↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公開処刑のはずだった闘技大会、元軍人が参加したせいで戦場になった  作者: 朝山 みどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/20

20 窓口の男と旅立ち

俺は闘技場を出る。だれも気付いていない。

勝てばいいなんて、頭の悪いことは考えない。

賭けの窓口は、闘技場の外周に沿った回廊の奥だ。木の机、帳簿、鉄格子越しのやり取り。

この男だ。名前はウィナー・ルーズ。目が合う。

ウィナー・ルーズが、にやりと笑った。

「お見事」と窓口の男――ウィナーが言う。

机の上に袋が並ぶ。金貨百枚入りが五袋。半端な袋がひとつ。小銭の袋がひとつ。

布越しでもわかる重み。持ち上げると、ずしりと腕に来る。今の体では、普通に持てば震える。だが魔法の腕を使えばいい。

「強くなければ、こんな八百長はできねえ」とウィナーが低く言った。

「八百長になるのか」と俺は笑う。

「勝てるのに負ける。しかも観客の目の前でだ。あれは強者にしかできねえ芸当だ」

俺は袋を一つ持ち上げ、軽く振る。中の金貨が鳴る。

「よく思いついたと思わないか?」

ウィナーは吹き出した。

「あんたは試合より賭けを読んでやがる。お貴族様にしとくのは、惜しいね」

「籍は抜いた。そのへんのガキになった」

「なるほど、いいね、あんた」

「思いついたから、やっただけだけど」

俺は相手に賭けていた。観客は勝者を見ていた。俺は窓口を見ていた。

俺は金貨の袋を二つ、男の前に押し出す。

「世話になった」

ウィナーの目が一瞬だけ鋭くなる。

「いいのか?」

「ああ。お礼だ。金も用意しといてくれた。おかげですぐに逃げられる」

ウィナーは袋を受け取ると、満足げにうなずいた。それから、机の下に手を伸ばす。

出てきたのは、いい感じに使い込まれた革のリュックだ。

「中身、確認しろ。おまえにやる。おまえ、野営の……いや、旅の経験あるのか?」

そう言われてみると、経験がない。軍と一緒だったから……あへ? 俺って偉そうなのに、馬鹿? 顔に血が上るのがわかった。

ウィナーの目つきが気にくわない。だけど、ありがたい。

俺は受け取る。軽くない。中を覗く。

水袋。乾パン。干し肉。着替え。小さな薬瓶が二本。地図。

「旅に必要な物だ。馬車乗り場は南門側だ」とウィナーが言う。「最初に来た馬車に乗れ。そこが、行き先だ」

俺はうなずく。

「元気でな」とウィナーが言う。

「ありがと」と口を動かす。まだちょっと恥ずかしい。

元気でな、か。

回廊を抜けると、夕方の光が差していた。闘技場の外は、驚くほど静かだ。だが、すぐに混乱するだろう。

フードを深くかぶる。背中のリュックが、現実を主張する。金貨の袋は腰に巻き付ける。魔法の腕で支えれば、重さは誤魔化せる。

南門へ向かう。石畳を踏むたびに、心臓が鳴る。

馬車乗り場は、想像より静かだった。最初に出発する馬車に乗った。行先はチューダータウン。どんな町だろう。

扉が閉まる。出発だ。

金はある。杖もそのまま、貰って来た。自由だ。この体は貧弱だ。ゆっくり鍛えよう。育てよう。

馬車が動き出す。揺れに合わせて、俺は小さく笑う。

「次が、本当のやり直しだ」

窓の外、闘技場の塔が遠ざかっていく。焼け、と叫んでいた声は、もう届かない。

あぁ、砂時計を壊すのを忘れた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
オチが最高でした! 彼のその後も見たいです! 冒険活劇になっても王太子とのBでLになっても美味しいかも(・∀・)
これシリーズ化してほしい!連載読みたい!
とってもとっても続きが読みたいです!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。