モンスターの死体が『円』に換金できるスキルを得たので、ダンジョンに潜って借金1億円を1日で完済してみた。ついでに日本の国家予算も俺が支えることになりそうです
借金を返すためにダンジョンに潜ったら、とんでもないスキルが覚醒しました。 頭を空っぽにして、通帳の桁が増えていく快感をお楽しみください。
「明日の正午だ。それまでに一億二千万、耳を揃えて返せなきゃ……わかってるな?」
電話の向こうから聞こえるのは、ドスの効いた低い声。 俺、金田満は、乾いた唇を舐めて「……はい」とだけ答えた。
通話終了の音が、死刑宣告のように響く。
友人の連帯保証人になったのが運の尽き。友人は飛び、残されたのは俺と、利息で膨れ上がった一億二千万の借金だけ。 内臓を売っても足りない。マグロ漁船に乗っても追いつかない。
残された道は一つ。 一発逆転の聖地、ダンジョンだけだ。
「死ぬか、稼ぐか……シンプルでいいじゃねえか」
俺は震える足で、新宿ダンジョン(Fランク)のゲートをくぐった。 装備はホームセンターで買った安全靴と、バール一本。これで死ねば、それはそれだ。
薄暗い洞窟に入って数分。緑色の小鬼、ゴブリンが現れた。
「ウギャッ!」
飛びかかってくるゴブリン。俺は死に物狂いでバールを振り下ろした。 鈍い音と共に、ゴブリンが動かなくなる。
はあ、はあ、と荒い息を吐いた、その時だった。
『――固有スキル【即時換金】が発現しました』
脳内に無機質な声が響く。
『対象:ゴブリンの死体。換金しますか? YES / NO』
換金? 魔石を取り出すんじゃなくて? 俺はわけもわからず、念じてみた。 (……YES)
シュンッ! 目の前のゴブリンの死体が、光の粒子となって消滅した。 同時に、ポケットの中のスマホが「ピロン♪」と軽快な音を立てる。
通知画面を見て、俺は目を疑った。
【大和銀行:入金のお知らせ】 お振込:¥5,000 振込人:ダンジョン
「……は?」
通常、ゴブリンの魔石は一個五百円だ。 だが、このスキルは「死体丸ごと」を換金するらしい。肉も、骨も、装備品も、全てを最高レートで日本円に変えて、口座に直接ぶち込む。
つまり、通常の十倍の効率。 しかも、解体の手間も、持ち運ぶ重さもゼロ。
「……これ、いけるぞ」
俺の目から、恐怖が消えた。代わりに宿ったのは、¥(エン)マークだ。
そこからは、ただの作業だった。
「ウギャ!」(ピロン♪) 【¥5,000 GET】
「グルァ!」(ピロン♪) 【¥8,000 GET】
バールを振るうたびに、スマホが鳴る。 他の探索者が「魔石袋がいっぱいだ、一度帰還しよう」と引き返す中、俺は手ぶらで突き進む。 インベントリ容量など関係ない。俺のインベントリは、銀行のサーバーだ。
三層、四層と深く潜るにつれ、金額は跳ね上がっていく。 オークを倒せば三万円。オーガを倒せば十五万円。
アドレナリンが脳を焼き、疲労など感じない。 俺はダンジョンの生態系を破壊する勢いで狩り続けた。
そして、運命の出会いは訪れた。 通路の奥で、プラチナ色に輝くスライムが震えている。希少種、プラチナ・スライム。
「……ボーナス確定演出かよ」
逃げようとするそれを、俺は全力のタックルで壁に押し付け、バールで粉砕した。
『対象:プラチナ・スライム(希少種)。換金しますか?』 (YESッ!!)
ピロリン、ピロリン、ピロリロリンッ!! スマホが聞いたこともない確変音を奏でる。
【大和銀行:入金のお知らせ】 お振込:¥50,000,000
「ご、五千万……!」
震える手で銀行アプリを開く。 朝、数百円しかなかった残高の桁が、バーコードのようになっていた。
残高:¥138,450,000
「……終わった」
俺はバールを投げ捨て、その場に大の字に寝転がった。 ダンジョンの天井が、一万円札の柄に見えた。
翌日の正午。 俺は指定された闇金融の事務所にいた。
革張りのソファには、社長の権藤がふんぞり返っている。周囲には怖そうな男たちが四人。完全に脅しの布陣だ。
「おう、時間だな。金は用意できたんだろうなぁ?」
権藤がニヤニヤと笑う。どうせ無理だと決めつけている顔だ。 俺は無言でスマホを取り出した。
「ネットバンキングで送ります。口座番号は変わってませんね?」 「あぁ? 送るって……一億だぞ? 振込限度額って知ってるか?」 「法人契約の即時決済にしてあるんで、大丈夫です」
俺は淡々と画面をタップする。 指先一つで、億の金が動く。
(送金、実行)
数秒後。 権藤の懐で、スマホが震えた。
「あん? ……なっ!?」
画面を見た権藤の目が、飛び出さんばかりに見開かれる。 事務所の空気が凍りついた。
「い、一億二千万……!? き、きさま、どこでこんな金を! 強盗でもしたか!?」 「いえ、ちょっとダンジョンでゴミ拾いを」
俺は立ち上がった。 用は済んだ。ここに長居する理由はない。
「あ、そうだ権藤さん」 「な、なんだ」 「迷惑料として、百万ほど色をつけておきました。それと――」
俺は出口で振り返り、ニッコリと笑って告げた。
「今日の稼ぎがまだ余ってたんで、さっき不動産屋に電話して、このビルごと買い取っておきました」
「……は?」
「来月から大家は俺です。家賃、滞納しないでくださいね? ……出ていくなら、敷金は返しますけど」
ポカンと口を開ける権藤と、ざわめく組員たちを残し、俺は事務所を後にした。 背後で「社長! オーナーが変わったって電話が!」という悲鳴が聞こえたが、もう俺には関係ない。
後日談。
借金を完済しても、俺はダンジョンに潜り続けた。 一度味わった「即時換金」の快感は、何物にも代えがたいからだ。
俺が潜れば潜るほど、ダンジョンの魔物は減り、日本の治安は良くなり、俺の口座残高だけが天文学的に増えていく。 あまりのハイペースな入金に、ついに政府が動いた。
ある日、俺の豪邸(現金一括払い)に、総理大臣がやってきたのだ。
「金田くん! 頼む! 君のそのスキルで、日本の経済を回してくれ!」
総理が言うには、俺が稼ぎ出す外貨(魔石換金による円の価値上昇?)が凄すぎて、もはや俺が働くのをやめるとGDPが傾くレベルらしい。
「いやぁ、そう言われましても。今は悠々自適に暮らしたいんで」 「消費税を廃止する! 君だけの特別免税権も与えよう! だから頼む、あと一兆円分だけ狩ってきてくれ!」
一国のトップが土下座する姿に、俺はため息をついた。
「……仕方ないですね。じゃあ、サクッと国家予算分くらい稼いできますか」
俺はスマホとバールを手に取る。 さて、今日も稼ぎに行きますか。
ピロン♪
【¥5,000 GET】
俺の通帳の桁が溢れるのは、まだ先の話だ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
主人公の金田くんはこの後、日本の借金を全て返済し、世界中のダンジョンを買い占めるオーナーになりました。
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