16 どうしたら、負けられるんだ 参加者目線
砂時計がひっくり返された瞬間、わたしは悟った。
これは試合ではない。我慢比べだ。
相手もわかっている。
わたしもわかっている。
相手の視線が泳ぐ。わたしを見てない。砂時計を見てる。
火の玉が飛んで来た。だが本気ではない。
戦う振りだ。
わたしも同じ。
風刃を放つが、わざと半歩ずらす。
観客は気づかない。魔法が交差しているからだ。
だが当たらない。
決定打がない。
問題は――
砂時計だ。
あれが落ち切る前に降参は無効。
落ちた瞬間から有効。
つまり、先に声を出した者が「負け」になる。
負けたい。
だが相手より先に言わねばならない。
相手を殺せば勝ち。勝てばジョナサンと戦うはめになる。
あの火を押し返した男。
あの喉を正確に裂いた男。
戦いたくない。ならばどうする。
わたしは途中で気づいた。
――喉を潰せばいい。相手のをだ。
声が出なければ、相手は降参できない。
砂が落ちた瞬間、わたしが言えばいい。
だが相手も気が付いたようだ。
終盤。
砂は残り一割。
相手の火球が荒くなる。焦りだ。
わたしは距離を詰めた。
火の玉をを風で散らし、懐へ。
魔法ではなく、手で喉を狙う。
目を見開いた。理解したようだ。
同時に、相手も手を伸ばして突っ込んできた。
指が喉に食い込む。爪が皮膚を裂く。
相手の手も、わたしの喉へ。
わたしたちは、唸り声をあげて転げ回った。
なにも聞こえなくなった。
相手の喉をつかむ。
ここで砂時計のことがすっぽりと抜けた。
わたしたちは、唸り声をあげて転げ回った。
「降参」
ふいに相手が声を出した。
「降参」え?
「降参」わたしもあわてて声を出したが、
審判の声が聞こえた。
「勝者!」
わたしの視界が揺れる。
勝者。わたしのことだ。
わたしは地面に倒れたままだ。
立ち上がれない。勝ったのに……絶望。
砂時計から気がそれていた。相手はちゃんと見ていた。
まだ、大丈夫だ。次はちゃんと負ける。
いつも読んでいただきありがとうございます!
誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。
とても助かっております。
楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。
それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




