15 ルールと名誉
勝ち抜き戦二回戦は、今日の午後から行われる。
全部で四回。第四試合が目玉だ。
朝まだ観客がまばらな時間に、闘技場へ巨大な木枠が運び込まれた。
砂を踏みしめる音。
滑車のきしみ。
兵士たちの掛け声。
「そこだ、もっと右だ!」
「競技者の目線に合わせろ!」
やがて、それは闘技場の隅――だが誰からもはっきり見える位置に設置された。
巨大な砂時計。
そして高さは、ちょうど砂の上に立つ競技者の視線と揃えられていた。
観客席がざわめく。
「なんだあれ?」
「飾りじゃねえな」
「時間制限か?」
試合開始まえ、係官が中央に立ち、声を張り上げた。
「本日より勝ち抜き戦の規定を一部変更する!」
ざわり、と空気が動く。
「試合開始と同時に、この砂時計をひっくり返す!砂が落ち切るまでは、いかなる理由があっても降参は認められない! なお、降参する場合、『降参』とはっきり言葉で意思を示す必要がある」
一拍の沈黙。
次の瞬間、庶民席が爆発した。
「おおおおお!」
「いいぞ!」
「それでこそだ!」
酒が跳ねる。
串肉が振り回される。
「さっさと手ぇ上げて終わり、は無しだってよ!」
「逃げ場なしだ!」
下段は大喜びだ。
先日の同時降参――あの滑稽な一幕が、まだ記憶に新しい。
「あれは笑えたけどな」
「笑えたけど、物足りねえよな」
一方、上段――貴族席。
絨毯の上で、静かな視線が交錯する。
「……やはり、決まりましたか」
と侯爵が低く言う。
公爵が首を振る。
「庶民の機嫌取りですな」
王太子が公爵に向かって
「機嫌取りではない」
「秩序の維持だ」
静かな声。
だが断定だった。
「戦う前に両手を上げる貴族を、何度も見せるわけにはいかぬ」
その言葉に、何人かが目を伏せる。
「砂が落ち切るまで、最低限は戦え、ということか」
「命の保証はないな」
「当然だ」
と王太子は淡々と言う。
「血を見せるのが我らの役目だ」
庶民席では、早くも賭けの声が飛び交っている。
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