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日本へ行こう

 車を走らせる事、二十分。王宮へと、たどり着いた二人。

 車を降りてルーカスは早速、父のルドルフがいる仕事部屋へと向かい部屋をノックした。

「父上、ルーカスです。入っても宜しいでしょうか?」

「あぁ、入れ」

 許可が降りたのでルーカスはビッシュと共にルドルフの仕事部屋へと入る。

 ルーカスの父、ルドルフは食事以外は、ほとんど仕事部屋にこもり、仕事に付きっきりだ。

 どうやら彼は仕事が大層好きらしい。

 故にルーカスは父と遊んだ記憶があまり無い。

 今日もルドルフは机に置かれた書類に何か書き込んでいる。

 そんなに仕事があるのだろうかとルーカスは思う。

「父上、私に頼み事とはなんですか?」

「……ルーカス、お前、外国には興味あるか?」

 ルドルフはルーカスに、そう尋ねてきた。

 勿論、興味はある。

 ルーカスは生まれてからというもの大事に育てられて来たせいもあってか、このメルベール王国を出た事は無い。

 いつか、この王国を出て海外に行ってみたい、それはルーカスの夢の一つだった。

「勿論、興味はあります。何故です?」

「そうか。では、お前に仕事を頼みたい」

「仕事、なんですか?」

「お前には、特使として日本に行ってもらう」

「日本!?」

「あぁ、そうだ」

「日本、私が日本に行けるのですね!」

「そうだな」

 日本、それは極東にある島国の名前。

 漫画やアニメ、食べ物が充実していて、ルーカスにとって、いつかは行ってみたい国の一つであった。

「お待ち下さい。国王陛下!」

 ここでビッシュが割って入る。

「日本といえば、今はメルベール人を目の敵にしていると聞いています。そんな危険な国に本当に王子を派遣するつもりですか?」

「なんだよ。ビッシュ、固いこと言うなよ〜」

「王子、日本は今、危険な国なのですぞ! 王子に、もしも万が一の事があったら、私は、もう〜」

「だから行くのだ」

「へ?」

「今、日本とメルベールの関係は冷ややかな物になっている。ルーカス、お前は日本に行き、この緊張関係を少しでもほぐすよう、尽力を尽くすのだ」

「しかし……」

「ビッシュ、父上が、こう仰っているんだ。それに私は日本に行ってみたい。楽しみだな〜」

「王子、これは遊びではないのですぞ」

「ビッシュの言う通りだ。ルーカス、これはあくまでも仕事。日本とメルベールの関係を良好なものにするよう全力を尽くせ」

「分かってます。父上、日本、楽しだな〜」

「本当に分かってます? 王子」

 ルドルフの話によると出立は一カ月後。今日が五月五日なので、六月五日になる。

 楽しみだな、日本。一体、どんな国なのだろうか。

「父上、話は以上ですか?」

「あぁ、そうだな」

 日本に行くと決まった以上、情報収集や着替えの準備で忙しい。

 ルーカスは日本に行く準備をする為、部屋を出ようとした。

「では、私は、これで」

「あぁ、ルーカス、少し待ちなさい」

 部屋を出ようとしたルーカスをルドルフが呼び止める。

「なんです? 父上」

「ルーカス、まだアンの言っていた事を実現しようとしているのか?」

「母上の言っていた事?」

「国境を無くすと言っていた件だ」

 その件か。

「勿論です。父上、国境を境にして人と人が殺し合い、差別し合う。そんなものは間違っています。ならば国境を無くし、人の移動を自由にする。それが母上の願いであり、私の願いでもあります」

「……ルーカス、それは不可能だ」

「何故です? 父上」

「ルーカス、国境は無くせはしない。人間は生まれた時から、国境を境として殺し合う。そういう宿命の元生きているのだよ」

「……そんな世界は間違っています。私が変えてみせます」

「ルーカス、いつまでも綺麗事は言ってられないのだよ」

「しかし!」

「日本に行けば分かる。ルーカス、行って現実を見てきなさい」

「……分かりました」

 ルーカスは父と言い争いをしたい訳では無かった。

 しかし、国境を無くすというのは、母の夢であり、ルーカスの夢でもある。

 それは日本に行っても変わらないだろう。

 ルーカスは、そう思い部屋を出ようとした時。

「やぁ、ルーカス様、この度の日本への特使派遣、大変めでたい事でございます〜」

「フリン内務大臣……」

 扉の向こうにはフリン内務大臣が立っていた。

 このメルベール王国の内務を担当してくれる重要なポストの内務大臣。

 それを何十年も担当してくれているメルベール王国にとって無くては欠かせない人物。

 すらっと背が高く、いつも笑みを浮かべている。

 しかし、ルーカスは、このフリン内務大臣が苦手であった。

 いつも笑顔だが、本当に笑った事は一度も無いんじゃ無いかと思う不気味な笑顔。

 故にルーカスは、あまり、このフリン内務大臣を信用しては居なかった。

「父上に何か用か?」

「そうです。メルベール王国の内政の事で、ちょっと」

 とはいえ仕事の邪魔をしては悪い。

 ルーカスはフリン内務大臣に場を譲り、部屋を後にした。


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