97:美衣初めてのレベルアップ
ユニコーン達は全頭が名札を与えられた後、冴内が一番最初に訪れた草原で休ませることにした。例の薬草取りのお婆さんがいて最初は驚いた様子だったがユニコーン達の名札と美衣とユーマを見て「おお、そういうことかい、それはよかったねぇ」と嬉しそうに目を細めて言った。
その後美衣は初めての野外食堂に行って昼食をとることになった。その場では数日前に結婚式を終えたばかりの力堂夫妻と、鈴森、矢吹、良野、木下、早乙女、梶山、宮、手代木というフルメンバーが勢揃いで、なんと宮と早乙女が来月結婚すると発表して大いに場は沸いた。矢吹さんは「オレもそろそろ年貢を納めるか」とつぶやき、良野さんは若干引きつった笑顔で、木下さんが良野さんの腕をさすっていた。相変らず良いコンビのようだ。
「美衣も結婚する!お父ちゃんと!」
「美衣にはまだ早いわよ、あと美衣は他に良い人を見つけなさい。洋は私のものです、例え愛する娘でも洋は譲れません」となかなかに容赦のない一言。
「グヌヌ・・・分かった、そうする」と素直に従う美衣だった。
ともあれ、昼食はもはやちょっとしたパーティ騒ぎになった。いつものメンバー以外にも周りのシーカー達も集まってきて大盛り上がりになった。いつしか美衣と早乙女の大食い競争が始まり、食堂の料理人たちは大忙しだったがその顔は実に楽しそうでいい笑顔だった。大食い競争は美衣の勝利で終わったが美衣はまるで妊婦のようなお腹になってしまった。二人とも満足しきりの様子だった。
ユニコーン達がゲート村に来たことで、草原近くに厩舎が必要になりそうだということで宮と手代木はゲート村代表のところに相談しに行った。
また、優が以前力堂にカタチのあるお礼をすると約束していたのを思い出し、いったんゲートに出て美衣が入っていた卵の殻をもってきた。以前約束していたお礼を受け取ってと言って渡した。「半分はどうしても研究施設が欲しいっていうので半分になるけどそれでも最高の素材になるわよ、それこそ例の英雄剣に使われた竜の涙なんかの何億万倍も強い素材よ」
「そんな、大事なものを受け取ってもよろしいのですか?」と力堂は言ったが優は「それくらい私にとって大事なことをしてくれたのだから当然よ」と言った。
現在世界最高位の鑑定レベルになった鈴森が鑑定すると「ステータスが・・・∞ 無限のマークになってます・・・」と、その凄まじいスペックに驚愕。「半分研究所にもっていかれたから武器にするとしてもナイフくらいにしかならないし、多分誰も加工出来ないだろうから・・・そうね、盾の表面にするのはどうかしら?恐らく地球程度の大きさの隕石が激突しても防げると思うわよ」と、とんでもない発言をした。そもそもそんな大質量のものが激突したら盾よりも先に人間の方がペチャンコになるのだが・・・まぁものの例えということでこのトンデモ発言は皆スルーした。
しかしそれくらい硬くて強い素材をどうやって加工すればいいのかと問われたので、優は力堂に「ちょっと盾をもってきて」と言い、力堂が盾をもってくると「ねぇ洋、ちょっと卵の殻を叩いて伸ばしてくれる?」と優は言った。
「えっ?そんなこと出来るかなぁ、割れたりしないの?」
「あぁ・・・そうか、洋のチョップだとすぐに割れちゃうかなぁ」
「わ・・・割れるんだ・・・地球大の隕石でも防げるのに・・・」
「お母ちゃん!私やってみたい!多分出来そう!」
「あら美衣やってみる?」
まぁ割れたら粉々になるまでチョップで割って、盾の上にふりかければいいか、などとご飯のふりかけの様に、地球大の隕石をも防げるステータス無限の素材をぞんざいに言ってのける優であった。
そうして美衣がチョップでバンバン叩くと少しづついい具合に伸びていき、そこから平らになめしていくと盾の上に乗せられる程になっていった。
はたから見ても美衣はすごく器用にチョップを操り、まるで精密加工機械で作られた金属素材のように寸分たがわぬ大きさと厚みで盾の表面にぴったり馴染んではまるようなものに仕上がった。
ひとしきり作業して美衣は満足したのか、腰に手をやりドヤ顔でキメポーズをとり「出来た!アタイが作った最高けっさくの盾!」とまたしてもチョップを高らかに掲げて高らかに宣言した。
その時美衣の左腕の空間が輝きステータス画面が表示された。そこには以下のように書かれていた。
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冴内 美衣
永遠の13歳:可憐な乙女
★スキル:万能チョップLv1⇒万能チョップLv5
称号:英雄
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こうして力堂は地球大の隕石をも防ぐという、英雄剣ですらいとも容易く簡単にはじいてしまいそうな最強の盾を手に入れることになった。卵の殻を盾に固定するのに、釘やドリルなどは当然貫通しないので外側から額縁のように固定する枠を作って固定することにした。
そうこうしているうちに夕方になったので冴内一家は研修センターに戻ることにした。帰る前に美衣はユーマのところにいって「また明日ね!」といってお別れをいうとユーマもヒヒーンと嘶いて前脚をかかげた。
そうして美衣の記念すべき初めてのゲート入場は終了した。