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最強少女と天才青年の平和国建立  作者: 城乃コトミ
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出来損ないと呼ばれた王子

「はい、別邸にいらっしゃいますので、付いてきてください」

 エミリーは言われるがまま、メイドの後をついて行ったが、分からなかった。なぜバリュー王国の王子でもあろう人間が、自分の所へ来るのだろうかと。一応第一王女という名前が付いているけれども、私は軍隊所属なので、ほとんど貴族達は私に会いたがらない。

 宮殿を出て、中庭を通って、他国の貴族が宿泊する別邸は宮殿と同じように、とても綺麗に整備されている。庭には噴水もあって、テラスもある。

 別邸の前に立っている兵隊はエミリーを見ると「お疲れ様です!」と敬礼しながら言った。兵隊たちはエミリーを見るととてもキビキビとする。別邸の中へ入り、二階へ上がって行った。

「あちらのお部屋でお待ちです」

 メイドに言われた部屋をノックし、返事が来てから部屋の中へ入った。部屋の中では一人の男がソファに堂々と座って、エミリーを見た。男性にしては背の低いとエミリーは感じた。

「失礼します」

「そこに座ってくれ」

 言われた通り、そのエリックと向かい合うソファに座った。

「何故私を呼んだのでしょうか」

「敬語はやめようぜ」エリックはそう笑って言った。

「ですが」

「ですがも何も、俺はお前と同い年、話を進めたいんだ」

 エミリーは「分かった」と返事をした。エリックは時間の追われているようで、少し口調が早くなっている。

「俺はエリック・バートン。お前はエミリー・クリスタだな?」

「ええ」

「俺はお前にお願いがあってやってきた。結論から言う」エリックはなんだか真面目な顔をして、手を組んだ。

「俺の国に来てくれねぇか?」

 エリックの真面目な表情に対して、エミリーはポカンとしていた。

「話を端折りすぎて、なぜバリューへ行けばいいのかも分からないわ。せっかちで、時間を無駄にしたくない人間と言う事は分かったから、しっかり説明して」

「別に俺はせっかちじゃねぇよ」

「今そこじゃないでしょ。何か大切な要件なら、私は今すぐにでも貴方の国へ向かうし、内容次第で、貴方を殺さなければいけないかもしれない」

「命かけるような話じゃねぇよ」エリックは表情筋から力を抜いて、呆れたようにエミリーを見た。

「じゃあどんな話なの?」

「俺の王妃にならないかって話だ」

 エミリーは手を組んだまま、その手に頭を乗せて、またこちらも呆れていた。

「結婚の相談ならお断りよ」

「おいおい、悪い話じゃないだろ。俺は国王になるかもしれない。そんな男と結婚できたなら、マルディア王国は豊かになるだろうなぁ。バリューには大量の鉱山資源がある。条件次第で優先的に回すなんてことも出来る」

エミリーは体は小さいのに、大きなことを言う男だと思った。

「ならないこともあるでしょ?もし結婚してならなかったら、私にメリットはない」

「じゃあ、お前、この国にいてメリットあるのか?」エリックはソファにふんぞり返った。

「それは…」エミリーは思わず口をつぐんでしまった。

 エミリーは分かっている自分は戦争のためだけに育てられた戦士だと言う事が。けれども貴族たちからは酷い扱いで、兵士達からは『悪魔』と恐れられて、国民たちからだけには、賞賛されている。そんな国民たちも戦争で負ければ、エミリーを罵倒することもある。すべてはエミリーの結果次第。

「俺との婚約を受け入れた暁には、安全を確保しよう」

「私は射程圏内五十メートル以内の人間は絶対殺せるわ。安全なんていらない」

「じゃあ、何がほしい」

「貴方、第三王子よね?私がマルディアの女王になることだってあるのよ。貴方と結婚しないで女王になる方が確率が高い」

「それでお前は幸せになれるのか?」

エリックはまた真剣なまなざしで聞いて来た。エミリーは似たような質問に、また口がつっかえてしまった。

「それじゃあ、聞くけど、私が貴方と婚約して、幸せになれるっていうの?」やっとのことでエミリーは質問を質問で返した。

「なれる」エリックは自信満々に言ってのけた。

 エミリーはそれを聞き、気持ち悪いとさえ思ってしまった。

「その自信どこから来るの?」

「俺の頭ン中の資料と、その分析結果だ。こんななりでも俺は、それなりに頭が良いらしい。お前は人を殺したくない。それに殺されるのも嫌だ。だろ?」

「は、はあ?」エミリーが出せた言葉はそれが精いっぱいだった。

「私は別に、国のために人が死ぬなら、悪いなんて…」

「思ってるだろ?こんな戦争ばっかりの世界間違ってるって」

 そうエリックに言われたエミリーは、もうこれ以上論争でエリックに勝てないと、白旗をあげた。

「ええ、そうよ。人を殺されるのが嫌だ。戦争なんてなくなって欲しい。貴方に戦争を無くせるの?」

「無理。人間はどうしたって戦争をする。まあでも減らすことならできるかもしれない。それは俺とお前にかかっている。世界を変えないか?」

 エリックはエミリーの前に白くて戦いを知らない、綺麗な手を出してきた。それを見たエミリーは怒りが沸いた。

「戦争を知らないくせに、勝手なこと言わないで」




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