
明日は土日で休みとはいえ、正直言って眠い。
しかし、ゆかりに頼まれた以上、この屋敷のメイドとして、やらざるを得なかった。
「くっ、もう少し、もう少しよ」
ゆかりはゲームに熱中するあまり、自分の体さえも傾けてしまう。
「あ、あぁ、ゆかりさん。そんな体傾ける必要ないですよ」
「うるさいわね。今に勝つから見てさないっ。うわっ!」
体を傾け過ぎた結果、バランスを崩し、地面に倒れ込むゆかり。
「ん、ゆかりさん。大丈夫ですか?」
「もう良いわ! こんなゲーム、やってられない! 寝る」
ゆかりがゲームを投げた事でゲームは強制終了。
これで寝られると美穂は、ほっと息を吐く。
「あ、そういえば」
寝ようと自室に向かっていた美穂だが、徹に牛乳を買って来て欲しいと頼まれたのを思い出した。
明日、朝早く買ってくるのも億劫だ。今のうちに買っておこう。
そう思い美穂は財布を持って玄関を出た。
良かっら評価とか色々してね〜




