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指名手配犯の俺とアミル  作者: ひひ
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グリーンフィールド

アミルとレイラと一緒に暮らし始めて1か月が経とうとしていた。俺たちは俺とアミルが初めて出会った家を周りの木材で少し修復して雨風だけはしのげるようにした。そんな狭い家で3人で暮らしており今はレイラの訓練をするためにレイラとアミルが川で必死に体幹を鍛えている。俺はそれを眺めながらレイラにアドバイスを送る。


「レイラ!もっと重心を低くしないと体幹は強くならないぞ!」

「これでもダメなの!?」

「最初に比べたらだいぶ良くなったけどまだ低いぞ!」


俺は能力をどうやって身に着けたか覚えていない。だが王国の学校でこのような訓練をした覚えがある。そんなかすかな記憶を頼りにレイラの能力の覚醒を指導していた。


「お姉ちゃんこれくらい腰を落とせば安定するよ!」


そういいアミルは流れる川の上流の方へ歩き始めた。アミルの潜在能力は恐ろしく俺には及ばないもののそれに近いスピードで川の上流へ進んでいく。


「何事もやっぱり基礎が大事だからな。まずはどのような状況でも安定して立ったり歩いたりできるようにならないと」

「ねえなんでアミル君はできるの!私の先にいかないでよ!」


そんな訓練している2人を見ていると指名手配されていることなんて忘れてしまいそうになる。王国に帰ることができたら地理情報隊のみんなに外の世界にはこんな人たちがいてとても楽しく生活できたと自慢してやろう。貴族の中でも仕事以外で王国から出入りすることができるのは上流貴族の一部のみだ。みんな羨ましがるだろうな。そんなことを考えていると空は茜色になっていた。


「もう夕方だ。2人ともお疲れ様」

「やっとおわったよー」


レイラはそういうと川から出てあらかじめ焚いておいた火の近くに行き温まっている。アミルはさっきまでずぶ濡れだったはずなのにもう体に水滴はついていない。


「アミルは体拭いたのか?えらいな」


そういい俺は川のそばにいたアミルのそばに行き頭をなでる。アミルは照れているのか火を見ているのかわからないがこっちを見てくれない。俺が嫌われているってことはないよな?そんなことを思いつつ俺達は家に帰っていた。その帰り道のことだった。


「誰か助けてー!!」


大きな声で誰かが叫んだ。それを聞いたレイラが一目散に声の方向へ走っていく。


「おいまてよレイラ!」


そう叫んだ俺はまたアミルを抱きかかえながらレイラの後を追う。このままじゃまたレイラが危険な場所に一人で行ってしまう。そう思った俺はアミルにある提案をした。


「おいアミル!今から風使って加速するけど大丈夫か?風を集めるのに片手使うから落ちるけも知れないけど」

「僕も毎日鍛えてきたからね!おじさん大丈夫だよ!」

「それを聞いて安心した!」


そういうと俺はアミルを片手で抱きかかえもう片方の手で周囲の風を集め始めた。この間より風が強いので集まるスピードも速い。というか予想以上に集まってしまった。


「アミル!加速するんじゃなくて少し空飛ぶかも!つかまれよ!」


そういうとアミルの返事を聞くこともなく俺は集めた風を一気に放出した。


「疾風走!」


そういうと俺が放出した風は周りの木をえぐりながら俺とアミルを空に放り出した。空からなら森が良く見える。ギリギリまだ太陽が森を茜色に照らしてくれている。その間にレイラを探さないとめんどくさいことになる。


「おじさん!あそこ!」


アミルが指をさした方角にはレイラと茶色い生物が見える。


「レイラがまたなにかに襲われそうじゃないか!」


俺は方向転換のためにレイラの方角に向かって風を放出し空からレイラのそばまで行った。そしてすんなり着地を決め肩を確認する。


「アミルよく落ちなかったな!すごいぞ」

「おじさんが片手を添えてくれてたからだよ」


そういうとアミルは俺の肩から飛び降りる。アミルの能力の高さには驚かされる。コイツは俺が居なくても一人であのボロボロの家で暮らせて行けたんじゃないかと思ってしまう。


「なに2人とも呑気なこと言ってるの!前見て前!」


そう言われて前を見ると茶色毛並みをもった巨大な熊と木の上にいる少年を見つけた。少年は草を入れたバスケットを大事に持ちながら木の枝の上にバランスよく座っている。歳は10歳くらいに見える。


「ジャイアントベアーか。このあたりの地域には住んでいないはずなんだけどな。」

「トリス!早く助けてあげなよ!」

「大丈夫。ジャイアントベアーはおとなしい熊だ。きっとその君が持っている草が欲しくておっかけているんだろう。その草を落とせば大丈夫だ!」


少年には悪いが草はまた明日採り直してもらおう。それが今とれる一番安全な策だと思う。俺がジャイアントベアーを吹き飛ばすこともできるがそれは可哀想だしなにより、今日の俺は調子が良すぎるせいで木の上の少年ごと辺りを吹っ飛ばしてしまいそうだからだ。そう考えていた俺だが少年はなかなか草を落とさない。


「草を落とせば君は助かる。早く落とすんだ」

「この薬草は絶対渡せない!すぐに使わないといけないんだ!」

「そんなこといってると温厚なジャイアントベアーも君に攻撃し始めるぞ!温厚といっても人に危害を加える可能性がないわけではない!」

「でも...だって...」


そうこうしているうちにジャイアントベアーは木に登ろうとしはじめた。こうなったら加減してジャイアントベアーを吹き飛ばすしかない。そう思い周囲の風を集め始めたとき


「おじさんまって!この子はお腹がすいてるだけなんだよ」

「アミル危険だ!早く離れろ!」

「アミル君にげて!」


俺とレイラの言葉を無視してアミルは手に持っていた大量のきのみをジャイアントベアーの前に広げた。俺はアミルが襲われたときのことを考え周囲の風を維持しておりレイラも戦えそうな体勢でいるようだった。しかしそんな俺とレイラの心配は杞憂に終わった。


「やっぱりそうだ。お腹すいてたんだよね!」


ジャイアントベアーはアミルの言う通り腹がすいてただけなのか木の上の薬草には興味をなくしアミルが広げたきのみの方に行きおいしそうに食べている。


「お腹すいてたら少し怖くなっちゃうよね~」


そういいながらジャイアントベアーの頭をアミルは撫でている。そんなアミルを見てレイラは襲われないか心配みたいな顔をしている。


「木の上にいる子!とりあえず今は安全だから降りてきな!」

「う、うん!」


木の上にいた少年は7mはある枝の上から飛び降りてこちら側に走ってきた。この森で出会うやつらはアミルといいこの少年といい身体能力が高くないか。この子はともかくこの間4歳になったといっていたアミルは特におかしい。


「助けてくれてサンキューな、アミルだっけ?」

「うん、そうだよ!君は?」

「俺はモル!」


アミルとモルという少年はすぐに仲良くなり楽しそうにおしゃべりしている。そんな2人をみている俺とレイラは他人からみるとこ2人の両親にしか見えなかっただろう。先程まで森を茜色に照らしていた太陽は沈み辺りはすでに暗くなっていた。


「ねえトリス。もう暗いしまたジャイアントベアーに襲われたら危ないから家に帰ろうよ」

「そうだな。さっきはジャイアントベアーだから無傷で済んだが野盗と遭遇したりしたら無傷じゃすまないだろうしな」


こんな会話をしていると前を歩いていたモルは突然足を止めた。


「そうだよ!こんなとこでアミルと楽しくっしゃべっている場合じゃないんだ!はやくグリーンフィールドに帰らないと」

「グリーンフィールドに帰るって...あなたグリーンフィールドから来たの?」

「そう!時間がないから早く帰らないと!」


焦って走り始めたモルを俺は風を使いこちらに吹き飛ばした。吹き飛んできたモルをキャッチし落ち着かせる。モルは急に強い風が吹き飛ばされたことに驚いているがそんなのお構いなしの俺はモルに語り掛ける。


「モルっていったかな?君が急いでいる理由が何か知らないがこの森の夜は危険だ。グリーンフィールドへは明日の朝一番に俺達で連れていく。だから今日は俺たちの家に来ないか?」

「急いでるんだよおっさん!早く放してくれ!」


俺に腕をつかまれているので俺の手を必死に引き離そうとモルは暴れている。仕方ないので俺はモルを抱きかかえて無理やり家の方角に歩き始めた。モルはなにか俺に向かって放せとずっといっていたが家についたとき

には疲れたのか寝ていた。アミルも途中で疲れたといいレイラに抱っこしてもらったまま寝ていた。


「レイラやっと家についたな」

「もう疲れたよ~」


疲れたレイラはアミルを家の中にある毛布の上に置くとそのまま横に寝転がってスースーと寝息をたてていた。


「みんな疲れてたんだな」


寝ているモルを毛布の上に置きレイラに余っている最後の毛布を掛けた後俺はドアにもたれかかって眠りについた。

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