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戦場帰りの魔法少年  作者: 朝山 みどり


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15/20

15 ルールと名誉


勝ち抜き戦二回戦は、今日の午後から行われる。


全部で四回。第四試合が目玉だ。


朝まだ観客がまばらな時間に、闘技場へ巨大な木枠が運び込まれた。


砂を踏みしめる音。

滑車のきしみ。

兵士たちの掛け声。


「そこだ、もっと右だ!」

「競技者の目線に合わせろ!」


やがて、それは闘技場の隅――だが誰からもはっきり見える位置に設置された。


巨大な砂時計。


そして高さは、ちょうど砂の上に立つ競技者の視線と揃えられていた。


観客席がざわめく。


「なんだあれ?」

「飾りじゃねえな」

「時間制限か?」


試合開始まえ、係官が中央に立ち、声を張り上げた。


「本日より勝ち抜き戦の規定を一部変更する!」


ざわり、と空気が動く。


「試合開始と同時に、この砂時計をひっくり返す!砂が落ち切るまでは、いかなる理由があっても降参は認められない! なお、降参する場合、『降参』とはっきり言葉で意思を示す必要がある」


一拍の沈黙。


次の瞬間、庶民席が爆発した。


「おおおおお!」

「いいぞ!」

「それでこそだ!」


酒が跳ねる。

串肉が振り回される。


「さっさと手ぇ上げて終わり、は無しだってよ!」

「逃げ場なしだ!」


下段は大喜びだ。

先日の同時降参――あの滑稽な一幕が、まだ記憶に新しい。


「あれは笑えたけどな」

「笑えたけど、物足りねえよな」


一方、上段――貴族席。


絨毯の上で、静かな視線が交錯する。


「……やはり、決まりましたか」

と侯爵が低く言う。


公爵が首を振る。

「庶民の機嫌取りですな」


王太子が公爵に向かって

「機嫌取りではない」

「秩序の維持だ」

静かな声。

だが断定だった。


「戦う前に両手を上げる貴族を、何度も見せるわけにはいかぬ」


その言葉に、何人かが目を伏せる。


「砂が落ち切るまで、最低限は戦え、ということか」

「命の保証はないな」


「当然だ」

と王太子は淡々と言う。

「血を見せるのが我らの役目だ」



庶民席では、早くも賭けの声が飛び交っている。




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