グリーンフィールド(3)
「2人とも帰ったぞ~」
そういいながら家のドアを開けたがレイラとアミルの姿は見えない。まったくこんな夜遅くになんで外出しているんだよ。危ないだろ。そう思いながら家の隅に畳んで置いている毛布を取りにいく。毛布を手に取ると、毛布の中から一枚の紙が床に落ちた。レイラがどこに行くか俺に知らせるための書置きだろう。そう思い俺は紙を拾い読んだ。
「ーーー女と子供は預かった。。女と子供を返してほしければこの場所に4時までに来い。ーーー'影の群れ'アグリッカヴァル支部」
なんだよこの手紙は。地図に描かれている指定された場所は街の中ではなく周りには農地と物置小屋しかない場所だ。影の群れがどんな組織か知らないがレイラとアミルを助けるためにはいくしかないよな。そう思った俺は家を飛び出しグリーンフィールドに向かって飛んで行った。
地図に指定されていた農地と物置小屋しかなく人気のない場所についた。レイラとアミルはどこだ?そう思いあたりを見まわしていると一軒の物置小屋の扉が開いた。
「待っていたぞ。トリス」
そういって物置小屋から出てきたのは髭の生えた体の大きな男だった。身長は2mくらいあるように見え腰には剣を付けている。攻撃されないか警戒している俺に向かって男は話かける。
「そんなに警戒するな。俺たちはお前の力を貸してほしいだけだ。ドラゴンを倒した英雄のあんたにな」
「俺がドラゴンを倒したことを知っててここに呼び出したのか」
「当然だ、あんたは俺らに協力してくれる」
この男は何者なんだ?レイラとアミルは無事なのか?
「レイラとアミルは無事なんだろうな?」
「無事さ、2人とも出てきていいぞ」
そう男が言うと男が出てきた小屋とは違うところのドアが開きそこからレイラとアミルが顔を出す。
「トリスごめんね。クロウさんに出てくるなって言われていたから」
「おじさんがどんな人か見たいって髭のおじさんがいってたからごめんなさい」
「ほら、無事だろ?」
そういうと男は俺の方に歩いてきて肩に手を置いてきた。
「遅くなったが俺の名前はクロウだ。とりあえず小屋の中に入れ」
「小屋の中に入って何をするんだよ。それを教えてくれないお前みたいな得体のしれない男と小屋には入れない」
「'影の群れ'について教えてやる」
そういいクロウはレイラとアミルのいる小屋の中に入っていった。俺は警戒しながらクロウの後をついていった。小屋の中は思ったより広く3人くらいでなら普通に暮らせそうだ。アミルはクロウの物であろうジャイアントベアーの置物を持ちレイラと遊んでいる。クロウは椅子に座り俺も椅子に座るよう促す。俺はクロウに言われたように椅子に座るとクロウは話を始めた。
「何から話せばいいのか分からないがそうだな。まず俺もお前と同じ指名手配犯だ」
クロウの口からでた言葉は俺の予想を上回るものだった。影の群れについて教えてくれるといったからついてきたら俺も指名手配犯だって無茶苦茶じゃないか。話を理解しようと必死に頭を働かせている俺に向かってクロウは話すのをやめない。
「俺はお前が倒したドラゴンを王国に連れてきた罪で指名手配されている。だが俺はそんなことをしていない。冤罪なんだ!」
「それなら俺も国宝を盗んでなんかいないけど...」
「やはりお前もそうか」
そういうとクロウは俺に紙を一枚渡してきた。
「クロウ、これはなにだ?」
「それは'影の群れ'の入隊用紙だ!」
渡された紙を見ると大きな文字で'影の群れ'入隊希望書とでかでかと書かれている。この紙の出来の悪さに唖然としていると俺なんて気にせずクロウは話し続ける。
「それにサインしてくれたらお前もめでたく'影の群れ'の一員になることができるぞ!」
「'影の群れ'の一員になれるぞってまずこの組織の目的は何なんだよ!」
そういうとクロウは目を丸くしながら
「話していないっけ?'影の群れ'は王国の冤罪をなくすため、己の無実を証明するために活動している組織だ!」
「なんのための組織かは分かったが具体的には何をしているんだ」
「指名手配を実行することができるのは上流貴族だけというのはお前も知っているだろう。冤罪が生まれているのは上流貴族がしたことを下の立場である俺たちになすりつけているのではないかと俺は考えている。俺たちに罪をなすりつけた上流貴族を暴き罪を償わさせるのが俺たちの活動だ。
熱く組織について語ってくれたクロウは俺の目を黙って見つめてくる。サインしろと圧をかけるのはやめてほしい。なかなかサインを書かない俺にシビレを切らしたのかクロウは俺の持っていた入隊用紙を取り上げ何かを書いている。そして何かを書き終えたクロウはレイラとアミルの方へ行き
「レイラ君、アミル君、トリスは'影の群れ'一員になってくれたよ。君たちもなるかい?」
「トリスが入ったなら私も入ろうかな」
「おじさんと一緒の組織に入れるならなる!」
なに勝手に俺を組織に入れているんだ。そう文句を言うために立ち上がるとクロウはすごいスピードで俺のところまできて口をふさいだ。
「トリス、お前あの二人に貴族だってこと話していないんだろう?黙っててほしかったらお前も黙って'影の群れ'に入れ!」
貴族であることがバレてしまうとせっかく仲良くなったレイラとアミルとの絆にひびが入ってしまうかもしれない。そう思い俺はおとなしく'影の群れ'の一員になることにした。
「クロウ、わかったよ入るよ組織に!」
「うれしいぞトリス!」
クロウは俺を思いっきり抱きしめる。力が強すぎて体が痛いんだけど...
「トリスが入ったおかげで'影の群れ'のメンバーが3人になった!」
「えっ?3人...」
「あ、レイラ君とアミル君もいるから5人だな!」
クロウのテンションの高さにつられてレイラとアミルも一緒にクロウと一緒に騒いでいる。こうして'影の群れ'の3人目のメンバーになったらしい。
俺達が組織に加わることへの興奮が収まったクロウは俺に向かって最初の任務を伝える。
「トリス、さっそくだが俺と一緒に街の酒場にきてもらう。そこにもう1人のメンバーがいる。」
「けどさクロウ、お前も俺も指名手配犯なんだろう?街の酒場なんていう人の集まる場所に行っても大丈夫なのか?」
「それなら心配ない。王国から届いた手配書は街の一番大きな酒場に掲示するというルールがあるんだがグリーンフィールドの酒場のオーナーとは長い付き合いでな。俺の分も、当然お前の分の手配書も掲示せず裏に隠してもらっている。まあ心配するな」
そう言ってクロウは小屋の扉を開けてまだ薄暗い農道を歩いて行った。俺はレイラとアミルにここで待っているよう伝えクロウの後を追いかけた。