96:美衣初めてのゲート
美衣のステータスは瞬く間に全世界に公開され、真っ先に英国ストーンヘンジ・ゲート局長のサー・アーサー・ウィリアム3世が神代に連絡してきた。
「ミスター、カミシロ!こっ!このステータスは間違いないのかね!!」
「はい間違いありません、今現在冴内ファミリーは当センター内におりますので、すぐに私も駆けつけこの目で確認いたしました。彼女、冴内ファミリーの御息女であらせられる美衣様には英雄の称号がハッキリと書かれておりました」
「そうか・・・そうか・・・そうだったか・・・有難う・・・あぁ神よ・・・感謝します」
「ミスター、カミシロ、正直言うと今すぐにでもミイ様にこちらへお越しいただきたいところではあるが、まだ幼い少女でもあらせられるので、それは控えることにしよう。ただいつの日か我が国へお越しいただけるよう、よろしくお伝え願えるだろうか」
「分かりました局長閣下、御配慮感謝いたします」
「いや、閣下はもう要らんよ、君ももう今では局長なのだから」
「は、お言葉有難くお受けいたします。しかし一つだけやはりどうしても確認しなければならない点があります」
「なるほど、それは恐らく武器のことだな」
「はい、冴内殿の血を受け継いでいるので例の可能性があります」
「そうだな・・・出来れば先にその件を知りたいところだ」
「はい、冴内殿にお願いしておきます。結果が判明次第すぐにウィリアム局長にお伝えします」
「うむ、よろしく頼む」
その後、神代は冴内に美衣が武器を持つことが出来るか是非とも確認して欲しいと連絡し、冴内からの了解を得た。
そうして美衣は人生初のゲートへと入場した。
美衣が入ってくると数多くのゲートシーカー達が出迎えた。「美衣様万歳!」「ようこそ美衣様!」などのプラカードや横断幕が立ち並び、美衣は右手をチョップの形にして高らかに上げてみせた。その姿はまさに英雄の様だった。
早速プレハブ小屋のおばさんのところに行ってステータスを登録してもらった。さすがのおばさんも美衣の神がかった姿の前にはいつもの調子とは全く別の態度で、まるで神様でも拝むかのように美衣のステータスをスキャンしていた。
次に武器屋へと連れて行った。果たして武器を手にすることが出来るのか、最初にして最大の関心事であったが美衣が武器を目にして「可愛くないからヤだ」と言ったので一瞬その場にいた全員が「ダメか!?」と思ったが「まぁ持つだけもってみて」と冴内がいうので「お父ちゃんが言うなら持ってあげる」と言ってなんなく持った。富士山麓ゲートで最高レベルの剣を、ヒョイとまるで重さを感じさせない手つきで・・・
その報をいち早く聞きつけたサー・アーサー・ウィリアム3世は通話先で飛び上がるほどに狂喜乱舞した。その場にいた英国情報部員達も全員歓喜の雄たけびを上げて狂喜乱舞した。落ち着け英国情報部。
武器屋を後にした冴内一家は次に宿泊ロッジ横にある厩へと向かった。実は数日前に以前英国にて依頼していたアリオンの馬具が異例ともいえる早さで完成して送られてきており(何度もお金を払おうとしても頑なに断られた)あらかじめ冴内はアリオンをこちらに呼び出していたのだ。
早速アリオンに馬具を装着して親子3人乗りでアリオンの故郷に行った。アリオンの故郷に着くとアリオンの一番目の息子が美衣のところにやってきて美衣の前で前脚を折り曲げて頭を垂れた。
美衣は「今日からお友達だね!名前は・・・そうね・・・ユーマよ!こないだまで最強だったお母ちゃんの優とお馬さんのウマを合わせてユーマよ!お父さんに負けないくらい強くなってね!」と言うとユーマは目を大きく見開いてヒヒィーン!と嘶きアリオンの時以上に力強く輝いた。
アリオンの「二番目の娘」はその様子を嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねながら見ていた。
他のユニコーン達もその様子をガン見していたが1頭のユニコーンがおずおずと近づいてきた。その1頭はもはや用済みとなったアリオンの名札を鼻で小突いたり軽く噛んで少し持ち上げたりした。
その様子を見た美衣は冴内に「お父ちゃん、皆この名札が欲しいんだって。あと、人間達と仲良くしたいって言ってるよ」と、説明した。
「すごいな、美衣はユニコーン達の言ってることが分かるのかい?」
「ウン分かるよ、この子達はとっても賢いよ」
「そうね、この子達はアリオンの名札が羨ましいみたい。あと皆ゲート村に行きたがってるみたいよ」と、優も言った。
そんなわけでユニコーン達はとうとう全頭下山しゲート村へと移動していった。先頭は美衣が乗ったユーマが走り、続いてアリオンは空を飛ばずに地を駆けた。その横には妻と2番目の娘が並走しその後ろにユニコーンが10頭程続いた。
ゲート村のシーカー達は南の方からユニコーン達が現われるのを見て全員驚愕したが、先頭に美衣が手をチョップの形にして腕を高らかにかかげ「みんな!私に続けーっ!」と言って駆けてくる姿を見て「あ、英雄だ・・・」と思ったのであった。
その模様はもはや当たり前のように至近距離で録画配信されており、若干のタイムラグの後でそれを見た英国情報部は、いや、今や情報部だけでなく英国国営放送でもその模様が報道されており、英国全土で英雄万歳!と爆発的な盛り上がりだった。
ちなみにその後ユニコーン達には名札がかけられた。そこには以下のように書かれていた。
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ぼくたちはユニコーンです
おとなしくておりこうです
なかよくしてください
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