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最強少女と天才青年の平和国建立  作者: 城乃コトミ
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不幸な少女

 マルディア王国は最強軍隊のある、戦争最強の国だと言われていた。軍の整備はもちろん、優秀な者はどんどん昇格できる実力主義。どんなに貧しい者でも強ければ、強い権力と、金を手に入れることができる。農村でも、奴隷でも、強ければ頂上へ上がることができる。男はもちろん、女でも、子どもでも、老人でも強ければよかった。才能の強さ、頭脳の強さ、技術の強さ。どんな強さでも、強ければ幸せになれる。

 その反面、弱ければ見下され、幸せにはなれなかった。国王は障害のある者、従う気のない者、持病のある者などなどは、見捨てた。それを捨

「てたことによって、マルディア王国は最強の国へと進んで行った。

 そのうえ、マルディア王国は魔法にも力を入れ、魔力のある者をとにかく歓迎した。その中で特殊スキルを持って生まれた私は、宮殿に入れ、兵器になるための英才教育を受けてきた。

 はじめて人を殺したのは十歳の時だった。巨大ゴーレムを操り、何百人を殺したこともあった。体術、剣術、銃撃、すべてにおいて私は一番にならなければ、死が待っていた。だって私の母親は奴隷だったから。そして母は人質だった。強ければいけない。


 宮殿の中の女性たちは、鮮やかで、美しいドレスを着ている中、エミリー・クリスタは軍服を着て、左腰には剣を携え、上着の中には拳銃が、靴の中にも小刀が仕込まれている。髪の毛は一つにまとめて、化粧の一つもしていない。

「宮殿に軍服だなんて」

「でも、第一王女なのでしょう?」

「遊撃隊隊長でしょ?」

「それに最年少でしょ?」

 貴族たちがコソコソと話をしていても、エミリーは気にせず胸を張って廊下を歩いている。そしてひときわ大きな扉の前に立つと、エミリーはその扉をノックした。

 「入れ」という声が聞こえてから、エミリーは静かに扉を開けた。

「失礼します。お父様」エミリーは右手を額にピタと付けて、敬礼している。

 部屋の中では大きな椅子に座ったマルディア王国の第59代目国王ゲイル・クリスタの姿があった。職務をする机には書類が山のように置かれて、多忙さがうかがえる。ゲイルはエミリーを見るなり、舌打ちをした。

「シチリアとの戦争は素晴らしい働きぶりであった。今後もそのまま精進するがいい」

「お褒めのお言葉ありがとうございます」

「ほかに報告があるか?」

「遊撃隊の隊員が半分戦士しました。そのため隊員の補充をお願いしたく」

「分かった。これから仕事がある。用が終わったら出ていけ」

 エミリーは「あの」と言いかけて、突然部屋の扉がノックもされずに開き、エミリーは警戒態勢に入った。

「お父様!バリュー王国に行きたいわ!スイーツが美味しいらしいわ!」

 入って来たのはエミリーの腹違いの妹のマリアであった。マリアはエミリーを見た途端に、エミリーを睨みつけて、ゲイルの所へ走って行った。

「なんでお姉様が居るの?軍人が宮殿に入らないでよ」

「そうだ。さっさと出ていけ」

 エミリーは言われるがまま「はい、失礼します」と部屋を出て行った。それから部屋の外に立っていた侯爵家の夫人にビンタを食らった。エミリーはよろけることもなく、俯いて立っていた。

「息子があんたのせいで死んだのよ!」

「すいません。私の力不足です」

「あんたも死んでくればよかったのに!戻ってきたのはピアス一つ!せめて息子を連れて帰ってきなさいよ!」

「申し訳ございません」

 エミリーがその夫人からそれ以上の暴力を受けることは無かった。使用人たちが怒り狂う夫人を体を押さえて部屋へと連れて行った。

 これが第一王女であり、軍隊最強と歌われたエミリー・クリスタの日常であった。王女であっても、どれだけ強くても何百という人を殺したという自覚を持っていて、隊員を死なせてしまった自責の念にさいなまれ、奴隷の母から生まれたという足枷をはめられたまま生きてきた。たった17歳の少女には重すぎるものを背負っていた。

 

「エミリー様」

 ふとどこからかやって来たメイドが、エミリーにそう声を掛けた。

「エリック・バートン様がお呼びです」

 エミリーは目を丸くした。その名前は特に広く知られているわけでもないが、エミリーはその人の名を聞いた事があった。

「バリュー王国の王子が?」

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