第一章第二段:運命の始まり
第二章では、コンティの日常の一コマが描かれます。
小さな観察者として螞蟻の行列に目を向け、母との会話を通して優しさや思いやりを学ぶ――
しかし、日常の穏やかさの陰には、静かに忍び寄る運命の影がちらりと顔を出します。
午後の柔らかな日差しが家の中に差し込み、空気にはパンの香りが漂っていた。
コンティはソファに座り、小さな体を少し前傾させ、壁をゆっくりと這うアリの列に集中して目を向けていた。
手には半分のパンを持ち、口で咀嚼しながら、忙しそうに動く小さな生き物たちを観察する。
そのアリたちは決められた道筋を進み、まるで秩序だった儀式を行っているかのようだった。
コンティの目には、彼らが自分だけの小さな世界を持っているかのように映る──静かで勤勉、そして言葉にせずとも伝わる規律を持っている。
キッチンから顔を覗かせた母親セリーナは、その光景を見て思わず微笑んだ。
手の水滴を拭いながら、彼女は近づき、そっとコンティの頬をつまむ。
「ねぇ、何を見ているのかな?」
口にパンを含んだまま、コンティはあどけない声で答える。
「……壁のアリを見てるの」
小さな手でソファの肘掛けを軽く叩き、目の端で母親をチラリと見て、承認を求めるように。
「それで、アリたちはどう思う?」
セリーナはかがみ込み、柔らかい口調で言った。
「とっても仲良しだね!ママ見て、ちゃんと列を乱さず、一匹も脱落してないよ!」
コンティはパンくずのついた指を伸ばし、小さなアリの列を指で示す。
「それはね、アリたちも家族だからだよ」
セリーナは微笑み、「アリのお母さんは子どもを守るの。ママがあなたを守るのと同じよ」と言った。
「人間も同じよ。同じお母さんから生まれたわけじゃなくても──でも、みんな家族なんだ。だからコンティ、これからは人をいじめちゃだめよ」
コンティは数秒考え、うなずいた。「わかったよ、ママ」
「ふふ、私の宝物は本当に賢いね」
セリーナは優しく彼の髪をなで、立ち上がる。「さあ食べようね、あとで学校で入学手続きをしないといけないから」
コンティは最後の一口のパンをかじり、満面の笑みを浮かべた。「やっと新しい友達ができる!」
期待に満ちたその顔を見つめながら、セリーナは一瞬、優しい不安を浮かべた。
そして振り返り、キッチンへ戻った。
壁のアリたちはすでにいなくなり、僅かに残った陰影の中で、まだ息絶えぬ仲間をかじる数匹のアリがいた。
太陽は高く昇り、街は人の声で賑わい、空気には埃とパンの香りが混ざっていた。
「ママ……置いてかないでよ!」
コンティは息を切らし、ランドセルを引っ張りながら母親の歩みに必死で追いつこうとする。
セリーナは立ち止まり、かがんでそっと頭を撫でた。「ごめんね、小さな宝物、ママちょっと早く歩きすぎたかな?」
「ふん!お菓子をくれないなら、ママを許さない!」
コンティは見上げ、両手を腰に当て、顔を風船のように膨らませた。
「まぁまぁ~許さないの?じゃあ夕食にはデザートなしよ~」
セリーナは軽く笑った。
コンティは慌てて駆け寄り、彼女の腕に飛び込む。「許すよ、ママ!お菓子取らないで!」
「はいはい、冗談よ」
彼女は優しく髪を撫で、「後でアイスクリームを買いに行こうね、いい?」
「本当!?」
コンティの顔が一気に輝き、「チョコとイチゴがいい!」
セリーナは笑って手を握り、二人は歩き続けた。
街角の日差しが二人の背中を照らす──思わず残しておきたくなる温かさだった。
学校の門は高く、鉄製の門には金色の紋章が輝いていた。
「ママ、ここ大きいね!これから僕の学校になるの?」
コンティは見上げ、その目には純粋な光が宿っていた。
「そうよ、コンティ。ここがあなたの新しい学校」
セリーナはうなずき、柔らかくも確かな口調で言った。「これからもう引っ越さないわ。しっかり勉強して、たくさん友達を作るのよ」
コンティは笑顔を輝かせた。「絶対にするよ!」
二人は事務室に入った。
「すみません、どなたかいらっしゃいますか?入学手続きをしたいのですが」
セリーナは礼儀正しく声をかける。
しばらくして、眼鏡をかけ、書類を抱えた若い女性が出てきた。
「お待たせしました~このお子さんですか?」
コンティは恥ずかしそうに母の後ろに隠れ、丸い目だけを見せた。
「ほら、コンティ、先生に挨拶しなさい」
コンティは緊張して拳を握り、小さな声で言った。「こんにちは……僕、コンティ・ヴァレンです」
「こんにちは~私はエヴリン・デュケ、エヴリン先生って呼んでね」
その声は春風のように優しかった。
セリーナは微笑み、書類を差し出す。整った筆跡で三つの名前が書かれていた:
コンティ・ヴァレン
セリーナ・ヴァレン
ルシアン・ヴァレン
エヴリンは確認して顔を上げ、笑った。「これで大丈夫ですよ、ヴァレンさん」
「セリーナで大丈夫です」
彼女は礼儀正しい微笑みで返した。
手続きが終わり、母子は別れを告げて外へ出た。
陽光はちょうどよく、暖かい風が吹く──全てが穏やかで幸せそうだった。
「ママ~アイスクリーム買える?」
「うん、行こう~」セリーナは軽く笑った。
「やった!イチゴとチョコ!」
母子は長い列の最後尾に並ぶ。
「長いなぁ……もう寝ちゃいそう~」コンティはだらりと不満を漏らす。
「もう少し待ってね~すぐ順番が来るから」
ついに店主が二つのアイスを渡す。
母子は日陰に座り、コンティは嬉しそうにイチゴ味を舐めた。
すると店内から焦った声が聞こえた。
「チョコはもうないの?ああ……仕方ない、ありがとう」
金髪で澄んだ青い瞳の少女が店から出てきた。
陽光が彼女の横顔を柔らかく照らす。
コンティは小さくつぶやく。「ママ、あの姉さん、かわいそう……」
セリーナはうなずき、優しく言った。「そうね……助けてあげる?」
コンティは数秒迷い、手のアイスを握りしめる。
「でも……これは僕の……」
「大丈夫、分け合うのは幸せなことよ」
セリーナは微笑む。
コンティは深く息を吸い、顔を上げた。「じゃあ、分けてあげる!」
母子はその少女のもとへ歩み寄った。
「えっと……これ、アイス。まだ食べてないなら……嫌じゃなければ……どうぞ……」
少女は驚き、目を輝かせた。
「本当にいいの?ありがとう……」
「僕はコンティ、コンティ・ヴァレン!」コンティは名前を力強く言う。
セリーナも笑顔で言った。「私はセリーナ・ヴァレン、セリーナでいいのよ」
「私はセリア・レイン!」少女は笑顔で答えた。「ありがとう、本当に嬉しい」
三人は店外の日陰で座り、アイスを食べながら話した。
甘さが口に広がり、陽光が降り注ぐ。時間が一瞬止まったようだった。
セリアはアイスを食べ終わり、数枚の硬貨を差し出した。
「このお金、受け取って。おごってもらったけど、私も払いたい」
「いいのよ~」セリーナは手を振り笑った。
「本当にいいの!」コンティも続けた。
セリアは深くお辞儀をして笑った。「ありがとう」
セリーナとコンティは見つめ合い、笑った。
街灯が徐々に灯り、柔らかな光が彼らの顔を包む。
──その瞬間、誰も知らないが、運命の歯車は静かに動き始めていた。
夜が少しずつ訪れる。
街にはまだ人の声があるが、光は徐々に薄れていく。
暗い路地で、かすかな足音が聞こえる。
黒いローブをまとった老人がよろめきながら進む。
慎重に動くその後ろで、低い獣の咆哮と金属がぶつかる音が聞こえるが、まだ遠く、夜に和らげられていた。
老人はある光景に気づき、突然立ち止まり、壁にもたれて周囲を見回す。
息は落ち着き、重く、しかし慎重だった。
彼はすぐに逃げず、まず待ち、観察した。
影の中の姿と街灯が交錯し、一層の神秘を醸し出していた。鞥
遠くで、時折子どもの笑い声が聞こえる。
その笑い声は、希望のようであり、運命の反響のようであり、夜の沈んだ空気と対照をなしていた。
「私の小説を読んでくれて、気に入ってもらえたら嬉しいです。読んでくれてありがとう!」




