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指名手配犯の俺とアミル  作者: ひひ
2/8

出会い

どれくらい歩いただろうか。俺は太陽の光が少ししか差し込まないほどの木々に囲まれ森の中を彷徨っていた。そんな森の中を歩いていると木々の間から開けた土地が見える。あそこになにか建物があれば当分そこに隠れよう。そう思い開けた土地まで風に乗って走って行った俺だったが口を開けて固まってしまった。開けた土地には4件も建物が立っている。4件の建物はどれもボロボロでいたるところに穴が開いている木造の家だ。貴族出身である俺はこんなボロボロの家を見たことがなかった。地理情報隊として派遣されるのは大きな街しかなかったのでこの時初めてこんなボロボロの家を見た。俺はボロボロの家を初めて見て固まっていた。


「おじさん誰?」


ボロボロの家の近くにいた小さな痩せている男の子に俺は気づかなかった。森の中を歩き続けていたので今が何時かわからないが間違いなく昼は過ぎているだろう。隊長の話によると昼には俺は指名手配されるらしい。そうなると俺は現在指名手配中であり人に見つかってはいけない。そんなことを考えていると男の子は俺が話さないのでさらに話しかけてきた。


「おじさんなんで黙ってるの?話せないの?」


幸いまだこの子は俺が指名手配されている男だと知らないらしい。安心しながら俺は名乗った。


「俺の名前はトリス。訳あってここにきたんだけどここはなんていう村なんだい?」


地理情報隊隊員として働いていた俺は普通の人より地理に強い自信がある。現在の位置さえわかれば潜伏する場所を考えることもできる。このような考えは男の子の次の言葉で消えることになる。


「僕もしらないよ。ママとパパと違うところで暮らしてたけど逃げてここにきたの。教えたからご飯食べさせて!」


思ってもいない返答が返ってきてまたしばらく固まってしまったがすぐ冷静を取り戻し


「パパとママはご飯作ってくれないの?」

「パパとママはどこか行っちゃった。だからご飯食べさせて。」

男の子は明るかった顔を曇らせながら言った。痩せていたり服がボロボロなのは親が面倒を見ていないからと理解した俺は男の子に持ってきた携帯食料を渡した。



気持ちのいい光が家の隙間から俺の顔を照らした。俺が地理情報隊から離れて1週間がたった。それと同じく俺がコイツと出会ってからも1週間がたった。1週間コイツと生活していて分かったことは2つある。1つ目はコイツの名前はアミルということ。2つ目はアミルの夢は世界の端に行くっていうことだ。両親が帰ってくるまでの間飯の面倒だけでも見てあげようと思いここに滞在していたがこんな子供の面倒を見るのは指名手配されている身ではとてもじゃないができない。隣で寝ているコイツには悪いが俺はここから別の潜伏場所を探して自分の罪が冤罪だってことを証明する。ただこの状態で置いていくと罪悪感で俺がつぶれてしまいそうので食料の調達方法を書いたメモと余っていた携帯食料だけは置いていこう。そうして俺はメモのと携帯食料を置いてボロボロの家をあとにした。メモの最後にアミルの家も探してくると添えて。


アミルを置いて森の中をしばらく歩いていくと草原にたどり着いた。太陽の光が広がっている草原を温かく照らし、一面が輝く緑に包まれている。


「きれいな草原だな」


そう呟いた俺は広がる草原を眺めていた。


「ここでなにしてるの?」


突然後ろから声をかけられた俺は驚きながら振り返った。振り返るとそこには黄色のワンピースをきた小麦色の麦わら帽子を被る綺麗な女性が立っていた。手に持っているバスケットには色とりどりな草が入っている。


「聞こえてますか?」


そう女性に言われて俺は彼女に見惚れていたことが分かった。俺は冷静を取り繕いながら


「聞こえてる!聞こえてるよ!」


と早口で答えた。そんな俺を見て彼女は笑いながら言う。


「あなたこのあたりの人じゃないでしょ。どこからきたの?」

「俺はワコクからきた旅人トリスだ。よろしく」


サイレン王国は貴族しかいない国で今ここで貴族と名乗るメリットはない。貴族であるといってしまうと変に目立ってしまうからだ。そう考えた俺は地理情報隊での知識を活かして1週間前隊長と別れた街から一番近い都市であるワコク出身だと名乗った。すると女性は驚いた表情をしながら


「ワコクって知ってる!サムライって人たちの国なんでしょ?鎖国してるから一部の国以外の人はサムライの姿をみることはできないって聞いたことがあるけど私は会えた!ラッキー!」


そう喜ぶ彼女をみて罪悪感を感じながらも質問をした。


「名前はなんていうんだ?」

「私の名前はレイラ!この近くのグリーンウッドって村だよ。村まで案内してあげる。」


そういった彼女は俺の腕を強引につかみ持っているバスケットを揺らしながら走り出した。俺はそんな彼女の手を振りほどくことができないでグリーンウッド村まで連れていかれた。


案内されたグリーンウッド村につくと太陽は沈みかけており草原は太陽の光が辺りを照らしていた時と違い緑色の草が赤く見える。家はすべて木造だがアミルのいた家と比べてとてもきれいだ。レイラは嬉しそうに村の紹介をする。


「簡単にだけど村の説明するね。ここはグリーンウッド村!大体100人くらいの人が住んでるよ。そしてこの人が村を守ってくれてる衛兵さん!」


衛兵は俺にペコリとお辞儀をしてきた。少し太っていて頼りないが優しそうな青年だ。


「アミルはここで保護してもらったほうがいいな。」


そう呟いた俺にレイラは反応する。


「アミルって誰なの?トレスのお友達?」

「アミルはレイラと出会った森の中の家にいた小さな男の子だよ。俺は面倒を見ることができないからこの村で保護してもらいたくて。」

「あの森の中にいるの!?あの森は野盗がよく現れるって噂の森よ!はやくこの村に連れてきてあげないと!」


そういってレイラは持っていたバスケットを放り出し走り出した。衛兵に「行ってくる!」といいレイラを追いかける。風が草原の草を揺らす。その風はとても優しくそして不穏な予感を運んでくるかのようだった。俺とならんで走りながら


「この辺りには不穏な風が吹いている。君は村に戻ったほうがいい。」

「そんなこといってあなたがアミル君のところにいかないと可哀想だから私も行く。あなたと出会ったとこまできたわよ。早く案内して!」


日中レイラと一緒に歩いたときは長く感じた道のりも走るとあっという間だった。アミルのいた家から真っすぐ歩いてここに頼りついた。


「ここを真っすぐ進むとアミルの家だ!」


そう言って俺はレイラの前を走っていった。しばらくするとアミルと1週間過ごしたあのボロボロの家が見えてきた。


「アミル無事か!」


そう言って勢いよくドアを開けると暗闇の中座っているアミルがいた。アミルは俺の顔をみると泣きながら


「おじさん帰ってきてくれたの?ありがとう!」

「アミルどうしたんだその傷は」


俺に泣きついてきたアミルは腕に火傷、足に切り傷がそして手と足には何かに縛られた跡があった。


「おじさんが置いてくれてた手紙もご飯も全部怖い人たちに盗られちゃった。」


泣きながらこんなことを言う子供に気の利く言葉の一つも言ってやることができない自分に腹がたちながら


「手紙もご飯もいいよ。お前が無事でよかった。」


そうして俺はアミルを抱きしめているとようやくレイラが家にやってきた。


「アミル君無事だった?」

「怪我はしてるけど無事だ。さあ帰ろう。」


アミルを抱きかかえて俺はボロボロの家を後にし、グリーンウッド村に向かう。その道中俺はレイラに村のことをほとんど何も教えてもらってなかったことを思い出し暗い森の中を俺の持っていた携帯松明で明るく照らしながら話す。


「そういえばレイラはなんであそこにいたんだ?野盗が出る森の近くまで来るなんて危ないだろ。」

「あそこは昔死んじゃったお父さんによく連れてきてもらってたんだ。あそこからは広大な草原が良く見えるって。」

「あそこの景色綺麗だったもんな。」


そんな雑談をしながら歩いていると森を抜けた。もうそろそろ夜が明けるのか遠くの草が赤く見える。横にいたレイラが突然叫ぶ。


「あれ村の方角だわ!」


そういうとレイラは走って村に向かっていった。先程と違いアミルを抱えている俺はレイラに追いつけなかった。レイラが走っていったのをできる限り頑張って追いかけた。アミルは俺が走っていて揺れるのが心地いいのかぐっすり寝てしまっていた。そうして走っていると村についた。村は燃えており村の入り口には夕方挨拶してくれた少し太った衛兵が血を流しながら転がっている。


「レイラが危ない!」


俺は周囲の風を周りに纏いながらアミルを抱えて村の中に入っていく。村には建物があまりなく目立つものも少しほかの家より大きい民家しかない。


「大きい民家で事情を聞こう。」


そう呟き走り出す。走り出すとすぐに目指していた民家にたどり着いた。民家にたどり着くと大柄な男がレイラのワンピースを引っ張りながら目指していた民家に引きずり込まれていく。


「なにしてんだでかぶつ!レイラをさっさと放せ!」

「放せって言われて放すアホはいないよな?」


大柄な男は腰にかけていた剣を取り出しレイラを放した。男と今にも戦闘になりそうなときレイラが叫んだ。


「なんで逃げないの!村の入り口に死体があったんだよ!そんな村に関係ない君がどうして入ってくるの!」

「友達を守るのは俺の義務さ」


レイラと話していると大柄な男はすでにこちらに向かって走ってきていた。俺は落ち着いて男に問いかける。


「お前は一人でここにきたのか?」

「そんなわけないだろう?こんな大規模な略奪は複数人じゃないと無理なのは当たり前だろ!」

「そうか、ありがとう。斬風」


俺の周りにあった周囲の風が大柄な男の右腕を切り刻む。大柄な男の右手の親指が地面に落ちた。大柄な男の悲鳴が響き渡る。


「右腕の神経を傷つけた。左腕も同じようにされたくなかったら質問に答えろ。何人でこの村を襲った?」

「俺含め3人だ。2人は金品を本部に届けるためもう撤退した!」

「組織の名前はなんだ?」

「それだけは言えねえ。あの方は世界を変えてくれるんだ。」


情報を聞いた俺はレイラを保護しに行った。ちょうどレイラにたどり着いたとき左手で剣を持った大柄な男が襲い掛かってきた。


「まだ左手でお前を斬ることはできるんだよ大馬鹿野郎が!」

「斬風」


俺の後ろから大きなものが土の道に落ちる鈍い音が聞こえた。


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